Case3 ファッション⑤ 完
【女神様パート/鉄平視点】
白い空間。
相変わらず上下も距離感も分からない、現実感ゼロの場所なのに――
なぜか。
なぜか毎回、
町内会の集会終わりみたいな空気になる。
「はい、お疲れ様ー」
ぱん、と軽く手を叩く音。
振り向くと、いつもの女神様が立っていた。
神々しい光を背負っているはずなのに、雰囲気は完全に
近所でよく会う世話焼きのお姉さんだ。
「今回はファッション回だったわねー。どう?勉強になった?」
俺は反射的に背筋を伸ばす。
「はい!!めちゃくちゃ参考になりました!」
思い出すのは、美容室の鏡の前。
研磨の表情が変わった瞬間。
「ファッションって、強化魔法みたいなんですよ!」
女神様が「ほう?」という顔をする。
止まらなくなった。
「俺、おとぎ話の魔法ってあんまり好きじゃないんです」
「ほう?」
「時間切れで解けたり、調子乗った主人公が痛い目見たりするじゃないですか」
女神様、腕を組んで聞き始める。
完全に保護者モード。
「結局、自分の力じゃないから、いつか消えるってよく言われるんです。でも――」
息を吸う。
「ファッションは違うんです」
言葉が自然に出た。
「自分で身につけられる魔法なんです。“自信”を後押ししてくれる強化魔法なんですよ」
朝、鏡を見ること。
歯を磨くこと。
清潔にすること。
「どう見られているかを意識して、自分をハックする……これって、すごいことだなって思いました」
沈黙。
女神様は腰に手を当て――
ゆっくり、大きく頷いた。
そこで――
なぜか少し視線を逸らした。
「……ほんと、変わったわね」
小声。
俺には聞こえていない。
「……満点」
にやりと笑う。
「こちらの意図、完全理解ね。優秀優秀」
ちょっと嬉しい。
……が。
女神様の表情が、すっと変わる。
「でもね?」
嫌な予感。
「スタイリスト紹介までの流れ」
間。
「諜報員すぎない?」
痛いところ来た。
「いやあの、俺にできることをやりきっただけで――」
「新聞部のコネ使って過去問確保して、配信者と取引して、美容師ルート開通って」
指を折りながら数えられる。
「国家機関の動きなのよそれ」
「俺にやれる事をやりきりました」
胸を張る。
女神様、真顔。
「……法には触れてないから何も言わないけど」
ため息。
「お姉さん的にはあなたの将来が心配だわ」
完全に保護者コメントだった。
神様なのに。
ドン引きしながらも、ぱん、と手を叩く。
空気が切り替わる。
「はい、反省会終了!」
指を立てる。
「次の試練いきましょうか」
嫌な予感しかしない。
一拍。
「失敗したら即消滅。準備はOK?」
俺が拳を握る。
「頑張ります!!」
その瞬間。
女神様の表情が、ほんの一瞬だけ柔らぐ。
小さく。
本当に小さく。
「……死なないでよ」
すぐにいつもの顔に戻る。
「はい次!!ダイエット回!!」
次回から1話ずつの更新となります。
毎日5:50更新を予定




