48.明の子種と"獄落姉妹"
"獄落姉妹"、味方に出来れば結構な戦力になるレベルの強者です。
……マジで半グレに居て良い人材じゃありません。
(禍津 明視点)
「……どうしても嫌でございますか~?」
「どうしてもだ!」
エレジーさんがイカれた提案をして数分が経過しただろうか?
俺とエレジーさんは、案の定揉めていた。
「別に減る物でもないでございましょ~?」
「いや色んな意味で減るが!?……ってか、こんな犯罪者共に子種をやるのはどう考えても嫌に決まってるだろ!」
「も~、面倒でございますね~」
「何でだよ!……圧倒的に俺の方が正論だぞ!?」
エレジーさんを恋人にした事は後悔してねぇが、早くも意見の相違が出来ちまった。
この先、本当にやって行けるのか?
そう俺が思った時……
「グハハハハ!……えらい揉めてんなぁ!」
「……やけに他人事だな?」
突然、金世が話に割り込んで来たのだ。
しかも他人事の様に……
「グハハハハ!……そりゃ私達は明の子種を貰えたら嬉しいってだけで、別に貰えなくても困りはしねぇからなぁ!」
「……こう言ってるんだから、別に俺の子種をやらなくても良くねぇか?……最悪の場合、冥堂さんの子種でも……」
「死んでもやだぜ、ベイビ~!」
「だったら俺の味方になってくれよ!」
「俺っちは巻き込まれたくねぇんだぜ、ベイビ~!」
金世は俺の子種を貰えなかったところでノーダメージだし、冥堂さんは自分がこの話題に巻き込まれるのを避けたがってて期待出来ねぇ。
……もう嫌になる……
「グハハハハ!……明も大変だなぁ!」
「誰のせいだと思って……」
「グハハハハ!……ま、ぶっちゃけ対価は今のところ保留にしてやっても良いぞ!」
「おや?……良いのでございますか~?」
……いやいや、保留って事は後に要求されるって事じゃねぇか。
でもまあ、すぐに要求されるよりはマシか?
「グハハハハ!……よく考えてみりゃ、今すぐ子種貰って妊娠しても困るだけだからなぁ!……当分は子種を直接貰うのは遠慮させて貰うぜ」
「ん?……直接貰うのは、でございますか~?」
「グハハハハ!……何でもねぇよ」
「……何か嫌な予感がしたのは俺だけか?」
「奇遇でございますね~。……私もでございます~」
金世、ちゃっかり俺とS◯Xするつもりだったんじゃねぇよな?
ねぇって言ってく……いや、寧ろ明言させねぇ方が良さそうだな……
「グハハハハ!……で、私達はそこの女と戦れば良いのかぁ?」
「ぎ、ギヒャヒャヒャヒャ……あ、姉貴と一緒なら何とかなるかぁ?」
……えっと、俺は子種を渡すなんて認めてねぇ筈なんだが……
いつの間にか、俺に有無を言わせねぇ流れになってねぇか?
「おい、俺は……」
ーポン
「……明様、時には諦めも肝心でございますよ~」
……俺が"獄落姉妹"に対して文句を言おうとした瞬間、エレジーさんが俺の肩に手を置いてそう囁いた。
「……一応聞くが、子種渡すだけだよな?……直接搾り取るつもりじゃねぇよな?」
「さあ、私には分からないでございますね~……」
「……嘘だろ……」
結局、俺が"獄落姉妹"とS◯Xする事になるのかどうかはあやふやなまま話が進む結果になっちまった。
……いくら"獄落姉妹"の顔面が美人寄りとはいえ、2人はモロに犯罪者だ。
いくら何でも抵抗が凄ぇ。
と、そんな事を思っていると……
「明様……お忘れかもしれませんが、私もかつては殺る事やってる暗殺メイドでございますよ~?」
エレジーさんから痛い所を突かれてしまった。
だが、まだ挽回は可能な範囲だ。
「……あっ……で、でも昔の話だろ?……第一、こいつ等はまた何かやらかすかもしれねぇ訳で……」
「仮にそうだとしても、お二人とも今は何も出来ない訳でございますし~……そうなると私と何も変わらないでございますが~?」
「うっ……」
い、言い返せねぇ……
確かに、ここまで言われちまうと"獄落姉妹"が駄目でエレジーさんがOKな理由が思いつかねぇんだよな……
「ふふ、明様はこの手の話題で恋人に強く出れないのでございますね~」
「……そりゃ、別れたくねぇからな」
「可愛いでございますね~」
「……いつか分からせてやりてぇ……」
ちなみに、エレジーさんとの夜の情事で主導権は握れなかった。
腐っても数百年を生きて来た者って実感させられちまったよ。
……って、そんな事はどうでも良い。
「明様、もうお諦めになったでございますか~?」
「ハァ……諦めりゃ良いんだろ……」
「最初からそうすれば良かったのでございますよ~」
「……惚れた女には弱いんだよ!」
「惚れてない女にボコされた明様が言っても説得力はございませんよ~」
「ぐふっ!」
何だこれ?
