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【11万PV感謝】魔王、いいから力を寄越せ!~転生した俺が美人勇者と復讐聖女を救うまで~  作者: 裏の飯屋
第六章 魔女と公爵令嬢編 /断章 魔王の記憶編

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第215話 幕間 重い女


 フレジェトンタを出て15時間ほどが経過し、俺は馬車の中で仮眠から目を覚ました。

 ゴトゴトと揺れる荷台では、隣からティアの寝息も聞こえている。


 まどろむ意識の中ふと薄目を開けると、ティアの金色のまつ毛の長さに驚く。

 見とれるのも悪いので視線を逸らす。

 御者台で馬車を進めるミユキと、その後ろで手元でナイフをいじっているレオナが見えた。

 二人は、何かを話しているようだ。


「ねえミユキー、昨日はフガクの部屋で何してたのー?」


 一応寝ている俺達に気を使ってか、ヒソヒソと声をひそめて喋るレオナ。

 

「……そんなの内緒です」


 ミユキは平坦な声で言った。

 レオナのいじりにも慣れてきたようで、ミユキもこうしてあしらうことが出来るようになっているようだ。


「言えないようなことしてたんだー」

「そんなことはありません。少しお話をして、一緒に眠っただけですよ」

「ふぅん。で、実際のところミユキはフガクのどこが好きなの?」

「え、ええ……?」


 ミユキがチラリと俺の方に視線を向ける。

 俺はつい薄目のまま寝たフリをしてしまった。

 別に声をかけてもよかったのだが、女子同士の秘密のお喋りに、割って入るタイミングを逃してしまったのだ。


「まあアタシも別にフガクのこと嫌いじゃないけどさ、ミユキはどこに惚れたのかなーって」

「そ、それは……」


 それは?

 俺も思わず耳を思わずそばだてる。

 確かにミユキから好きだと言われたし、前に進む勇気をくれるとかも言われた記憶がある。


 ただ俺には正直その自覚はあまりない。

 まあ別にそれがどんな理由であれ構わないのだが、気になると言えば気になるかもだ。


「……私に、”幸せになれるかもしれない”と思わせてくれるところです」


 そうなの?

 それってどういうことだろうか。

 幸せになっちゃいけない人なんていないと思うのだが、まあ自己肯定感の低いミユキのことだ。


 彼女にとっては俺が全力で褒めそやし、可愛い可愛いするところが琴線に触れているのかもしれない。

 そりゃもう初めて会ったときから俺は彼女を推しているのだから、当然の言動だったのだが。

 キモいと思われていなくてよかった。


「へえ、重いねー」

「えっ! 重いですか私……?」


 まあ確かに傍から聞いていると結構重いかもしれないが、俺は別にそうは思わない。

 

「そこまで考えて付き合う人ってあんまいないんじゃない? まあアタシも経験無いから知らないけど」

「私……一緒にいて疲れますか?」


 思いのほかショックだったらしく、やや本気のトーンで心配を口にしている。

 レオナもヤバいと思ったのか、慌てて取り成していた。


「いや別に疲れはしないけど……まあフガクだし大丈夫でしょ。単純そうだし、スケベだけど一途っぽいし」


 ほっとけ。

 とはいえ、ミユキが心配することなど何も無いのだ。

 むしろ俺の方こそ、こんな美人で優しい彼女が、何で俺のこと好きでいてくれるのかの方が心配なわけだが。


「でも……フガクくんは、私のどこがいいんでしょう……」

「え? 告白されたときに言われなかったの?」

「好きだと言ってくれましたし、それだけで本当に充分です」

「けど具体的にどこが、みたいなことは言われないと? もしかしたらおっぱいだけが好きかもしれないと?」


 おいこらメスガキ、ツインテール千切るぞ。


「そ、そこまでは言いませんが、私は怖がられることも多いので」


 言われ、俺も確かにミユキのどこが好きとかはあまり伝えていない気がする。

 ぶっちゃけ嫌いなところなど一つも無いのだが、具体性が無いと「本当に私のこと好きなの?」と思われても致し方ない。


 俺は自分の語彙力の無さを「君が大好きなんだ」という言葉で誤魔化さず、ちゃんと言っておけばよかったと思った。


「聞けばいいじゃん。ねーねー私のどこが好きー?って」

「そっちの方が重くないですか?」

「まあね」


 別にそんなことはないが、聞きにくいという気持ちは分かる。

 俺も逆の立場だったら、鬱陶しいと思われないかなと不安にはなるからだ。


 ただ俺としては、ミユキの繊細で少し感情が重ためなところも好きなのだ。

 それはそのまま、彼女の思いやりの深さに繋がっていると思うから。


「どうする? 君のうなじが好きなんだ、一生ポニーテールを止めないでくれって言われたら」

「……い、一生止めません」

「君の綺麗な腋に惚れたんだ!ずっと顔を埋めてたい!って言われたら?」

「ふ、服の袖を全部切り落とします」

「じゃあ君の安産型の腰回りが……」

「私身体しか魅力ありませんか!?」


 涙目になってきているミユキ。

 レオナの中で俺はどんな性癖になっているのだろうかと、若干不安になってきた。

 そんなわけないだろう。

 

「まあさすがに冗談だけど。でも身体だって立派な武器のひとつだと思うけどってティアなら言いそうじゃない?」

「そ、そうですね……」

「そんな調子でフガクに迫られたときどうすんの」


 レオナの言葉に、ミユキが言葉に詰まる。

 どうするんでしょうね。

 無自覚天然で色気を振り撒くミユキなので、俺の理性が崩壊する可能性だってゼロではない。


「あ、大丈夫です! フガクくんとは昨日一緒に寝ても何もありませんでしたから、そういうことはしないと思います!」


 ……え?そうなの?

 いやそんなことないよ?めちゃくちゃ興味あるけど。

 隙あらば迫ろうと思ってたよ?

 昨日は疲れてスヤスヤ寝てたけど、余裕あったら絶対胸くらい触ってると思うよ。


「いやー……それはどうだろうね」

「フガクくんは健全で奥ゆかしい人なんです。そういうところも素敵なんですっ……!」


 どうやら俺は、今後ミユキに迫ることも難しくなってしまったらしい。

 俺が口を開けてショックを受けていると、目の前で寝ていたはずのティアの目が開いているのが見えた。

 彼女も俺と同様に、こっそり話を聞いていたらしい。


「フガク、苦労しそうだね……」


 レオナの呟きと共に、俺はとほほとため息をついた。

 ティアは「まあ頑張れ」と言いたげな視線で、冷や汗を流しながら苦笑する。


 俺とミユキの関係性のさらなる進展は、これまで以上に遅くなりそうだった。


お読みいただき、ありがとうございます。

モチベーションにもつながりますので、もしよろしければぜひ評価や感想などいただけると幸いです。

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