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魔王、いいから力を寄越せ!~転生した俺が美人勇者と復讐聖女を救うまで~  作者: 裏の飯屋
第三章 狂気の勇者編

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第75話 ガウディス機関①


 リュウドウはミラ達と共にバルタザルへと帰還した。

 現在、バルタザル国内にある『国立研究所』にリュウドウはいる。

 場所が秘匿されており、王都からもかなり離れた場所にリュウドウたちの拠点はあった。


 清潔感のある白い壁と天井。

 窓のない廊下に、無数の無機質な扉が並んでいた。

 そこに温かみはなく、まるで生き物の匂いがしない施設。

 不安になるほどの静けさは、研究施設というより“監獄”に近かった。


 リュウドウは深い負傷に加え、セレスティア=フランシスカに正体を見破られ、赤光石の奪取にも失敗。

 もはや任務続行は不可能で、帰還するほかなかった。


 リュウドウは冒険者に偽装しているが、バルタザル軍所属の兵士であり、任務として赤光石の回収を行っていた。

 失敗した場合は報告を行い沙汰を待つことになる。

 軍法会議にかけられ即処刑といったことにはならないだろうが、任務から外される可能性はあった。


 リュウドウは今から傷の治療、今回の任務の報告の2つを行わなければならない。

 傷についてはミラによる応急処置と、痛み止めが効いているため今は平気だ。

 現在は治療に入る前に、先に報告を済ませようと歩いているところだった。


「やあ、おかえりリュウドウくん。長旅大変だったね、疲れただろう」


 廊下を歩いているリュウドウを、金色の髪を三つ編みにした長身の男が出迎えた。

 ヒールの高いブーツを履き、一見すると女性にも見えるその男は、エメラルドグリーンの鮮やかな瞳に人好きのするような笑みを称えている。

 彼は十年来の友人を迎えるかのような大仰な仕草で、廊下の真ん中に立っていた。 


「ドラクロワ……何の用だ」


 彼の名は、『エレナ=ドラクロワ』。

 このバルタザル国立研究所の研究員の一人であり、ガウディス直属の部下でもある。

 赤いシャツとタイトなパンツの上からは白衣を羽織っていた。


「ケガをしたんだってね? 大丈夫かい? 君がそんなになるなんて中々見られるものじゃないからね。労いと、興味本位さ。救護室には行かなくても平気かい? ボクが薬を用意して」

「黙れ」


 朗らかに、まくしたてるように言葉を繰り出してくるドラクロワに、リュウドウは鋭く目を細めて言い放つ。

 彼の口は、蛇口の壊れた水道のように止まらない。

 内容は有害無益で、ただ神経を摩耗させるだけだと施設内でも有名だ。


「いやあ相変わらずつれないなー。で? 今回の首尾は? その分だとこっぴどくやられたみたいだね。ねえねえどこの誰に」

「貴様に報告する義務はない。隊長か副長はいるか」


 リュウドウは怒りや苛立ちを露わにすることもなく、無表情にドラクロワをあしらいながら廊下を歩いていく。


「ハウザーさんもオルタニアも王様に呼び出されて王都さ。嫌になるよねえ、無知蒙昧(むちもうまい)なくせに領土的野心だけは人一倍なの」

「では局長は」


 ドラクロワの世間話には一切付き合うつもりが無いとばかりに、リュウドウは話を断ち切って質問を続ける。


「いるけど、ミラたちが報告に行ったよ。というか、局長が”後で傷を見るから報告が終わるまで部屋で待機してろ”って」

「チッ……!」


 だったら先にそれを言えと、リュウドウはとうとう舌打ちをした。

 帰路ではミラに投与された麻酔の影響で眠りに落ちており、目が覚めるとパーティメンバーは誰もいなかったのだ。


 リュウドウは踵を返して、別の通路に入っていく。

 ドラクロワは着いてこない。

 どうやら、待機命令を伝えに来ただけだったようだ。

 なおさら前置きの長さに腹が立ってくるリュウドウだった。


「ねえ、リュウドウくん……」


 背後から、ドラクロワの声がかかる。

 リュウドウは足を止めない。


「……君がそんな顔をするなんてね。まるで、自分の弱さを初めて知ったみたいだ」


 ピタリと足を止め、リュウドウは振り返る。

 ドラクロワの表情には笑みが浮かんでいる。

 だが、その鮮やかな瞳の奥には嘲笑か、あるいはもっと悪意に満ちたものが感じられた。


「貴様には関係の無いことだ」

「だね。まあ何かあったら言ってよ。ボクら、仲間だろ?」


 すぐにいつもの朗らかな笑顔へと表情が戻った。

 リュウドウは再び振り返って部屋に向かって歩き出す。


 ドラクロワは一見すると人畜無害な研究員だ。

 だが、リュウドウは常日頃から思っていた。

 ”あの男”の部下が、そんなまともなわけがないだろうと。

 だからこそリュウドウは、ドラクロワと必要以上に話さず警戒していた。

 

 ふと振り返ると、既にそこにはドラクロワの姿が無かった。

 まるで死神の残り香のように、現れるだけで不吉と不愉快を残していく奴だと感じた。


<TIPS>

挿絵(By みてみん)


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