改めて振り返ると、俺達はかなり無駄なやり取りをしてる気がするな……
最終的に俺が折れちまったからか?
「では、明様は放っておいて特訓スペースに進むでございますよ~」
「……ったく、今回のために牢屋スペースの奥に用意しておるのじゃ!……というか、牢屋スペース自体急いで作ったスペースで……」
「ラヴィ様の能力を使えば簡単でございますよね~?」
「簡単じゃがその分疲れるのじゃ!」
……ラヴィ校長、本当にご苦労様だな……
俺は内心でそう思いつつ、エレジーさんに話を有耶無耶にされた事を気にするのだった……
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(獄落 銀砂視点)
「ギヒャヒャヒャヒャ……まさか、手枷やらを付けずに解放するとはなぁ……」
「またボコられたいのであれば、好きにすると良いでございますよ~?」
「すぅ~……すみません、調子乗りましたぁ……」
「……そこまで私を怖がらなくても宜しいではございませんか……」
ギヒャヒャヒャヒャ……
こいつ等、マジで私達に何も付けずに解放しやがったぞ。
……ただし、このエレジーって奴を怒らせたらどうなるか私は身をもって思い知らされてるんで、何も出来ねぇんだが……
「グハハハハ!……何だぁ?……暴れりゃそいつと戦えるのかぁ?」
「姉貴、マジで辞めてくれよなぁ!?……こいつ、直接戦った私が思わずチビっちまったレベルの相手なんだぞ!?」
ただ相手をいたぶって楽しみてぇだけの私と違って、姉貴は結果的に自分が死ぬのだとしても強者と戦いたがる。
だからまあ、これまでは私がこんな感じで、姉貴がヤバい相手に突っ込んで行かねぇ様にしてたんだが……
ほんと、私がエレジーの強さを見誤らなければこんな事にならずに済んだってのに……
……いや、どっちにしろ最後に待ってたのは破滅か……
「グハハハハ!……余計に興味が湧いて……」
「頼むからマジで辞めてくれ!」
「……チェッ、つまんねぇなぁ……」
……何とか姉貴を大人しくさせたが、今や私達の命はこいつ等に握られてやがる。
それに私達だけ逃げ出せたって、妹分が残っちまったら意味がねぇ。
あいつ等が酷い目に遭うのだけは、何としてでも避けねぇと……
とか思ってると……
「……おい、銀砂……俺はお前等に子種なんて渡したくねぇんだぞ?」
「え?……って、明とかいう雑魚かぁ……」
「ざ、雑魚って……」
「ギヒャヒャヒャヒャ……事実だろ?……姉貴が提案に乗ってくれたから勝てただけで、本来の実力じゃ確実に負けてたって聞いたぜ?」
「そ、それはそうだが……」
エレジーと違って、この明って男は全然怖くねぇ。
異能自体はとんでもねぇらしいが、鍛練を怠ったのか肉体の方が異能の強さに追い付いてねぇんだとよ……
ギヒャヒャヒャヒャ……
強い異能持ちの男ってだけで、さぞ甘やかされて育ったんだろうなぁ……
「ギヒャヒャヒャヒャ……私は、お前みてぇな雑魚とは違う……」
「なっ!?……お前だって、エレジーさんにコテンパンにされた側だろ!?」
「ギヒャヒャヒャヒャ……だからだよ!……そのエレジーも、多分これまでの人生で修羅場を何度も越えた奴だって実感出来る強さだった!……なのに、お前からはそういった雰囲気が微塵も感じられねぇ!」
「ぐはっ!」
「エレジーみてぇに真の実力を隠してるって訳でもなさそうだし、マジで鍛練を怠った側の……異能の強さに胡座をかいた人間にしか見えねぇんだよ!」
「……俺自身自覚してるとはいえ、結構効くな……」
姉貴や私がこいつの子種を欲したのは、こいつの異能が強いらしいからだ。
……こいつ自身に、私視点での価値は皆無に等しい。
「ギヒャヒャヒャヒャ!……ったく、何で私がこんな事をしねぇと……」
「それを俺に聞くな……」
ハァ……
結局、私はそれ以上何も喋らずに特訓スペースへと連行されてった。
……この先、明への評価を少しだけ変える事になるとも知らず……
ご読了ありがとうございます。
明、本当に異能は強いんですが心身共に異能の強さに追い付いてない状態です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。