表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛請負人・鉄平  作者: 強炭酸
Case6 主人公 純也

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/26

Case6 失恋編①

【主人公/純也視点】


――初夏、再会は突然に


五月。


窓の外から入り込む風が、もう春じゃないことを教えていた。

少し湿っていて、でも重すぎない。

夏が来る前だけに存在する、あの中途半端な空気。


挿絵(By みてみん)


俺は純也。

高校二年生だ。

もっぱらゲームにハマってる。


眠い。


とにかく眠い。


机に突っ伏しかけたところで、

コツン、とシャーペンの先で額を小突かれた。


「純也。また欠伸してた」


顔を上げると、呆れた目をした女子が立っていた。


挿絵(By みてみん)


学級委員長、すなお


真面目。成績優秀。生活態度A判定。

そしてなぜか、俺の生活監視担当みたいになっている女子だ。


「ゲームやりすぎでしょ」


「良いじゃん。ランクマ昇級かかってんの」


昨夜の死闘が脳裏によみがえる。

あと一勝で昇格だったんだ。

あそこで寝れる人間はいない。


「その情熱、勉強に使いなよ」


 「心配してくれてありがとう」

▶︎「うるせー」


「うるせー」


反射で返した。


淳は一瞬むっとして、それから小さくため息をつく。


「……あ、そう。今日はすぐ寝なさいよ」


怒ってるわけじゃない。

説教でもない。


ただ――本気で心配してる声だった。


だから不思議と、嫌な感じがしない。


こういう小競り合いが、

朝のルーティンみたいになっていた。



チャイムが鳴る。


担任が教室に入ってくる。


「はい席つけー。今日は連絡がある」


ざわついていた教室が少し静まる。


「本日から教育実習生が来る。この学校の卒業生だぞ」


へえ、と適当に聞き流していた。


その瞬間までは。


教室のドアが開く。


柔らかい足音。


光が差し込む。



挿絵(By みてみん)


純連すみれです。数年前にこの高校に在籍していました。教育実習生としてまた、この場に来れて感激しています。皆さんよろしくお願いします」


――時間が止まった。


「……うそだろ?」


喉の奥で声が漏れる。


胸が、一拍遅れて跳ねた。


(……あの人だ)


(俺の――)


初恋の人。



【四年前/中学一年】


あの頃の俺は、今よりもっとバカだった。


いや、今もバカだけど。


毎朝同じ時間の通学バス。


前の席に座る、少し年上のお姉さん。


制服の色が違うだけで、

やけに大人に見えた。


話したことなんてなかった。


ただ――


目で追っていただけ。


ある日。


空が急に暗くなった。


次の瞬間、ゲリラ豪雨。


アスファルトを叩く雨音。

跳ね返る水。

バス停に取り残された俺。


傘、忘れた。


終わった。


そう思った時。


「……入る?」


差し出された折り畳み傘。


距離が近い。


雨の匂いと、シャンプーの匂いが混ざる。


心臓がうるさかった。


「私、先生になりたいんだ」


何気なく言ったその言葉。


雨音の中で聞いた声。


夏の湿った空気。


肩が触れそうな距離。


――あの瞬間。


俺は、多分。


恋をした。



【現在】


(……先生になるんだ)


夢、叶えたんだ。


ぼんやり見つめていると、


「もしもーし」


目の前で手がぶんぶん振られた。


「……はっ!!」


現実に引き戻される。


淳だった。


「おかえりー」


完全に思い出旅行してたらしい。


(純連さん……やっぱ綺麗だな)


思い出って美化されるって言うけど。


違う。


現実の方が上書きしてきてる。


大人になってる。


笑顔も、声も、全部。


(付き合ってる人いるんだろうか…)


(いやでも…)


(ワンチャン…)


脳内で謎の可能性計算が始まる。


完全に危険信号である。


「鉄平、純也がおかしい」


淳が隣の席へ振る。


鉄平がちらっと俺を見る。


「あー、純也こういうのよくあるよ」


よくねえよ。


今回は違う。


これは――


運命イベントだ。


立ち上がった。


決意だけは一人前に。


「淳」


「鉄平」


二人が同時にこちらを見る。


胸が熱い。


根拠ゼロ。


勝算ゼロ。


でも止まらない。


「俺――」


深呼吸。


そして宣言した。


「教育実習期間の最後に、純連さんに告白する」


沈黙。


「え?」


鉄平

「は?」


教室の空気が一瞬止まった。


でも俺だけは確信していた。


これはきっと――


青春イベントの最終ルートだと。


(※なお純也はかなりバカである)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