53.猫又の追憶 邂逅
この話で出て来るかつての英雄達の異名は、ぶっちゃけ覚えなくても構いません。
(前話から十数分後……禍津 魅怪視点)
『……という訳で、お主の秘密が明にバレてしまったのじゃ……すまぬ……』
「別に良いニャ。……どうせラヴィが隠し切れるとは最初から思ってニャかったからニャ~」
『どういう意味じゃ!?』
「……ラヴィは嘘をつくのが下手って意味ニャ!」
ふぅ……
いきニャりラヴィから電話がかかって来たかと思ったら、ミャ~の秘密が明にバレたって……
最初からこうニャると予測していたとはいえ、胃が痛くニャって来たニャ……
『わ、悪かったのじゃ……それはそうと、明の才能は凄いのう……本当に、父親は分からんのか?』
「……精子バンクでランダムに選んだ子種ニャ訳だから、全く見当もつかニャいニャ」
『それについてなんじゃが……その話は本当なのかのう?』
「……どういう意味ニャ?」
どう言われても、真実ニャのは変わらニャいニャ。
そう、思っていたのに……
『もしや、是正の子種じゃ……』
ああ……
やっぱり疑ってたかニャ……
でも……
「……そうだったら、どれだけ良かったかニャ~……」
『あっ……す、すまんかったのじゃ……』
ラヴィが言った者のフルネームは、水清院 是正……
かつてミャ~が愛し、あの壮絶ニャ戦いに加わるきっかけにニャった……かつて英雄と呼ばれた者の1人……
当時の火業院家当主であり総理大臣だった圧政の張本人を打倒した後に、民衆の支持もあって総理大臣の席に座った男……
歴代でも最高で最優と称される、文句無しの総理大臣だったニャ……
「……是正は、激務による過労がたたって早死にする最期の時まで誰にも子種をやらニャかったニャ……」
『相棒ポジションじゃったお主にも、か?』
「そうニャ……是正は死ぬ間際でも、遺体は葬式が終わり次第すぐに火葬する様に頼んで来たぐらいだからニャ~……当然、遺言は実行して火葬まで誰にも遺体から睾丸の摘出ニャんかはさせニャかったニャ!」
『……疑って悪かったのじゃ……』
……まあ、疑われてもおかしくニャかったのはミャ~も自覚してるニャ……
「……多分、是正は自分の子種の価値を完璧に理解した上で、誰にもやらニャいって判断を下したんだと思うニャ……」
『まあ……誰かが子種を欲する内は、交渉の手札に出来るからのう……』
「……でもま、最後までその手札が切られる事はニャかったんだけどニャ~」
『らしいのう……』
あ~あ、欲しかったニャ~。
……かニャわニャい願いとはいえ、実現出来てたらどれだけ良かったかニャ~。
そういえば、是正は初めて会った時も……
……………………
……………
……
…
「……ふふ、余の屋敷に忍び込んだ盗人がどんな顔かと思えば……なかなか美人ですねぇ」
「……宝物部屋で待ち伏せとか、趣味悪いニャ」
是正と初めて会ったのは100年以上前、水清院家の宝物部屋での事だったニャ。
当時は火業院家当主を総理大臣に据えた政府が無能力者や弱い異能力者を弾圧・虐殺していて、ディストピアそのものニャ時代だったニャ。
……しかもその政府、あろう事か天下の皇族や他の華族には邪魔をすれば滅ぼすと脅しをかけるレベルで独裁を敷いてる状態だったんだニャ。
それもこれも当時の火業院家当主、火業院 閻暁の異能がとんでもニャい強さだったが故に起こった悲劇だったんニャけど……
それは今、どうでも良いニャ。
「あ~、本題の前に1つ。……ここにある宝は全て政府の人間を誤魔化すための贋作です。……本物は既に売り払って、反乱軍の資金にしてしまったので……」
「……そうかニャ……で、本題はニャにニャ?」
……当時、是正は政府にバレニャい様にしニャがら民衆達の支援をしていたニャ。
それこそ、両親を含めた家族を説得し家財を売り払ってまで……
「ふむ……今、民衆の間では政府を倒そうとする動きが起こっているのは貴女も知っていますよね?」
「それぐらいは知ってるニャ」
「……とはいえ、民衆達だけでは厳しい戦いでした」
「当たり前ニャ」
民衆だけであの政府を打ち倒せるのニャら、弾圧や虐殺は起こってニャいニャ。
「ですがそこに……民衆の旗頭となれる者達が現れたのです」
「ニャ?」
「……"焼血の闘士"、"不敗の老兵"、"不死身の吸血姫"、"希望の役者"、"迷宮の巫女"、"腐乱の魔女"、"孤高の屍仙"、"明星の賢人"、"朧月夜の処刑人"、"袋小路の狙撃手"、"白雪の剣客"……と呼ばれる者達です」
