36.銀砂との決着
エレジーの異能、正確には【雷拳】ではありません。
それはあくまでも、技の名前です。
ただ、異能名が分かるのはだいぶ先ですが。
(同時刻、カミラエル・レッドブラッド視点)
『……にしても、本当に調査役がエレジーで良かったんアルか?……言っちゃアレなのは分かってるアルけど、あんな怠け者を……』
私が1人で特訓をしていた最中、また"No.6"の奴から電話がかかって来たんで、気晴らしに話す事にしてたザマス。
……にしても、質問する事はそれで良いんザマスか?
ま、答えるザマスが。
「……大丈夫ザマスよ。……エレジーはアレでも、本気を出せば私のメイドの中で最強なんザマスから」
『え!?……あの怠け者がアルか!?』
ん?
言ってなかったザマスか?
「エレジーは他のメイドと違って、元々は私を始末するために派遣されて来た暗殺メイドだったザマスからね。……しかも、吸血鬼化も合わさって本気を出せばかなりの強さを誇るんザマス!」
『初耳アルよ!……って、それなのに学校襲撃時は撤退したんアルか?』
うっ……
耳が痛いザマスね……
「……そこが問題なんザマスよ。……なまじ吸血鬼化して無限再生能力を手に入れたせいで、元々の怠け癖に拍車がかかっちゃったんザマス……」
『あ~……再生するなら、わざわざ本気を出さなくても良いアルからね……』
「加えて、エレジー本人が乗り気じゃないと本気を出さないとかいう糞仕様……あの学校襲撃自体、メイド達はあんまり乗り気じゃなかったザマスし……」
『なるほどアルな~……』
だからまぁ、今回の調査で本気を出してくれるかさえも分からないんザマスが……
「……そもそも、"No.8"1人程度なら本気を出さなくても充分ザマスよ」
『だと良いんアルが……何か、嫌な予感がするんアルよ……』
「お前がそんなに不安になるなんて、かなり珍しいザマスね?……享楽主義のロクデナシだった筈ザマスよね?」
『私を何だと思ってるんアルか……』
でも、本当に大丈夫ザマスよね?
そう考えながら、私は特訓を続けたんだったザマス……
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(獄落 銀砂視点)
「ギヒャヒャヒャヒャ……こりゃヤバそうだぁ……」
名前は確か……エレジーっつったか?
こいつの心臓を銀製ナイフで刺して無力化したつもりだったんだが……数分もしねぇ内に目覚めてまるで別人みてぇになりやがった……
「■■■■■……■■■■■■……■■■■……」
エレジーの奴、何かよく分からねぇ言語をブツブツ呟きながらゆっくりと首を傾けやがった。
と、その直後……
ーぞわっ……
「っ!?」
ーシュン!
……背筋に悪寒を感じた私は、すぐに【瞬間移動】で距離を離した……
……筈だった。
「……■■■■■……【雷走】……」
ーバチバチバチ!……ビュン!
「っ!?」
今、何が起こった?
エレジーの周りに電気が発生したと思ったら、そのすぐ後に私の目前まで迫って来やがった……だと!?
「■■■■!」
「ひ……ひぃっ!?」
ーシュン!
私は目前に迫ったエレジーを見て、思わず奴の背後に【瞬間移動】した。
……私の【瞬間移動】は、視界の範囲内にしか飛べねぇから不便なんだよなぁ……
って、んな事を考えてる場合じゃねぇ!
「■■■■■?」
「ひぃっ!?」
背後に飛んだ筈だったのに、エレジーは私を凝視してやがった。
その目は赤く血走って、口は吸血鬼らしい牙を見せながら涎を垂らし、姿勢も人間のそれから犬みてぇな4足歩行に変わってやがった。
……微妙に違うかもしれねぇが、まるで姉貴みてぇな狂気に呑まれた獣って感じだった。
「■■■■■■■■■■■!……【雷息】……」
ーバチバチバチ……ドゴォォォォォン!
「ギヒャッ!?」
く、口から雷を吐き出しやがった……
って、何だそりゃ!
こいつの異能、マジで何なんだよ!
「■■■■■……【雷爪】……」
ーバチバチバチ……ブン!ブン!
