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Canna Suspicion5 - 幽霊船の旅 -






「うちの両親、来月あたり、マルタ島から出航する豪華客船に乗るらしいのよ」


昼休みにカンナは絢美の声を聞きながらぼんやりとアイスコーヒーをストローでかき混ぜていた。

自分とはレベルの違う金持ちの絢美の話は夢現の様に聞こえる。


「世界一周旅行ってやつ……。約一年の航海だって」


「ふぅん……。何か、別世界の話だね……」


カンナは嫌味でも無く、素直にそう思った。

たまにこんな両親の話をするが、絢美自身はちゃんとアルバイトもしている大学生で、カンナと一緒に学食の五百円の定食も食べる子だった。


「うちの両親は少し感覚違うからね……。でもさ、もう旅行の費用振り込んでから一年以上も立っているのに、出航が伸びてばっかで、ちょっと変じゃない……」


カンナは顔を上げて絢美を見た。


「何で……」


カンナはストローを咥える。


「何か出航前の点検で不具合が見つかったらしくて、その修復に時間が掛かってるみたいで……」


「そっか……」


カンナはアイスコーヒーを飲んで身を乗り出す。


「それってさ、いくらくらいするの……。世界一周旅行……」


絢美は少し考えて、


「確か……。夫婦二人で三千万って言ってたかな……」


「さ、三千万……」


カンナはそう言うと咥えていたストローを噛んだ。


「相当豪華な船なんだね……」


「らしいよ……。毎日コース料理食べて、船の中にカジノとかプールとか、スポーツジムもあるらしいよ。ああいう船ってさ、乗船中はお金一切必要ないんだって」


カンナは自分とレベルの違う世界に呆然としていた。







「三千万円」


タケルは少し大きな声を出した。


「それを全額前払いで、豪華客船は未だマレーシアで修復中だぁ……」


タケルはいつもの様に手鍋から直にラーメンを食べながら、カンナをじっと見る。


「な、何ですか……」


カンナは少し身を引いて、そのままストンとソファに座り込んだ。

その向かいにタケルは座って手鍋をテーブルの上に置いた。


「船の名前、ドッグ……造船所の名前、旅行会社の名前。わかるか……」


そう言うとタケルは鍋を持って立ち上がりパソコンの据えられた机の前に座った。


「えっと……」


カンナは絢美に見せられたパンフレットを撮った写真を見せた。


「プリンセスグレイス8世……。如何にもって名前だな」


タケルはキーボードを叩いた。


「プリンセスグレイス……、6世までは写真があるな……。新造船か……。造船所の名前は……」


カンナはスマホで撮った写真をスライドさせた。


「それは無いですね……」


タケルは少し眉を寄せて、


「ドッグはマレーシアって言ってたな」


「ドッグ……、造船所ですよね」


「ああ」


タケルはガチャガチャとキーボードを叩く。


「マレーシア国内にドッグは四百程あるな……。これじゃ手当たり次第って訳にはいかんな」


更にキーボードを叩く。


「旅行会社は……」


タケルは脇に置いたラーメンの鍋を取り、音を立てて啜った。


「株式会社ワールド・オーシャン……です」


「ワールド・オーシャンプランニング……」


タケルは片手でキーボードを叩いた。


カンナはタケルの後ろからモニタを覗き込む。


「近いよ……。あんまり近いとキスするって言ったろ……」


タケルはそう言うとスープを飲んで鍋を机の脇に置いた。


「やれるモンならやってみて下さいよ」


カンナはそう言うとスマホをじっと見る。


「ワールド・オーシャンプランニング……。代表者は武知耕平。所在地は横浜だな……。ちゃんと存在するのか、この会社……」


「うーん……。ホームページだけ見ると存在している様ですね……」


タケルはラーメンを食べ終えた手鍋を持って立ち上がった。


「まあ、ホームページで客取ってるんだろうからな……。これだけはちゃんと作らないとな」


タケルは鍋をシンクに置いて水を張り、戻って来た。

そして机の上に置いたスマホを手に取った。


「オッサンに訊いてみるか……」


そう言うと電話を掛けた。


「あ、オッサンか……」


タケルはそう言いながらソファに座った。