「いや、1人足りニャいニャ!」
ミャ~だって、その程度の情報は知ってたのニャ。
「おや、お詳しい様で……そうそう……かく言う余も、仮面を被った上で"五月雨の貴公子"として旗頭の1人を務めさせていただいていますね」
「ふ~ん……え?……お前自身が争いの最前線に出てるのかニャ?」
「何かおかしいですか?」
「……ぷぷっ……お前、華族の割に面白い奴だニャ~」
わざわざ自分が前線に出るって……
それだけ民衆が大事ニャのかニャ?……って思った記憶があるニャ……
「え~っと、その反応は余の事を気に入ってくれたと見て宜しいですか?」
「……そうニャけど、その喋り方どうにかニャらニャいかニャ?……一人称と態度がチグハグで、聞いてて気持ち悪いニャ……」
「どうにもなりませんね。……余はこの喋り方が1番やりやすいので」
「ニャニャ……」
……未だに、是正の喋り方はニャんか気にニャるんだニャ~。
「……って、また脱線してしまいました……」
「あっ……そういや、どうしてミャ~が来るって知ってたんだニャ?……ニャにか裏があるとしか……」
「正解です。……実は数日前から、あちこちで水清院家の財宝についての噂話を流していましてね……その日から、余はここで待ち伏せしていたんですよ」
「……よくそんニャ賭けに出たニャね~?」
確かに、ミャ~は近くの町で水清院家の財宝についての噂を聞いて来ていたニャけど……
かなり確率の低い賭けに変わりはニャいニャ。
ほんと、今思い返してもニャんでそんニャ賭けに出たのかニャぞだニャ……
「その懸念はもっともですね。……実際、ここ数日で貴女とは無関係の泥棒が何人も来ましたから……」
「馬鹿ニャのかニャ?」
「ですが、余は賭けに勝ちました。……昔から権力者の間では噂に上がっていた、猫又の泥棒に出会えたんですから!」
「……それで、一か八かの賭けをしてまでミャ~を呼び寄せた理由はニャにかニャ?」
是正は賢い馬鹿だったニャ。
一見すると非効率的な方法ニャのに、ニャんだかんだ目的を達成出来てた事も含めて……
「な~に、そんなに難しい事ではありません。……ただの勧誘ですよ」
「勧誘ニャ?」
「ええ。……貴女には13人目の旗頭、民衆達の英雄になって欲しいと言えば分かりますか?」
「……お前、ミャ~相手にニャにを言ってるか分かってるのかニャ?」
是正の提案は、正気を疑うものだったニャ。
仮にそれを受け入れても、ミャ~には全く旨みがない提案でしかニャい……
ニャのに……
「勿論、嫌なら断っていただいて構いません。……しかし、余としては貴女の力が必ず必要になるという確信があっての勧誘ですので……」
「……ニャんで、ミャ~ニャのニャ?」
「勘です。……こう……ビビッと来たんです!」
……正直、馬鹿みたいニャ理由だと思ったニャ。
でも同時に、是正という男の限界を見てみたくもニャったニャ。
「……提案を受け入れるニャ」
「っ!?……え、本当に今ので良いんですか!?」
「どうしてそっちが驚くニャ!」
「それは……余ですら、こんな事を言われたら相手をぶん殴る自信があるので……」
「寧ろ、よくそんニャ提案をしたニャ~……」
こうして、ミャ~は是正に付き従って政府への反乱へと参加する事にニャったニャ。
……最終的に、是正にベタ惚れにニャるニャんて知らニャいで……
……………………
……………
……
…
『……お~い、どうしたのじゃ~?』
「ニャ?……ごめんニャ、ちょっと是正と初めて会った時の事を思い出してたニャ……」
『何で今なんじゃよ……』
「うっ……」
確かに、通話中にするべきじゃニャかったニャ……
『じゃ、そういう訳じゃからすまんかったのじゃ!』
ープツン……
「ハァ~、憂鬱だニャ~」
ミャ~にも是正と同等のカリスマや運、事務処理能力があればもっとマシニャ生活を過ごせたのかニャ~?
……いいや、そんニャの"もしも"でしかニャいニャ。
「……ミャ~が言うのもおかしいんニャけど、本当に猫の手も借りたいニャ~!」
日々の業務に加え、息子に仕事がバレたストレスで胃が痛くニャって来たニャ……
これはもう、胃薬が欲しいかニャ~?
そう考えたミャ~は机の上に置いてた胃薬を飲むと、また仕事に戻るのだったニャ……
ご読了ありがとうございます。
かつては13人居た英雄も、今や4人しか生き残っていません。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




