45.狂信者現る
新キャラ登場です!
(禍津 明視点)
エレジーさんを起こした後……
「ハァ~……休日くらい寝過ごしても宜しいではございませんか~……面倒臭いでございますし~」
「そ、それはそうだが……ちょっとエレジーさんに頼みがあるんだよ……」
「ほ~……何だか面白そうでございますね~」
……今回、わざわざエレジーさんを朝早くに起こしたのは理由がある。
それは……
「……今回の調査で、俺は終始足を引っ張る結果になっちまった……いや、冷静に考えたら同行してた事の方がおかしいんだが……少なくとも、俺自身が不甲斐なかったのに変わりはねぇ」
「まあ、そうでございますね~」
「だから……俺を鍛え上げてくれねぇか?」
秀光に敗北した事や、エレジーさん達に決定打を与えられなかった事に続いて今回の体たらく……
そろそろ、この弱さをどうにかするべく鍛える時だろう。
「へぇ~……なるほどなるほど~」
「ど、どうだ?」
「……面白そうでございますし、付き合ってあげるのでございます~」
「あ、ありがとうな!」
ここで面倒臭いと言われたら終わりだったが、何とかOKを貰えた。
「そうと決まれば、ラヴィ様に相談して来るのでございます~」
「お、おう……」
そうして俺は、ラヴィ校長に相談すると言ってヤリ部屋を出て行ったエレジーさんの後ろ姿を見送ったのだった……
そして1時間後……
「よく来たのじゃ!」
「歓迎するぜ、ベイビ~!」
「あァ?……このロック野郎は誰だァ?」
「ああ……私達が崇拝するラヴィ・リンスゥ様にも、遂に悪い虫が付いてしまったのですわね……」
……エレジーさんに案内され、とある部屋へとやって来た俺を待ち受けていたのは、何とも言えねぇ組み合わせの4人だった。
「ちょっと待て。……えっと……ラヴィ校長に、冥堂さんに、武音子先生に……後1人は誰だ?」
4人の内、3人は分かる。
ただ、残りの1人……教会のシスターみてぇな服装をした金髪の女性だけは、名前が分からなかった。
すると、その女性が口を開き……
「私の名は金霊院 真梨亜といいまして、この国立異能力専門高校の3年生ですの!」
「え?……こ、金霊院って……」
「ええ。……貴方の友人である、秀光の腹違いの姉ですわ!」
「ま、マジか……」
秀光、姉が居たのか……
……にしても、何でシスター服なんだ?
「あ~、こ奴はこう見えて保健委員会の委員長を務めておってのう……」
「違いますわよ。……今は保健委員会改め、リンスゥ教総本山の開祖を務めておりますの!」
「り、リンスゥ教?」
「……こ奴は何故か、ワシを神の様に崇拝しておるのじゃよ。……その結果、今や保健委員会はリンスゥ教なる新興宗教と化してのう……」
「……な、なるほど?」
どうなんだ、それって……
いや、考えるだけ無駄か……
「そもそも、こ奴は卒業後に勧誘を狙っておった三毛ね……政府の要職に就いておるワシの旧友から、こんな狂信者は要らないと文句を言われた程の狂人じゃからのう……結果的に、こ奴は卒業後もここで働いて貰う事で落ち着きはしたが……この先の未来についてはあまり考えたくはないのう……」
「つまり、生粋の狂人だと?」
「そういう事じゃな」
……政府の要職から勧誘を受けられる人物でありながら、狂信者だったがために話は立ち消えになったと……
本当に大丈夫か?