男はいつもの様に勢いよくドアを開け、タケルの事務所に入って来た。


「よぉ、タケル……。WOPって会社、面白いぞ」


男はズカズカと事務所に入るとソファにドカッと座る。

タケルも机を立ち男の向かいに座った。

カンナはコーヒーを淹れると男とタケルの前にカップを置き、タケルの横に座った。


「株式会社ワールド・オーシャンプランニング。通称WOPだが、確かに今回の豪華客船の募集で約七百人の客を集めている。しかし、プリンセスグレイス8世はマレーシアのあるドッグに入ったままだ。それが理由で予定通りの航海が出来ない。そうだったよな……」


カンナはコクリと頷く。


「まあ、こんな旅に行ける金持ちが少なくとも七百人はいるって事だな」


男はそう言うと声を上げて笑う。

しかしその笑いをピタリと止める。


「だけど、タケル……。お前の読み通りこれは詐欺だな」


「えっ」


とカンナは思わず立ち上がった。

そのカンナをタケルと男は同時に見たが、二人とも静かに視線を戻す。


「で……」


タケルはコーヒーカップを手に取って脚を組んだ。


「一人千五百万の七百人だ。これは大規模な詐欺だ。百億を超える……」


タケルは男の言葉に頷く。


「WOP自体は数か月置きに代表者が入れ替わっている。どうせ飛ばしの会社だ。それに……」


男もコーヒーカップを手に取ってニヤリと笑った。


「この会社の裏には白州会が居る」


タケルはカップを口元で留めた。


「白州会も前回の臓器移植といい、この件といい、凌ぎの毛色が変わって来た。しかも額もデカい……」


男は熱いコーヒーをゴクリと飲む。


「そうか……。少し調べてみるか」


とタケルが立ち上がった。


「オッサン。悪いがマレーシアの方を調べてみてくれないか。向こうにも伝手はあるんだろう」


タケルは男に背を向けたまま言う。


「ああ、無くはない」


男はそう言うとカップに半分程残った熱いコーヒーを一気に飲み干した。


「じゃあやってみるか……」


と立ち上がった。






カンナはタケルが準備した服を着てあるホテルのロビーに立っていた。


「俺とお前は婚約者だ。ハネムーンで豪華客船で世界一周したいって事で説明会に行く」


タケルはそう言って、カンナにこのスーツの入った箱を渡して来た。


「六十万のスーツだ。汚すなよ」


と言われ、カンナは緊張しながらそのスーツを着た。


「汚すなって言われても……」


カンナは周囲の人にも警戒しながらタケルを待った。


「第一婚約者って何よ……。親子の方が良いんじゃないの」


正面に「豪華客船プリンセスグレイス8世、世界一周旅行説明会」と書かれた案内があった。


カンナの腰に突然腕が添えられる。


何……。


「行こうか……」


とスーツ姿のタケルがカンナの腰を抱いていた。


「ちょっと……」


「黙ってろ……」


二人は小声でそんな事を言い合いながらエレベータに乗り、説明会の会場である三階に着いた。

磨かれた大理石の床、見た事も無い様な観葉植物、照明を落とした薄暗い部屋の入口にウェルカムドリンクを持ったホテルスタッフが立っていた。

タケルはスマートにそのドリンクを二つ取ると一つをカンナに渡した。


「溢すなよ……」


「わかってますよ」


と二人は軽食の並ぶテーブルの傍に立った。


正面のスクリーンには音の無い動画が映し出されている。

豪華客船が波を切りながら海の上を滑る様に進んで行く映像。

それに重なり「プリンセスグレイス8世」の文字。


「金掛かってんな……」


タケルはテーブルの上のオードブルを手に取り口に放り込んだ。


「こんなにお金掛ける必要あるんですか」


カンナは小声でタケルに訊いた。

タケルは正面のスクリーンに映し出される映像を見ながら、


「金ってのはな。寂しがり屋なんだ。金の無い場所に金は集まらん。金は金を求めて集まる様に出来ている」


タケルの言葉にカンナは小さく頷いた。


スクリーンの前にスタッフらしき男が立ちマイクを握る。


「一度は夢に見る豪華客船でのゆっくりとした旅。非凡な日々を大海原の上で、時間を忘れて過ごしましょう。我社の船、プリンセスグレイス8世はマレーシアで造船された最新鋭の水素燃料エンジンを搭載し、クリーンなエネルギーで航海します。ラグジュアリーな日々を、そして喧騒を忘れて、夢の様な旅をお過ごし下さい。さあ、航海は直ぐそこです」


