37.詩人vsロックンーラー
今回と次回の話を見る場合、HARUバースの他の作品も見ておくとより話が分かります。
(※別に見てなくても何となく分かります)
(時は再び遡り、金村 冥堂視点)
「ハァ……ハァ……やってらんねぇぜ、ベイビ~!」
俺っちは走っていた。
……何故かって?
んなもん、他の奴等と同じ場所で戦えねぇからだよ!
「待てぇぇぇ!」
「お前だけ逃げるとかマジかよ!」
「私達が相手になってやらぁ!」
……狙い通りとはいえ、あの半グレ女子共は全員俺っちを追って来てるな……
よし、それならこの辺で良いか……
「ふぅ、分かった分かった……止まってやるよ、ベイビ~」
「「「「「「「「「「「うわっ!?……急に止まるな!」」」」」」」」」」」
おいおい、止まったらこれって……理不尽だぜ……
そう思ってると……
「おやおや、他のお二人が居る4階から、まさか2階まで下りられるとは……何がしたいんでヤンスか?」
……あの吟遊詩人みてぇな道化が、半グレ女子共の背後からそう聞いて来やがった。
「い~や、俺っちは単純にあいつ等を巻き込みたくなかっただけだぜ、ベイビ~」
「ですが、こちらの姉妹も強いでヤンスよ?」
「……それでも、俺っちは乗り越えられるって信じてるぜ……ベイビ~」
……というか、あの姉妹は単純に俺っちとは相性が悪いんだよな~。
姉の方は完全に脳内が狂気で染まってやがるし、妹の方はああ見えて結構頭が回るタイプみてぇだ。
……俺っちの能力じゃ、分が悪い。
「ほう……では、あっしがこの身体の異能で潰してあげるでヤンスよ。……【幻想の詩】でヤンス!」
ーポロロン♪……シ~ン……
「……何も起こってねぇぜ、ベイビ~?」
"吟遊詩人"とか名乗ってた道化が何か言ってたが、結局何も起こりゃしなかった。
……そう、思ってたのが間違いだった。
「……嗚呼、その男は人生で最も危機的な状況に陥っていたでヤンス……」
ーポロロン♪
「あ?……何を言ってんだ、ベイビ~?」
突然、"吟遊詩人"が意味不明な詩?を歌い出しやがった。
「その男を取り囲むは、屈強な歴戦の戦乙女達……嗚呼、男は正に絶体絶命でヤンシた……」
ーポロロン♪
「おい、何を言って……んん!?……何で、半グレ女子共が恐ろしく見えやがる!?」
何故だ?
さっきまで脅威とも感じてなかった半グレ女子共が、急に恐ろしく見えて来やがった……
「男は戦乙女達を見て震え……活路を見出ださねばと焦ったのでヤンス……」
ーポロロン♪
「あっ……あぁぁぁぁぁ!?」
ーぶるぶるぶる……
あの吟遊詩人とかいう道化が言葉を紡ぐ度に俺っちの体は震え、同時に焦燥感を駆り立てられた……
あいつの詩にゃ、そういう効果があるって訳か。
「おいおい、こいつ弱ってるぞ!」
「早く倒しちまうぞ!」
「異議なしだな」
半グレ女子共は、俺っちに対して何らかの異能を使おうと構え始めやがった。
……だがなぁ、俺っちがこの程度で困ったちゃんになると思ったら大間違いだ。
「甘ぇ……砂糖より甘過ぎるぜ、ベイビ~!」
「へぇ……あっしの詩を力ずくで振り払うつもりでヤンスか?」
あぁ?
力ずくで振り払うだぁ?
……ま、ある意味ではそうとも言えるな。
「……【美しき拡声器】生成!……からのエレキギターに接続!」
ーガチッ!
俺っちは真っ白な設置型拡声器を生成し、持ってた黒いエレキギターとアンプで繋いだ。
と、その時……
「ふぅん……貴方の異能はその拡声器を生成するタイプの異能でヤンスか~」
……"吟遊詩人"の奴が、そんな勘違いをしやがった。
「……そりゃ大間違いだぜ、ベイビ~」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
俺っちはすぐに、その勘違いを正す。
「俺っちは少し特殊でな……この世界の常識とは、ちっと違うんだぜ……ベイビ~」
俺っちは元々、この世界の人間じゃねぇ。
だから、能力の規則性も全く異なる。
「何を言ってるでヤンスか!?」
「おっと……詩が止まってるぜ、ベイビ~?」
やっぱ、こいつ小物だな……
「そ、そんなの言われなくても……」
「だったら俺っちも行かせて貰うぜ、ベイビ~!……【魅せるぜ魂の音楽】!」
ーギュイィィィィィン!
