52.秘密はバレる
アイデアが……浮かばない……
(禍津 明視点)
「そもそも、オレは捨て子でなァ。……幼少期は、組織が別名義で運営してた孤児院で育ったもんだァ」
「グハハハハ!……いきなり重いなぁ!……ま、私達の方がもっと過酷だったが……」
突如として始まった武音子先生の過去話を聞く俺達だったが、いきなり重めの話が出て来たな……
「……ここまでは、孤児院をヤバい組織が運営してたって事を除けばよくある話だァ」
「グハハハハ!……それは除いちゃ駄目だろ!」
「良いんだよォ。……ただ、過去のオレは短気かつ狂暴な性格でなァ……近付く者全員に噛みつき続けてる内に、いつしか組織の本隊に迎えられて……気付いた時には実力順で3位にあたる地位に座らせられてたっけかァ」
「グハハハハ!……説明ぶん投げ過ぎだなぁ!」
「そう言われても、そうとしか言えねぇからなァ」
「グハハハハ!……私が言うのも何だが、狂ってるなぁ!」
……うん、何も分からねぇ!
寧ろ、そんな性格からよくそこまで矯正出来たな……
「ギヒャヒャヒャヒャ……それであの強さとか、本当に素質ってのは糞だなぁ……」
銀砂は、武音子先生が生まれた時から持っていたであろう素質に嫉妬していた。
「……いつ聞いても狂っておるのう……」
事情を知っているであろうラヴィ校長は、改めてドン引いていた。
「……生まれついての怪物か、ベイビ~」
「……本当にその通りですわね……」
冥堂さんや真梨亜先輩は、武音子先生を生まれついての怪物だと判断していた。
「ふむ……お嬢様から聞いていたとはいえ、いつ聞いても本当に狂ってる話でございますね~」
エレジーさんは静かにそう呟き、遠い目をしていた。
……ってか、エレジーさんが知ってるってつまり、そういう事だよな?
「グハハハハ!……ところで、実力順って事は律儀に戦ったのかぁ?」
「あァ……無限再生持ちは相手が戦闘を面倒だと思うまで殺し続けたし、意識集合体や陰陽師はオレと戦わずに降参しやがったァ……拳法マスターや脳筋野郎は激闘の末に下したし、天才発明家は自身の最高傑作とも言える脳筋野郎が倒されたのを見て降参したって感じだなァ……」
「グハハハハ!……情報のバーゲンセールだなぁ!」
「……これ、俺が聞いても良い話か?」
無限再生持ちだの意識集合体だの、何処かで聞いた事がある特徴だらけだ。
それに加えて陰陽師、拳法マスター、脳筋野郎、天才発明家……
……そんな奴等とは出会いたくはねぇが、それも叶わねぇ気がする……
「……とまあ、そんな感じで"No.3"の地位には就けたんだがァ……そっから上は無理だったァ」
「グハハハハ!……そこだよそこ!……そこを知りたかったんだよぉ!」
「……"No.2"は組織の創設者にして首魁にあたる"No.0"の秘書的な立ち位置の奴でなァ……その異能も強力な鎧武者を召喚して戦わせるっていうやべぇ奴だったっけなァ……」
「グハハハハ!……そういうタイプかぁ……」
「で、"No.1"は"No.0"の養女みてぇな奴で……異能は獣化系な上、単純に力が強かったっけかァ……」
「グハハハハ!……それは是非とも戦ってみてぇ奴等だなぁ!」
駄目だ……
これ全部、聞かなかった事にしてぇ……
「……ふん、どうだかなァ……少なくとも2人は組織の中じゃ穏健派だから、お前が戦う機会なんてねぇと思うがなァ……」
「グハハハハ!……そうかそうかぁ!」
「……つうか、マジで勝手に喧嘩売んなよォ?」
「グハハハハ!……分かってらぁ!」
……本当に分かってると良いが……
今はただでさえ過激派の道化仮面とドンパチ寸前になってるってのに……
もし穏健派とも揉めたりしたら洒落にならねぇぞ!?
