16.家庭教師と名前
「リリーちゃんの家庭教師さんはなんて呼べばいいですか?」
「そうだな……」
家庭教師はちょっと考えて、
「エリーさんと呼べ」と言った。
そういえば、なんでコイツの名前を
私は気にしなかったのだろう。
逆説的に言うなら、
なんでサクラはそれを聞いたのだろうか。
……なんか、まぁいっか。
「どうした、リリー」
「リリーちゃんやっぱり自分の家庭教師のエリーさんを取られるのがイヤなんじゃないですか!?」
「ははは、そんな理由でコイツが悩んでいたら面白すぎるな!!!」
「何だ家庭教師、解雇するぞ」
「解雇は脅しじゃないんだなこれが!!!」
エリー…どっかで聞いた気がしなくもない、が。
ありふれた名前だしなぁそもそも。
童話に出てくる預言者の名前は大体エリーだからな。
「エリー、それで今日は何するんだ」
「一旦お前は即死ダンジョンに送るぞ」
コイツ私が王族だって知らなかったりするのか…?
「…エリー先生、今日は?」
「先にナルミヤの事を把握しておかないといけないからお前は一旦自主勉強だ」
自主勉強の時は大抵コイツは山盛りの宿題を出していくので、自分はやること分かってますよって顔で魔術の勉強をする。宿題回避術である。
「分かった」
「さて、サクラ・ナルミヤ」
「はい、元気です!!」
「…そうか。使える魔術・魔法はあるか?」
「えっと…全属性一応使えるんですが弱くて…」
「全属性使えるのか、すごいな」
エリーはサクラを撫でた。しばらく撫でた。
「えへへ」
「なんだアイツ…」
アイツ私には一回も撫でたことないくせに…
「時空属性はどうだ」
「まだやってみたことないんです!」
「そうだな…両手を前に出せ」
サクラは両手を前ならえの時のように前に出した。
「はいッ」
「手と手の間の空間を認識できるな?」
「…はい」
「そこに何かを転移させてみろ」
「…むむむ、エイッ」
サクラの両手に挟まれたのは…
「…サクラ・ナルミヤ、ナメてるだろ私を」
家庭教師は今にも死にそうなくらい腹を抱えて爆笑している。
「はっははははwwwww愉快だなこれはwwwww」
「おい爆笑すんな家庭教師が」
「ご、ごめんね」
手をパッと離したナルミヤは、
とても嬉しそうな顔をしている。
魔術が使えて嬉しいのだろう。
「いいか、サクラ。時空魔術はお前に向いてるみたいだが、大体の魔術の源は想像だ。」
「は、はいッ」
「時空魔術で何ができると思う?想像してみろ」
「自分がテレポートしたり…他人を飛ばしたり、物をいつでも取り出したり、とかですか」
「時空魔術を固形に出来れば、触れば転移する、いわゆるダンジョンの転移トラップみたいなものを作れるし、召喚…極めれば誰かを転生させることだって出来るかもな」
「そ、そんなことできるんですか!?」
「いや、ただの想像だがな」
エリーはサクラにそこら辺のツボを渡した。
「お前はこれの時を止めることが出来る」
「ハッ…!!『時空魔術』だから…!!」
「さぁ、やってみろ」
「は、はい!!」
サクラはツボを見ながら念を送っているみたいなポーズをしている。
そして急にエリーはツボから手を離した。
「えっえ、えぇ!?」
サクラはツボに綺麗な2度見をかました。
ツボが浮いているからだ。
「ちょ、も、もう無理……!!」
「おっと」
サクラは汗をかきながら床に寝転んだ。
「時空魔術は制御次第で無限大だ。魔術とは、常に想像し、創り出す物だ。イメージを磨き続けろ。戦術を考えろ。先手先を読め。」
「…はいっ、先生!!」
アイツ私に教える時あんな丁寧じゃなかったよな…