俺っちは自身の能力、【魅せるぜ魂の音楽】を発動してエレキギターを掻き鳴らした。
「うぐっ!?……た、たった1度鳴らしただけで、あっしの異能の効果がかき消されたでヤンス!?」
よし、効果は抜群みてぇだな!
「金村 冥堂は俺っちの現世における仮初めの名でしかねぇ!……俺っちの真名は魔界よりやって来た恐怖を体現せし使者、"冥堂 ・ † ・ ダークネス"だぜ、ベイビ~!」
ーティリティリティリ……ギュイィィィィィン!
「う、うおぉ……」
「す、凄い……」
「正に、魂の音楽だ……」
……俺っちの音楽は、無事に半グレ女子共の心を掴んだらしい。
けどまぁ、"冥堂 ・ † ・ ダークネス"は俺っちも内心では後悔してたりする。
……これ、中2の時に考えたんだよな~……
当時は家族からも色々言われたっけ……
「……司チャンみたいに貫き続けるならともかく、冥堂の場合は絶対に成長した後に恥ずかしくなると思うっしょ……」
親父からは、そう忠告された。
「正義君の言う通りさ。……ボクだって、冥堂と同じ年齢の時は未熟故に変な方向に突き進んでいたものだよ……」
お袋からも、こう言われた。
「……この時ほど、ボクは冥堂が弟で恥ずかしいと思った事はありません……」
風斗の姉貴からは、俺っちが弟で恥ずかしいとまで言われちまった。
そんな中、当時の俺っちのセンスを肯定してくれる奴も居た。
「え~、私は良いと思うけどな~。……何かこう、格好良いでしょ!……って、正義君や司ちゃん、風斗ちゃんには分からないか~……」
この時、偶然にも俺っちの家を訪ねて来てた茜さんっていう親父とお袋共通の友人だけは、俺っちのセンスを肯定してくれた。
……今にして思えば、茜さんのセンスも大概中2っぽいので信用に値しないんだが……
なお、茜さんはこのしばらく後に彼女さん達に回収されてった。
親父とお袋の知り合いは変人ばっかだ。
……って、んな事はどうでも良い!
「世界が闇に呑まれても~俺は君を忘れねぇ♪!」
ーギュイィィィィィン!ギュインギュイン!
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「な、何故でヤンス……ぶっちゃけ歌詞は普通を通り越してちょっとダサいのに……どうしてこんなに魂が震わされるんでヤンスか!?」
俺っちの能力はあくまでも、俺っちの音楽に魅せられた者を自在に操るというもの……
魅せる行程は、自力でしなきゃならねぇ。
「俺は君に逢いたくて~……だけども君には逢えなくて~♪!」
ーギュイギュイギュイン!……ティリティリティリ!
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「あり得ないでヤンス……こんなダサい通り越して壊滅的な歌詞で、この人達の心を掴むなんて……」
か、歌詞についてボロクソ言いまくってくれるじゃねぇか……
まあ、この歌詞に関しては家族や茜さんからも……
「ダサいし支離滅裂っしょ!」
「ダサいし支離滅裂だね……」
「ダサいし支離滅裂ですよ……」
「これは私もダサいと思うし、支離滅裂って言われても仕方ないかな……」
……なんて言われたからな……
ぶっちゃけ、演奏技術と歌声でゴリ押ししてる部分はあるんだぜ……
「さぁ♪!……地獄の門を~ひ~ら~い~て~♪!」
ーギュイィィィィィン!
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「嗚呼、その男は……その男は……おと……こは……」
「彼女の手を~引~い~て~♪!」
ーギュイィィィィィン!
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「怒り狂う戦乙女達よ……怒り狂って……怒り……」
この場の空気は、完全に俺っちが支配した。
後に残るは"吟遊詩人"、1人だけだ!
「また会える日をの~ぞ~ん~で~♪!」
ーギュイィィィィィン!
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「どうして……あっしの……詩が……」
ここからが俺っちの正念場……
残った敵との決着……
さあ……どっちが勝つか勝負しようぜ、ベイビ~!
ご読了ありがとうございます。
冥堂の両親や姉、両親の友人は、作者の別作品に登場しています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。