男の言葉に会場からは大きな拍手が沸き起こる。


「どうぞ……」


とタケルとカンナに分厚いパンフレットが渡される。

マルタ、モンテビデオ、リオ・デ・ジャネイロなどの日本とは陽射しの違う写真。

だがタケルはそのパンフレットの背表紙を見て笑った。


「印刷会社の住所が存在しないな……。これはネットのフリー画像を印刷しただけのパンフだ。金は確かに掛かっている……」


そう言うとパンフレットの表と裏を何度か見返していた。






翌日、休日だったカンナは自宅から自転車でタケルの事務所にやって来た。


「おはようございます」


と言い事務所に入るとタケルはパソコンに向かっていた。

タケルがパソコンを触りながら集中している時はカンナが来た事に気づかない事もある。

もしかすると泥棒が入ってもわからないのかもしれないと思った事もある。


カンナは事務所に来る途中で買った、サンドイッチをタケルの机に置いた。


「どうせ、また食事もしてないんでしょ……」


と言って空になっていたタケルのカップを取りコーヒーを淹れ、それも机に置く。


「なるほど……。見えて来た」


タケルはそう言ってサンドイッチの包みを開けると口に放り込む。

そして手に持ったサンドイッチを見て、


「何だ、カンナ……。来てたのか……」


と腕を組んでタケルを見ていたカンナに言う。


「ええ、そのサンドイッチを持ってね……」


とカンナはタケルの後ろに立った。

モニタにはいつもの様に数字が並んでいた。

タケルは得意のハッキングでWOPの資金の流れを追っている様だった。


「ワールド・オーシャンプランニングの口座、資金は別法人何社かに分けて送られていて、最終的にはマレーシアのMSIホールディングスって所で止まっている」


カンナは小さく頷く。

それを振り返る様に見るとタケルはマウスをクリックした。

するとオッサンから送られて来たメールを見せた。


「じゃあ、豪華客船も存在しないって事……」


「いや、あるよ……。船は登録がないと旅行のプランニング何て出来ないからな……」


タケルはオッサンからのメールをクリックした。

すると古い客船の写真が映し出される。


「これがプリンセスグレイス8世だ」


カンナが見ても豪華客船には程遠い幽霊船の様な錆びた船の写真だった。


「一九七〇年代に作られた船で、単なる鉄屑だな……。見せかけの修復中ってのがポイントだな」


カンナは顎に手を当てて、


「つまり、嘘の船をちらつかせてお金を巻き上げているって事ですね……」


タケルは何度か頷く。


「そうだな……。客は夢を買ったつもりで、実態のない、航路に金を払っているんだな。お前の友達の両親は一生、世界一周旅行なんて出来ない」


今度はカンナが頷く。


「酷い話……」


「ああ、酷い話だ……。中には夢のためになけなしの金で支払った人も居るだろう……」


カンナは、そっとタケルの机の上のサンドイッチに手を伸ばした。

その手をタケルが叩き、自分でサンドイッチを手に取った。


「ケチ」


カンナはタケルに舌を出して言う。


「これは俺のサンドイッチだ」


「買って来たのは私です」


事務所のドアが勢いよく開き、オッサンが入って来た。

しかしいつもと様子が違い、カラフルなシャツにハーフパンツ、それにパナマ帽まで被って来た。


カンナとタケルはその男をじっと見つめた。


「な、何だよ……。人がせっかくマレーシアまで行って来てやったってのに……」


カンナとタケルは顔を見合わせてゆっくりと立ち上がる。


「何で自分だけ」


カンナとタケルは声を揃えてそう言った。






テーブルの上には男も持って来たマレーシア土産が処狭しと並んだ。


「ほら、これなんてバティックのシャツだ。これからの季節に持って来いだ。ほら、チョコもあるし、紅茶もある」


男を睨む様に見ているカンナとタケルを宥める様に男は紙袋から土産の品を出して行く。


「で、成果は……」


タケルは静かに言った。

その言葉に男は我に返り、胸のポケットから数枚の写真を出して土産の上に置いた。


「これがプリンセスグレイス8世だ……」


ドッグにも入らず、港で半分沈む様に停泊している錆の塊の様にも見えるが、ちゃんと船体には「プリンセスグレイス」と名前が入っていた。


「去年の台風で沈没しかけて、見た通りの幽霊船状態だ。現地でも「幽霊船」って呼ばれてたよ」


「修理って……」


カンナはタケルの横で言う。


「これを修理するなら、新しく作った方がマシだろう」


男はそう言うと土産で買って来たチョコレートを口に放り込む。


「もう沈没船だ」


「まあ、そう言う事だ」


とタケルは立ち上がって、パソコンを触り、プリンタから一枚の紙を出し、男の前に置いた。


「間違いなく、あの会社から白州会系の下部組織に大金が流れている」


男はその紙を受け取ってじっと見つめる。


「なあ、オッサン……。白州会の凌ぎの質が変わったのは何故だ……」


タケルの言葉に男は手に持った紙をテーブルに放り出した。


「白州会系の組で沖村組ってのがあった。その沖村組の組長は、昔気質のオヤジでな。俺も若い頃は何度か世話になったよ。そのオヤジが一昨年死んで、代替わりしたんだ」


カンナとタケルは黙って男の話を聞いた。


「沖村を継いだのは安藤って男でな。コイツが元大手銀行マンだって言うじゃないか。まあ、金儲けが上手くて、あっと言う間の白州会本家の金庫番にまでのし上がった。ヤクザと言うより詐欺組織だな。今、流行のトクリュウまでやっているって噂だ。今じゃ沖村組は白州会の中枢組織だよ。金で頬を叩いて人を動かしている。そのやり方に反発している分裂派も勿論居る。白州会は派手にやってはいるが、分裂の危機にもある」


