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8.光華への告白

今日の話は、少し文字数多めです。

(禍津 明視点)


「……確か、ここが指定された場所だった筈……」


「あっ……お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!」


ードンッ!


「ぐふっ!」


……指定の場所へやって来た俺を待っていたのは、やはりと言うべきか……光華の突進だった。


「ああっ!……お兄様、ごめんなさい!」


「い、いや……大丈夫だ……」


ちょっと痛いが、この程度なら平気の範疇だ。


「……で、ここは何なんですか?……影華から、ここに来ればお兄様に会えると聞いて来たんですが……」


「あ~……まあ、ちょっとしたシチュエーションを楽しめる空間がこの先に有るらしいぞ」


「そうですか……それにしても、影華ったら私を大人しくさせるために催眠兵器(・・・・)なんて物まで作り出したんですよ?……流石にやり過ぎだと思いませんか?」


「さ、催眠兵器か……」


もはや、名前に兵器って付いてさえいれば何でも作れる異能になってねぇか?


まあ、今更だが。


「……まあ、それで先程まで眠らされていた訳なんですが……お兄様、ここで何をするんですか?」


「ん?……光華とのデートだが?」


「で、でででででででででデートですか!?」


「慌て過ぎだろ……」


いやまあ、光華が俺を滅茶苦茶好いてるのは知ってるが……本当に俺の事になるとポンコツになるなぁ。


……そんな光華も可愛いから気にしないが。


「だ、だってデートだなんて!」


「……ま、日頃から世話になってたし、その礼みてぇなもんだよ」


「ですが、そうなると影華も……」


「影華は秀光との高級ディナーを選んだ。……それで話は終わりだ」


実際は違うが、ほぼその通りなのでこれで押し通しておく。


「は、ハァ……それにしてもお兄様とのデートだなんて……夢みたいです!」


「ところがどっこい、夢じゃねぇぞ」


「分かってます……分かっているから、浮かれてるんです……」


デートってだけでここまで喜ぶとは……


告白したらどうなっちまうんだ?


「……とはいえ、あんまり入口で駄弁るのも悪いしさっさと行くとするか……」


「そ、そうですね……ところで、シチュエーションとはどんな感じの……」


「それは入ってからのお楽しみだ」


「ふふ、そうしますね……」


そうして俺達は、シチュエーション再現空間の中に入った。


そこにあったのは……


「おお、まるで本当にそこに居るみてぇだな……」


「これは……私達の家の近所にある公園、に酷似していますね……」


俺が最初に指定した舞台は、俺達の家の近所にある小さな公園だった。


ちなみに、時間は夕方に固定していて、空は茜色に染まっていた。


「ははは……今回のデートは、俺にとって思い出に残っている場所を選んだつもりだ」


「思い出……確かに、お兄様が引きこもりになる前は私達3人とお母様でよくこの公園に来ましたね……」


「ああ。……俺も引きこもってなかったし、お袋も育休を取ってたからな……」


俺が前世の記憶を取り戻した頃には、お袋は仕事で家を空けがちになっていた。


だからこそ、光華と影華が何とか頑張ってくれていた訳だが……


「……あの頃から、私は今と変わらずお兄様にベッタリでしたっけ……」


「そうだな。……逆に影華は黙々と砂場にリアルな兵器の設計図を書きまくっていた覚えがある」


「あの設計図の兵器、普通にマズい物が多く含まれていた気がするんですが……」


「……俺も同感だ……」


俺が公園の遊具で遊んでいた時、光華はベッタリと密着して来て、影華は砂場に兵器の設計図を書きまくっていた。


……今思い返せば、影華が砂場に書いた設計図はマズい代物ばかりだったが。


「……まあ、過ぎた事を言っても仕方ねぇが」


「そうですね……」


取り敢えず、あの設計図を悪人が見てねぇ事を祈ろう。


と、そんなタイミングで……


ーザザザッ!