「まあまあ、私の話はこの辺にしておいた方が良いですわよ?」
「む?……どうしてじゃ?」
「……武音子先生が、質問を聞いて貰えなくて爆発寸前ですもの」
「イライライライライライラ……」
「あ、すまんかったのじゃ……」
……そういや俺達が来た時、武音子先生が何か質問してたっけか……
確か……
「おい!……結局このロック野郎は誰なんだよォ!」
……冥堂さんに関する事か……
「俺っちは金村 冥堂!……ラヴィ・リンスゥの個人的な知り合いって間柄だぜ、ベイビ~!」
「あァ?……オレはこんな奴知らねぇぞゴラァ!」
「ひっ!?……つ、伝えてなかったのじゃ……」
どうやら、冥堂さんの存在は武音子先生も知らなかったらしい。
……本当に個人的な知り合いなんだな……
「……ったく、この校長は本当に……というか、何でオレがここに?」
「お主はかつてワシが知る限りでは最強とも言える存在じゃった。……じゃが、ここの教師になってからその腕前は日に日に鈍って行ったじゃろ?」
「うっ……そ、それはそうだがァ……」
「……お主も、ここで鍛え直すべきじゃ。……いくら再生能力があったからと言っても、カミラエル配下のメイドに勝てぬ様ではのう……」
「うぐっ!……お、オレが気にしてる事を突いて来やがって……」
武音子先生も全盛期からは実力が落ちているらしく、それを今回どうにかするべきってのがラヴィ校長の考えか……
と、そんなタイミングで……
「……さて、各々が言いたかった事はこれで終わった感じでございますか~?」
……エレジーさんが、そう告げたのだ。
「ハァ!?……オレはまだ納得して……」
「誤解なきよう申し上げますと、今回の主題は明様の特訓でございます。……武音子様はラヴィ様が勝手に連れて来ただけで、私が招集した訳ではございませんので。……文句はそちらに♪」
「……チッ、仕方ねぇなァ……」
武音子先生は最後まで納得していなかったが、何だかんだ教師やれてるぐらいなので妥協はしてくれたみてぇだ。
「さてと……それでは、行きますわよ」
「……行くって、どこにだ?」
「おや、エレジーとやらから何も聞いていないんですの?」
「……ここに案内されただけなんでな」
エレジーさん、何も説明してくれなかったんだが?
「ふぁ~」
……なお、そのエレジーさんは俺の横であくびをしていた。
「ハァ……順を追って説明しますと、そもそも私は貴方の特訓とやらに呼び出された訳ではありませんわ」
「え?」
「私が任された仕事は……今朝、この国立異能力専門高校に特例措置として運び込まれた麻薬中毒者の半グレ集団の治療ですもの」
「……へ?」
待て待て待て!
特例措置として運び込まれた麻薬中毒者の半グレ集団だと!?
そいつ等って、まさか……
「……"獄落姉妹"と、その妹分の半グレ……その者達が今回の私の患者ですわ」
「う、嘘だと言ってくれよ……」
要するに、これから俺達が行く先にそいつ等が居るって事だろ?
嘘であって欲しかった……
……しかし、俺に出来る抵抗はもうない。
俺は何も出来ず、ただ無言で真梨亜先輩達の後ろを追って歩くのだった……
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(獄落 金世視点)
「う、うぐぐ……」
「耐えろ……いつもの事だろ……」
「ぐ、ぐふっ……」
グハハハハ!
どいつもこいつも情けねぇなぁ!
「グハハハハ!……麻薬の禁断症状なんかに屈する雑魚なんて、私の子分にゃ居ねぇよなぁ!」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
……ったく、どいつもこいつも麻薬の禁断症状に苦しんでやがる……
平気な私を見習えってもんだ。
「ぎ、ギヒャヒャヒャヒャ……脳内麻薬を自由に出して禁断症状を和らげられるのなんて、世界で姉貴ぐれぇなもんだぜ……」
「グハハハハ!……そういう銀砂は、あのエレジーとかいう女に負けてから何かに怯えるみてぇになっちまったなぁ……大丈夫かぁ?」
「ギヒャヒャヒャヒャ……姉貴にはこれが大丈夫に見えるのかぁ?」
「グハハハハ!……いや、見えねぇなぁ……」
グハハハハ!
……にしても、あのエレジーとかいう女は何を企んでやがるんだ?
私達を警察じゃなくて国立異能力専門高校で受け入れる方向に話を運んだ張本人らしいし……
……って、考えても意味ねぇかぁ……
「……ギヒャヒャヒャヒャ……姉貴、何か楽しそうだなぁ……」
「ん?……グハハハハ!……当たり前じゃねぇかぁ!」
グハハハハ!
何を企んでんのかは知らねぇが、私を飼い慣らせるなんて思わねぇこった!
私は笑みを浮かべながら、そんな事を考えてた。
……この先、どうなるかなんて知らないで……
ご読了ありがとうございます。
国立異能力専門高校には3つの生徒勢力があり、保健委員会改めリンスゥ教はその内の1つです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。