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恋愛請負人・鉄平  作者: 強炭酸
Case5 主人公 晶

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20/25

Case5 マッチングアプリ&コスメ③

【鉄平暗躍パート/鉄平視点】


挿絵(By みてみん)


瑠璃――。


晶と同じ大学に通う、一年生。


遠目に見た第一印象は、正直に言えば地味だった。

派手さもなければ、目を引く華やかさもない。


けれど。


悪意がない。


それだけは、はっきり分かった。


人の視線を警戒するような肩のすくみ方。

笑うとき、ほんの少し遅れて口元が動く癖。

自分の存在を小さくしようとする立ち方。


そして――学部違いとはいえ、同じ大学。


偶然にしては、出来すぎている。


俺は少し離れた席から、二人の様子を観察していた。


晶は分かりやすいほど上機嫌だった。

背中越しでも伝わってくる。


身振りが大きい。

笑い声も少し大きい。


(……はしゃいでんなぁ)


イケメンで性格も良いのに、なぜか女運だけ壊滅的。

そんなやつも世の中にはいるらしい。


喫茶店の中はコーヒーの香りと食器の触れ合う音で満ちていた。

午後の柔らかい光が窓から差し込み、二人を照らしている。


会話は弾んでいる。


――表面上は。


だが。


瑠璃は、晶が話すたびにほんの一瞬だけ視線を落としていた。


笑っているのに、目の奥が曇る。


嬉しそうなのに、どこか引いている。


その違和感が、引っかかった。


やがて二人は店を出て、駅前で別れたらしい。


晶が戻ってくる。


「なんかこのあと用事あるんだって。脈ないのかなぁ」


肩を落とす声。


俺は首を振った。


「いや、そうじゃないかもよ」


――嘘じゃない。


好感度ステータスは、すでに『成立可能』まで上がっている。


問題は晶じゃない。


(……あの曇り顔)


彼女自身が、ブレーキを踏んでいる。


進みたいのに、進めない顔。


なら。


ここは――俺の役目だ。




人通りの少ない道に入る前、俺はコンパクトの手鏡を取り出し、軽く身だしなみを確認した。


第一印象は、魔法の詠唱みたいなものだ。


タイミングを見計らい、歩幅を速める。


「……瑠璃さん」


振り向いた彼女の肩が跳ねた。


「晶の友達の、鉄平です」


「……えっ!!」


当然の反応だ。


初対面の男に、突然名前を呼ばれる。

警戒して当然。


でも――ここで引くわけにはいかない。


「俺、晶の付き添いで近くにいたんです」


言葉を慎重に選ぶ。


押しすぎず、逃がさず。


「瑠璃さん、晶のこと嫌いとかじゃなくて……」


一拍。


「自分に自信がなくて、釣り合わないって思ってませんか?」


沈黙。


風が吹く。


彼女の視線が揺れる。


「………どうして、わかったの?」


その声は、小さかった。


俺は知っている。


この表情を。


変わりたい。


でも方法が分からない。


踏み出す勇気だけが足りない人間の顔を。


今まで、何度も見てきた。


「俺は晶の友達です」


だからこそ、まっすぐ言う。


「晶のために――あなたに、勇気と自信の魔法をかけさせてほしい」


彼女の目が、少し見開かれる。


俺は準備していた。


男側だけじゃない。

当然、女側の可能性も考えていた。


だが――コスメの世界は専門領域だ。


だからこそ。


信頼できる人材は、すでに確保済み。


スマホを取り出し、美容室のページを見せる。


「ここ、行きませんか」


「コスメの仕方も、ちゃんと教えてくれる美容室です」


沈黙。


迷い。


そして――小さな決意。


「……ありがとう」


彼女は視線を落としたまま言った。


「私、友達いなくて……化粧するの、苦手で……」


その言葉を聞いた瞬間。


確信する。


――この物語は、まだ動き出せる。


俺はただ、背中を押すだけだ。


魔法なんて、大げさなものじゃない。


ほんの少し。


自分を好きになれるきっかけを、渡すだけだ。

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