表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛請負人・鉄平  作者: 強炭酸
Case5 主人公 晶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

Case5 マッチングアプリ&コスメ②

【主人公:晶視点】


あれから数日後。

土曜日。


駅前のカフェへ向かう足取りが、やけに重い。


春の終わりの空気は少し湿っていて、

人混みの熱気とコーヒーの匂いが混ざり合っている。


――人生初、マッチングアプリでの待ち合わせ。


スマホの画面を何度も確認する。

時間、場所、相手のアイコン。


逃げたい。

でも――ここを越えなきゃ始まらない。


店の前に立っていた女性は、すぐ分かった。


綺麗だった。


落ち着いた服装。

年上っぽい雰囲気。

柔らかい笑顔。


(……え、普通に当たりじゃない?)


社会人だろうか。

大人っぽくて、少し緊張する。


「晶さん?」


「あ、はい」


よし。いける。

今回は普通の出会いだ。


――そう思った瞬間。


スマホが震えた。


ポケットの中で、小さく。


取り出して確認する。


『逃げろ、マルチか宗教』


……マジ?


脳が一瞬停止する。


顔を上げると、女性が微笑みながら話し始めた。


「私、芸術の仕事をしてるんだ」


嫌な予感。


「あなた、絵画とか興味ある?」


――来た。


背中に冷たい汗が流れる。


(マジか!?ホンモノかよ!!鉄平!!)


心臓がバクバク鳴る。


逃げろ。

でも自然に。

怪しまれずに。


口が勝手に動いた。


「…………すみません!!」


立ち上がる。


「急にお腹痛くなって来たので帰ります!!やばい病気うつしたら大変なので!!」


自分でも意味が分からない言い訳だった。


店を飛び出し、角を曲がった瞬間。


「はぁ……っ!!」


肺に空気を叩き込む。


助かった。


マジで助かった。


(鉄平の力、本物じゃねぇか……)



だが、悪夢は終わらなかった。


次の週――宗教。


その次――マルチ。


さらに次――宗教。


神回避。


神回避。


神回避。


スマホが震えるたび命拾い。


だが同時に、精神が削られていく。


大学のベンチで俺は天を仰いだ。


「……そろそろ、本当の出会い来ないかなぁ」


隣で友人が笑う。


「晶、宗教マルチ引きすぎじゃね?」


「顔と性格いい分、そういう運命なのかもな。普通こんな確率ねぇぞ」


「うるせー!」


別のやつが追撃する。


「晶って断れなさそうな顔してるもんな」


……否定できない。


俺は、人を疑うのが苦手だ。


だからこそ、鉄平がいなかったら――

今頃どこかのセミナー会場に座っていた可能性すらある。



そして。


五人目。


待ち合わせ場所。


スマホが震える。


反射的に画面を見る。


『晶、その子と話せ』


――来た。


ついに来た。


(やっと普通の子きたーーーー!!)


視線を上げる。


そこに立っていたのは、派手さのない女の子だった。


地味な服装。

少し控えめな立ち姿。

でも、どこか安心する空気。


危険な気配がない。


押し売りの笑顔も、

妙な自信もない。


ただ――少し緊張しているだけの、普通の女の子。


胸の奥がじんわり温かくなる。


ようやく。


ようやく。


「はじめまして、晶です」


言葉が自然に出た。


逃げなくていい会話。


警戒しなくていい時間。


(やっと女の子と話せる……!!)


それだけで、

世界が少し優しく見えた気がした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