2.女王様、誘拐される。
はぁ、私は一体なぜこんなところで野宿を…?
確かあれは五時間ほど前のことだったか…
「ひ、姫様が立ったーッ!!!!」
「なんだって!?」
何故、私は立ってしまったのだろうか…
いや、理由は分かりきっているのだ。
乳母がぼ、母乳を…!!そんなプレイしたこと無いのに…
ちなみに、ハイハイで盗み聞きした情報によると、
お父様は「ベルホワイト・リオナイト」
お母様は「ルージュ・リオナイト」 らしい。
そして、30分もたたない内に、城に噂が広がって
いった。
「姫様が立ったんだとか…」「まだ一才にもなって
いないのに!?…」
ク○ラくらいの感動だな、皆…。
またやらかしてしまったが、これで自由に歩き回れると
言うものだ。普通の生後2ヶ月ほどの赤ちゃんは、
首が据わっていなかったりするらしいが…それは剣聖の
お陰なのだろう、産まれた時から歩けたと思う。
とにかく、この時の私はことの重大さを理解
していなかったのだ…
まず、私が将来有望だが、城中を歩き回っている
という噂が広まる。
(私はそんなことは露知らず歩き回る)
次に、城下町のスラムにまで噂が広まる。
(私は睡魔に勝てず爆睡)
そうしたら後はトントン拍子だ。まるで内通者でもいるかのように速やかに誘拐されてしまった。
…いや、手際が良すぎだな!?
私を誘拐した男二人は火を囲んで笑った。
「ふっ、軽いもんだぜ!こんなガキ一人、城に潜む仲間に頼めば楽勝よ!!」
口軽すぎだろ!?
「グキュルルルー…」「何だ?魔物か!?」
そういえば、昼から何も食べていない。
もう、夕暮れだから死にそうだ…
せっかく、転生、した、の、にー…
ふいに、走ってくるような足音が聞こえる。
「お前ら!どく!」「「へい、ボス!!」」
…な、なんだ…?
「これを飲む!お前に死なれる、困る!!」
た、助かったのか…?
「私は…えっと、獏の亜人のネオ。こんにちは、んー、ぷりんせす?」
「ぅあ?(何で私に自己紹介をするんだ?)」
「ボス、何で赤ん坊に自己紹介を?」
こ、こいつ、私の心を読んだ!?
「これはおまえより、ずっと偉い。証拠に、さっきから、ちっとも、泣いてないし、何だか偉そうにしてる。それに、おまえよりも、賢いと、思う。だから、
挨拶しとけ」
「「へい、ボス!」」
男二人は揃ってビシッと敬礼をして、
「赤ん坊様、こんばんは!!俺らはハイエナの亜人の
スースーと「シーシー」でやす!よろしくお願い
しやす!」とはっきりとした声で言った。
「あぁう!(よろしくな!)」
随分気の良い連中に捕まったもんだな、私は…
もうすっかり気に入ってしまっている。
さて、私はどうするべきか…
「赤ん坊様、肩車とかしやすかい?」
…ニヤリ、良い作戦を思い付いたぞ。
こいつらを罪に問わず、私も家に帰れる作戦を…
作戦に、期待しないでね。
そんなすごい作戦じゃないから。