タケルはそこまで聞くと背もたれに寄り掛かり大きく息を吐いた。


「俺たちも手を焼いているんだ……。金の匂いがすれば奴らは容赦ないからな……」


男はそう言うと窓の外を見た。







「嘘でしょ……」


絢美は声のトーンを上げて言った。

絢美の住む地域は高級住宅街だった。

そのリビングは先日言ったホテル顔負けの大理石が敷き詰められていた。


今日は絢美の両親が世界一周旅行の為の最終説明会がリモートであるという事でそれが開催されるのを待っている所だった。


「小松原様……。お待たせいたしました」


約束の時間丁度に、ノートパソコンの画面にはワールド・オーシャンプランニングの担当者という男の顔が表示された。


「すみません、父と母が多忙のため、娘の私が代理でお話を伺います」


絢美が静かに言うと頭を下げた。


「あ、お嬢様ですか。承知致しました」


担当者も頭を下げる。

その横からカンナは顔を出した。


「あ、私はこの子の友人です。一緒に話を聞かせて下さい」


担当者は無言で微笑む。


「では、いよいよ航海となります。一年間という長い期間での旅になりますが……」


と担当者が話始めた所にカンナが割って入った。


「その前にちょっとよろしいですか……」


担当者は笑顔を絶やさずにカメラを覗き込んでいた。

そしてカンナはパソコンに保存していた沈みかけの幽霊船、プリンセスグレイスを映し出した。


「これがあなたの言う豪華客船ですよね」


担当者は何度かその写真を見ていたが、


「それは別の船ですね……。誤解です」


と答えた。

カンナは溜息を吐いて、


「じゃあこれも誤解でしょうか……」


画面にはタケルが何処からか見付けて来たワールド・オーシャンプランニングと、沈みかけの船を所有していた会社の売買契約書だった。

そしてその契約書にはしっかりとプリンセスグレイス8世の名前が記されていた。


「登記上、世界中にプリンセスグレイス8世という船は、この幽霊船しか存在していないので……」


担当者は一瞬沈黙したが、次の瞬間、一方的にオンライン映像は切られた。






数日後、カンナは事務所でタケルのラーメンを作っていた。

ようやくタケルの食べるラーメンを作らせてもらえる様になった。

インスタントラーメンなのに、麵の硬さやスープの濃さに拘りが強く、やっとタケルの許しが出るラーメンを作れる様になった。


「別に作りたくはないんだけどね……」


とカンナは無意識に声に出して言った。


「何か言ったか……」


とタケルはソファでテレビを観ながら言った。


「いいえ……。何も言ってませんよ」


カンナはコンロの火を止めて、手鍋ごとタケルの前に置いた。


「ラーメンばっかじゃ、身体に悪いですよ……。何でインスタントラーメンなんですか。お金いっぱい持ってるのに……」


タケルは割り箸を咥えて割りながら、カンナを見た。


「お前にもその内わかるよ……」


と言うと鍋のラーメンを啜った。


すると、また事務所のドアが勢いよく開いた。

そしていつもの様に男が入って来た。


「タケル……。終わったぞ」


と両手に紙袋を下げてタケルの向かいに座った。