「お、次の舞台に変わるのか……」


「……し、心臓に悪い演出ですね……」


突然、周囲の風景にテレビの砂嵐の様な異変が生じたかと思えば、次の瞬間には周囲の風景は一変していた。


「光華、ここも懐かしいなぁ……」


「……近所の商店街ですか……」


次の舞台は、俺達の家の近所に立ち並ぶ商店街だった。


「……本当なら、舞台と一緒にシチュエーションも設定出来るんだが……ラストまでは懐かしい場所の再現に留めておくつもりだ」


「そ、そうですか……」


まあ、本音を言うと俺が良いシチュエーションを思いつけなかっただけなんだが。


結局、俺はその辺素人でしかねぇからなぁ……


「……それにしても懐かしいだろ?……小さかった頃、よくお袋に連れられて来たからな……」


「ふふ……'私ったら、ここでもお兄様にベッタリでしたね……」


「本当に、何処でも光華は俺から離れたがらなかったよな。……逆に影華は1人離れて模型屋に入り浸っては、お袋に模型をねだってたっけか……」


「……その結果、影華の部屋が完成した戦艦や戦闘機、それにロボットのプラモデルで埋め尽くされるとは思っても居ませんでしたが」


あれ全部買うのに何円かかったのか……


知りてぇ様な、知りたくねぇ様な……


「……そういや、あの頃の影華は『いつか巨大な戦艦や戦闘機、そしてロボットを錬成出来る様になりたいのです!』……とか言ってたけど、未だに諦めてねぇのか?」


「多分、諦めてないと思います……」


「そ、そうだよな……」


ただ、影華ならマジで出来ちまいそうなのがなぁ……


「……まあ、影華の話は止めましょう。……それにしても、再現空間とはいえここにお兄様が来るのは久しぶりですね」


「……そうだな……」


「ふふ、次はどんな懐かしい光景を見せてくれるんでしょうね?」


「それは見てのお楽しみだ」


ーザザザッ!


その後、俺達は思い出の光景を見て回った。


俺と同クラスの女子を牽制するため、よく俺のクラスに光華が入り浸っていた小学校。


夏休みに早起きして向かったラジオ体操。


光華や影華と屋台を回った夏祭り。


光華や影華とこたつに入った冬の1日。


……俺が光華と築いた何でもない日常の思い出の舞台を、俺達は懐かしみながら見て回っていた。


そして、その時はやって来る。


ーザザザッ!


「……っ!?……ここは何処で……って、私はどうしてドレスを着用しているのですか!?」


最後の場面転換……


それが終わった時、俺は黒のタキシードに、光華は純白のドレスにいつの間にか着替えさせられていた。


「……思い出を懐かしむ時間は終わった。……それだけの事だ」


「……この後、何があるんですか?」


「……すぐに分かる」


「……そうですか……」


そんなやり取りをしながら、俺達は先へと進む。


そこには……


「明様、光華様、お待ちしていたのじゃ。……私はラヴィ・リンスゥ・マネージャー……このシチュエーション再現空間の管理人を担当する者なのじゃ」


「……ラヴィ校長の新しい分身体が出て来た……」


「え、どういう……んん?……分身体、ですか?」


光華は戸惑っているが、俺は構わず話を先に進める。


「……で、準備は出来てるのか?」


「はいなのじゃ。……今回のディナーは、国産黒毛和牛のローストなのじゃ」


「……お兄様、かなりの高級料理ですよ!?」


「心配するな。……既に支払いは終えている」


かなりの出費だったが、光華のためだと思えば安い買い物だった。


……買い物で思い出したが、頼んでいた婚約指輪はケース付きでタキシードのポケットに入っていた。


「本当なら、もっと後にするべきなんだろうが……このままじゃ、せっかくの料理の味が緊張で分からなくなっちまう」


「……お兄様?」


「光華……今まで、お前の好意を受け流したりして悪かったな」


「いえ、私はお兄様のお側に居られるだけで幸せですから……」


……ああ、本当に健気だな……


これでドン引き発言がなきゃ、清楚って言えたんだがなぁ……


ま、可愛い事に変わりはねぇが。


……そろそろ、覚悟を決めるか。


「……だから、この曖昧な関係は終わりにしよう。……いつまでも光華の好意を受け流すのは、流石に男として駄目だろうし……」


「……お、お兄様!?……待っ……そんな急に……」


「光華!……俺と、結婚を前提に付き合ってくれ!」


「っ!?」


俺は、ムードも何もねぇ状態で告白した。


いやだって、このまま料理食ったら味を感じ取れねぇ気がするし……


そう誰かへの言い訳を心の中でしていると……


「……お兄様……少なくとも、男性であるお兄様は妻を何人か娶る事が可能です。……お兄様は、どうされるおつもりですか?」


「俺は……出来る事なら、光華1人を……」


「いえ、ハーレムは築きましょう!……その方が、お兄様が優れていると実感出来ますし……何より、家族は多い方が良いですしね」


「そうか……」


この世界の女性は、男性がハーレムを築く事には寛容かつ積極的だったりする。


……それでも、思うところはあるが。


「ただし、第1夫人の座は譲りませんよ?」


「勿論、そのつもりだ」


「なら良いでしょう。……交際を受け入……」


ーぽろっ……


「っ!?」


交際を受け入れて貰える……というタイミングで、光華の目から涙が溢れた。


「あっ……駄目ですね。……思わず嬉し泣きしてしまいました。……ですが、これだけは言わなければなりません。……交際を受け入れます……お兄様、大好きですよ」


「……俺も大好きだ……光華……」


ーちゅっ……


そうして告白は成功し、無事付き合う事となった俺達は静かにキスをした。


……そのキスの味はほんのり甘く、更にキスを終えた光華の赤面した顔はとても愛らしかったのだった。

ご読了ありがとうございます。


もう少し描写しても良かったかもしれませんが、ぶっちゃけラブコメとか書けません!


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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