「本当に分かってるかァ?」
「グハハハハ!……信用してくれやぁ!」
「……その会話の合間に挟む笑い声が鬱陶しく感じて来るなァ……」
「グハハハハ!……すまんすまん!……でもよぉ、そんなお前が何で今はここで働いてんだぁ?」
確かに。
それは俺も疑問には思ってたな……
「捕まったからだァ……」
「グハハハハ!……誰にだぁ?」
「……内閣情報統制室の室長をしてる、三毛猫ってコードネームの女にだァ」
……内閣情報統制室の三毛猫ねぇ……
そもそも内閣情報統制室が噂だけの都市伝説の類いだってのに、ここまで山程やべぇ情報を聞いてたからか驚かなくなってやがる。
「グハハハハ!……要するに、そいつはお前より強いって事だなぁ?」
「つっても、素早さ特化だがなァ。……一応実力自体は本物だが、不利な勝負は逃げる悪癖があるらしいからマトモな戦いは出来ねぇと思っとけよなァ?」
「グハハハハ!……それでも構わないぜ!」
……もう何か、俺がちっぽけな存在に思える程に在野の強者が多過ぎだろ……
現に隣の銀砂なんて……
「……ギヒャヒャヒャヒャ……ほんと、私は井の中の蛙だったんだなぁ……」
……ってな感じで、何度目かのメンタルブレイク起こしてやがるし……
「内閣情報統制室の三毛猫……この国じゃ長年に渡って総理大臣を支え、相応しくねぇと判断すりゃ容赦なく蹴落として来た政界の妖怪だァ……その最古の記録は100年以上前に英雄と称された奴等の内の1人、"道楽の猫又"って呼び名で書かれたのが初の記録だったっけかァ?」
「グハハハハ!……となると、長命系の異能かぁ?」
「だろうなァ……見た目から察するに異能は【猫又】ってところだろうよォ」
「グハハハハ!……【猫又】の三毛猫かぁ……」
三毛猫、猫又、道楽……
俺は、この特徴を全て揃えた人物を知っていた。
その人物は三毛猫みてぇなカラーリングで……
その人物は猫又みてぇな身体的特徴を備えていて……
その人物は道楽的な性格で……
そして、その人物の仕事を俺はよく知らねぇ……
と、その時だった。
「……そいつについて詳しく知りたきゃ、オレよりラヴィ校長の方が適任だァ。……何せ、あいつもかつて英雄と称された奴等の内の1人……"迷宮の巫女"と呼ばれた歴史の生き証人なんだからなァ……」
「っ!?」
「ちょっ!?……お主、このタイミングでバラすでないわ!」
……っ!?
ラヴィ校長が、100年以上前に英雄って呼ばれた奴等の内の1人!?
いやまあ、薄々常人じゃねぇのは分かってたが……そうか……
「ラヴィ校長、俺から貴女に聞きてぇ事がある……」
「な、何じゃ?」
「その三毛猫ってコードネームの女は……本名は何って言うんだ?」
「すまんのう……あ奴は時代によって戸籍上の本名を変えておるのじゃよ。……じゃから、真の本名は流石のワシも……」
「なら、今の本名は?」
今、ラヴィ校長は明らかに話をはぐらかした。
その事実が意味する事は……
「……ワシは嘘が苦手じゃから、遅かれ早かれバレてしまうじゃろうし……教えてやるのじゃ……」
「そこまで言っちまったら、真実を言ってるのと同じだろ……」
「ギヒャヒャヒャヒャ……え、何の話だぁ?」
「さあ、私も全く分かりませんわ」
「俺っちもだぜ、ベイビ~」
銀砂、真梨亜先輩、冥堂さんの3人は、何が何だか分からねぇって反応だ。
それはそうと、ラヴィ校長は口を開いて……
「あ奴の今の本名は禍津 魅怪……お主等、禍津3兄妹の実の母親じゃよ」
「「「っ!?」」」
「……やっぱり、そうか……」
……思った通り、お袋か……
「じゃが、ワシもあ奴について詳しい事は知らんのじゃ……100年以上前に別れた後は、度々業務的な面会をするだけじゃったし……」
「別に、そこまで知りてぇとは思ってねぇよ」
……とはいえ、複雑な気分なのは事実だ。
何の仕事をしてるのか知らなかったお袋が、実は総理直属のスパイみてぇな仕事をしてたんだから……
「グハハハハ!……おい、今の話は本当かぁ!?」
「……そことそこが親子だったかァ……」
「うげっ!?……あの2人まで食い付きやがった……」
金世と武音子先生まで話に食い付いて来たので、この場は完全にカオスに陥っちまった。
こりゃ、特訓の再開までしばらくかかりそうだな……
ご読了ありがとうございます。
次回は三毛猫にフォーカスを当てます。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。