「いやあ、お前の言う通りだったな……。今回も金になった」


男は大声で笑った。


カンナは男の持って来た紙袋をそっとつまんで覗き込んだ。

その手をタケルが叩く。


「ああ、これがお前の取り分、五億だ」


「五億……」


カンナは思わず声に出した。

男とタケルはカンナを無言のまま見たが、何も言わずに視線を戻した。


カンナはタケルの横に座り息を吐いた。


タケルは紙袋の中から一万円札の束を出し、テーブルの上に積み上げた。


「カンナ……。これ、お前の友達に返してやれ……」


そう言って三千万の束をカンナの前に置く。


するとテレビのニュースに巨額詐欺グループが摘発されたというニュースが流れる。


「株式会社ワールド・オーシャンプランニングは豪華客船での世界一周旅行を販売しており、被害者は千人以上になると思われます。この会社は架空の豪華客船を……」


そのニュースを三人はじっと見つめていた。


「お前か……」


男はタケルに言う。

タケルはラーメンを啜り、スープを飲んだ。


「ゴミは片付けなきゃな……」


「白州会、敵に回す事になるかもな……」


男はポケットからタバコを出すと咥える。

それを見てカンナはテーブルの上にバカラの灰皿を出した。


「この五億は何処から出たんですか……」


カンナは札束の入った紙袋をテーブルから降ろして身を乗り出した。


タケルは鍋に残ったスープを飲み、鍋をまたテーブルの上に置いた。


「WOPの金の流れを見た時に、その中に有名な投資家の名前が幾つかあったんだ」


タケルは立ち上がって、冷蔵庫からアイスコーヒーのボトルを出し、グラスに注いだ。

そしてそのグラスを男とカンナの前に置いた。

そして自分のグラスを持ってソファに座った。


「WOPにそろそろ警察が踏み込むって事と、その投資家たちのデータをごっそり消してやる事を条件に一人二億、五人の投資家に連絡した。まともな事やってないのわかってて投資家も金を出す。そんな奴らは一緒に捕まれば良いんだが、それじゃ金にはならん。だから今回は投資化から金をもらう事にした。まあ、この規模の詐欺だ。もう元は取っただろうからな……。ウィンウィンの関係だよ」


男はグラスのアイスコーヒーを飲んでニヤリと笑った。


「まあ、みんな素直に金出してくれたわ。今回は暴れる事も無かったからな……。俺たちとしても良い儲けだ。マレーシア旅行にも行けたしな」


男は声を出して笑った。


「それって悪い事なんですかね……。私、何か麻痺して来ちゃって……」


カンナは目を伏せて首を傾げる。


「騙された人にもいくらかの金は戻るだろう。こんなモン騙される奴が悪い……。授業料としては少し高いが、金を出す奴が居るから悪い奴がどんどん太って行く……」


タケルはカンナの肩を叩いた。


「夢ってのは買うモンじゃない。自分で叶えるモンだ……」


そう言うとクスリと笑った。


「言っただろう、金は金に集まって来るんだよ。覚えとけよ……」


タケルはアイスコーヒーを飲み干した。








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