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自戒の旅路  作者: 東西南北


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4話

 広大な森の一角に二人の冒険者。一人は命を救われた者で、もう一人は命を救った者。

 そんな二人の間に佇む空気は異質だった。


「あの、金をよこせとはどういうことでしょうか?」


 命を救ってもらった者からの予想していなかった言葉。

 たまらず聞き返したリズレット。

 

「説明しないとわかんねぇのか。アレの討伐報酬を俺によこせってことだよ」


 そういってギルザームが指す先には、三体の魔獣の死骸。

 リズレットは、最初は冗談を言われているのだと思っていた。だが、ギルザームの目を見て、男が冗談を言っているわけではないと理解してしまう。

 もとより何かお礼をするつもりではあったリズレット。むしろ直接金銭を要求されたことで後腐れがなくなるかもしれないと自分に言い聞かせることにした。


「今はお金を持っていないので、帰って依頼の報告完了をしてからでも良いでしょうか?」


 リズレットは今すぐにでもこの場を去りたかった。

 理由は主に二つ。今の状態で他の魔獣と出くわしたら、何も出来ずに死んでしまうかもしれないから。それと、目の前にいる男とこれ以上関わるのは良くないと感じたから。

 だが、そんなリズレットをギルザームは帰そうとはしなかった。

 何といっても、ギルザームの目的はまだ達成していない。その目的のために、彼女の命を救ったのだから、ここで帰してしまっては無駄骨もいいところ。金銭はあくまでもついでの産物。

 本題はべつにある。


「お前、これについて知ってるか?知ってるなら、その場所まで案内しろ」


 そう言って、ギルザームは自分が受けた依頼の紙をリズレットに見せた。

 その内容にリズレットは驚きを隠せなかった。リズレットは、目の前の男を自分よりも高位な冒険者だと思い込んでいた。

 それがまさか、九等級の依頼を受けている冒険者だとは。

 既に数時間は探していて一つも見つかっていないと知ったら、さらに驚くことになっていただろう。

 こんな簡単なことを真剣な顔で聞いてくるギルザームを、リズレットは何か裏があるのではないか疑ってしまう。

 特に裏などないギルザームは、リズレットの返答を待っていた。

 

「教えるのは構いませんが、採取は自分でしてくださいよ。それと、アレの素材を採取させてください」


「わかった」


 リズレットは渋々案内をすることに了承した。

 案内をする前に、魔獣の死骸の側に寄ったリズレット。カバンから短検を取り出すと、依頼完了の報告に必要な分の素材を剝ぎ取った。

 その姿を黙って見るギルザーム。

 素材の剥ぎ取りを終えると、二人はその場から移動をした。

 最初に向かったのはミズミソウが採取できる場所。

 リズレットの案内で、二人は元居た場所から五分ほど歩いた。

 

「ここが、ミズミソウをよく採取できる場所です」


 そこは、きれいな水の流れる場所。その周囲には、複数の種類の植物が生い茂っている。

 ギルザームは依頼の紙を取り出すと、そこに描かれた絵と複数の植物を見比べた。複数の植物の中には、絵と一致する植物ミズミソウがある。

 ギルザームは指定されている数を採取すると、離れて見ていたリズレットに合図を送った。

 その合図を見て、リズレットは次の場所へと向かった。その後を追うようにしてギルザームも次の採取場所に向かった。

 

「ここが、ユズノクラゲを採取できる場所です」


 そういってリズレットが案内をしたのは、大きな崖がそびえる場所。

 こんな場所に本当にあるのかと疑問に思うギルザーム。そんな疑問を晴らすかのように、リズレットは崖の方を指さした。

 リズレットが指さす先には、崖から生える植物が。そこだけじゃなく、その近くにも同じ植物がちらほらと見える。

 少し高い場所に生えていることもあって、初めて採取をする冒険者は面倒くさがるが、ギルザームはそんなことはなかった。

 ユズノクラゲを見つけるや否や、跳んで採取するのを繰り返した。

 そんな姿を、リズレットは目を点にして見ていた。ほとんどの九等級冒険者が崖を登って苦労を採取するのに、目の前の男は力業で問題を解決している。リズレット自身も九等級の頃は、必死に崖を登って採取をした。


「そんなのありなの……?」


 ものの数分で必要分を採取し終えたギルザームに、リズレットは思わず小言を漏らした。

 全てを採取したギルザームと、その案内を終えたリズレットはようやく帰ることができた。

 帰る場所が同じ冒険者協会ということもあって、帰る道が同じの二人。特に親しい間柄でもない二人から会話が生まれることはない。

 そんな状態に何も感じていないギルザームと、気まずさを感じているリズレット。

 リズレットは何か話すことはないかと考える中で、そういえばと大事なことを思い出す。実はまだ、お互いの名前についてすら知らないことを。

 気まずさを晴らす思いで、リズレットは名乗る。


「私は六等級冒険者のリズレットです。よろしければ、貴方の名前を教えてくれませんか?」


 一緒に歩いていた女からの唐突な自己紹介。

 流石のギルザームも、何も答えないという選択肢はなかった。


「俺はギルザーム、今は九等級冒険者だ」


 それを聞いて、リズレットの動きが一瞬だけ止まる。

 リズレットは知っていた。

 冒険者ギルザームの名を。

 

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