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恋愛請負人・鉄平  作者: 強炭酸
Case4 主人公 雄大

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13/25

Case4 ダイエット①

【主人公:雄大視点】


春の空気は、まだ少しだけ冷たかった。


けれど校庭を渡る風の匂いは、もう冬ではない。

湿り気を含んだ土と、若い草の青い匂い。

季節が、確実に前へ進んでいるのが分かる。


四月。

入学式も終わり、学校という場所にも少しずつ慣れ始めた頃。

ゴールデンウィークを目前に控えた、どこか浮ついた空気の中で――


俺は、自分の体を持て余していた。


挿絵(By みてみん)


俺の名前は雄大ゆうだい

高校一年生。


身長は一応、172センチある。


……だが。


体重は、90キロ近い。


制服のボタンは座ると引っ張られ、

階段を上がれば太ももが擦れ、

体育の時間には視線を感じる。


誰も何も言わない。

でも分かる。


(ああ、俺ってデカいよな)


鏡を見るたびに思う。


どう見ても、メタボだ。


入学してすぐ、相撲部から声をかけられた。


「体格いいね!どう?」


悪意なんてない。

むしろ好意だったんだと思う。


でも俺は、笑って断った。


運動が苦手だから。


――いや、本当は違う。


人前で動く自分を見られるのが怖かっただけだ。


走れば揺れる体。

息切れする姿。

遅れる動き。


笑われていないのに、笑われている気がする。


だから逃げた。


そんな俺が。


身の程知らずだと、自分でも思う。


それでも――


好きな人が、できてしまった。


同じクラスの、結衣ゆい


挿絵(By みてみん)



特別目立つわけじゃない。

派手でもない。


けれど、ノートはいつも整っていて、

提出物は忘れず、

誰にでも丁寧に話す。


黒板を消す姿。

静かに髪を耳にかける仕草。

小さく「ありがとう」と笑う声。


気づけば、目で追っていた。


……でも。


どう考えても。


俺と彼女は、住む世界が違う。


几帳面で、ちゃんとしていて、

細くて、清潔で、まっすぐな人。


それに比べて俺は――


地味で、太っていて、

何をするでもなく毎日を過ごしているだけの男子。


接点なんて、あるはずがない。


教室のざわめきの中で、

ふとガラスに映った自分を見る。


丸い輪郭。

重そうな肩。

猫背気味の姿勢。


(……もし)


痩せたら。


変われるんだろうか。


周りが見る俺も。


そして――

俺自身が見る世界も。


胸の奥が、じわりと熱くなる。



▶︎変わりたい。

 このままでいい


でも。


どうやって?


何をすれば?


分からない。


分からないから、今まで何もしてこなかった。


机の上に置いたスマホを見つめる。


連絡先一覧。


その中にある名前で、指が止まる。


鉄平。


不思議なやつだ。

目立つわけでもないのに、

気づけば人の中心にいる。


誰かが困っていると、

いつの間にか隣に立っている男。


……たぶん。


今の俺が頼れるのは、あいつしかいない。


喉が少し乾く。


ためらい。


躊躇。


それでも。


俺は、画面をタップした。


――自分を変えたいんだ。


その一言を送るために。

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