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
何だこいつ……
さっきまでは人間っぽくて動きが丸分かりだったっていうのに、目覚めた瞬間に獣っぽくなりやがった!
「■■■■■……■■……■■■……」
「た……頼む……降参するから……だから……」
私はもう、心が折れちまってた。
どう探しても今のあいつから死角が見つからねぇし、近寄った瞬間にあの電気で人生ゲームオーバーだ。
さっきまでは回避が楽だったが、今はそうも言ってられねぇ!
元々、私は姉貴程トチ狂えてねぇんだよ!
「■■■■■……■■■■……」
「……ははは……降参を受け入れてくれてんのかすら分からねぇ……」
今すぐにでも、こいつから逃げ出してぇ……
どっかに【瞬間移動】で飛んで、自由気ままに生活してぇ。
だってのに、逃げられねぇ……
「■■■■■……■■■?」
「ああ……逃げねぇ理由を聞いてんのか?……んなの、決まってんだろ……」
「■■■■?」
逃げるだけなら……ぶっちゃけ可能だ……
ひたすら【瞬間移動】を繰り返して、こいつから距離を離し続けりゃ良い……
……言ってて本当に可能なのか疑わしくなって来るが、それを実行しねぇ理由は単純だ。
「……ここで私が逃げたら……姉貴や……妹分共に被害が及ぶに決まってるからな……」
私は確かに敵対者を徹底的にいたぶって楽しむが、身内がやられて平気な程冷酷じゃねぇ……
「■■■■■■?」
「……私は……目覚めさせちゃいけねぇ獣を目覚めさせたのかぁ?……姉貴と同じ類いの狂気を……」
いや……姉貴ですら言葉は通じる……
こいつは……言ってる事すら分からねぇ……
「■■■■■……」
「ギヒャヒャヒャヒャ……頼む……殺さねぇでとは言わねぇ……だがよぉ……私で……最後にしてくれ……」
「■■■■■■■……」
ギヒャヒャヒャヒャ……
あの胡散臭ぇ道化と関わっちまったばっかりに、こんな化物を相手する事になるなんて……
私も姉貴と同レベルで狂えてりゃ、こんなに苦しまずに済んだんかなぁ……
とか何とか考えてたら、いつの間にかエレジーの奴が目前まで迫ってやがった。
「あっ……あああああ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ーポタポタポタ……
ああやべぇ……
恐怖のあまり、漏れちまった……
ああ……今までいたぶった相手も……こんな気持ちだったんかな……
……後悔はしてねぇ……どうせ今までいたぶった奴等も裏に潜むロクデナシ共だ……
でも……まだ死にたくねぇなぁ……
しかしまぁ、そんな都合が良い話がある訳もなく……
「……【雷拳・不致死】……」
ーバチバチバチ……バチィィィィィン!
「うぎゃっ!?」
エレジーの攻撃を受けた……私の……意識は……次第に闇に……呑まれ……て……
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(エレジー視点)
「■■■■■?……■■■……では、そろそろ正気に戻るとするでございますか……」
いやはや、久しぶりに狂気モードこと本気モードを使ったでございますが、使ったら軒並み相手が失禁するレベルで恐怖してしまうんで使いたくないんでございますよね……
「……多分、銀砂も私がトラウマになるでございましょうし……というか、本当にこの姉妹は半グレに居て良い奴等じゃないでございますよ……」
もっとマトモな人生さえ歩めれば、違った生き方もあったのでは……
……う~ん、これ程の人材をみすみす逃すのも惜しいでございますし、ちょっとラヴィ様にかけあってみるでございますか……
あの人?、政府とコネありそうでございますし……
「……もしこちらで管理出来れば、私が徹底的にシバき上げて……いつかは、私の仕事を押し付ける事だって可能に……ふふふ♪」
ふむ、やはりこの姉妹と部下の半グレの皆さんは欲しいでございますね……
私はそう考えながら、明様や冥堂様がどうなったかを確認しに向かうのでございました……
ご読了ありがとうございます。
本気エレジー、言葉はちゃんと通じるんですが母国語に戻っているため、相手には全く伝わりません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。