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35.過去の決着と狂気の目覚め

……もう、ヤケクソです。

(エレジー視点)


「ハァ……あれだけ大口を叩いてその程度とは……このレドメス、貴女をそんな脆弱に育てた覚えはありませんよ?」


ーシュン!……ブスッ!


「うぐっ!」


……あれ?


私は確か、銀砂に心臓を貫かれて……


だというのに、何故私はかつてのレドメス様との戦いを……


……ああ、これが俗に言う走馬灯とやらなのでございますね?


もっとも、お嬢様が生きている限りは私も死なないのでございますが……


「さてと……私としては、自身の最高傑作である貴女を殺す気にはなれません。……なので、長い時間をかけて洗脳する事にします」


「せ、洗脳でございますか?」


……レドメス様、強かったでございますね~。


対象移動(アスポート)】でナイフを飛ばして来て、私の筋肉をズタズタにしたのでございますから……


お陰でこの時の私、地に伏せる事しか出来なかったでございますし……


「ええ。……以前から怠け癖はありましたが、それはまだ許容範囲でした。……ですが、今回の心変わりは流石に許容範囲外です」


「ハァ……ハァ……洗脳なんて……嫌で……ございま……」


「口答えを許した覚えはありません!」


ーシュッ!……シュン!……ブスッ!


「い゛っ!?」


……私の口答えに気を悪くしたレドメス様はナイフを何もない場所へと投げた上で転送し、投げた勢いのままナイフを私のふくらはぎへと刺したのでございました。


「腐っても最高傑作……ここまでしても、まだ動けるのですから」


「うぐぐ……」


私は下手にナイフを抜かず、必死に立ち上がったのでございます。


全身に出来たナイフの切り傷や刺し傷……


これでは仮に勝利出来たとしても、しばらくは全力を出せないと当時思ったものでございます。


「ハァ……本当に、あの忌み子を殺したくないようですね……」


「当然でございます!……お嬢様は、私にとってかけがえのない……」


「愚かな……私達暗殺メイドは国王陛下に仕える存在だというのに……あろうことか、国王陛下を苦しめている元凶の方が大事などと……」


「あ~もう!……ですからお嬢様は何も関係ないんでございますよ!」


本っ当にレドメス様は1度こうだと思ったら思い込み続けるタイプでございましたね……


多分、本質としては悪い人じゃなかったんでございましょうが……


だからこそ、惜しかったでございます。


とはいえ、この時点で私が勝てる要素は皆無でございました。


と、そんなタイミングで……


ーポツ……ポツポツポツ……サァァァォァ……


「おや?……雨が降り出しましたね……」


突然、外の天気が雨になったのでございます。


しかも……


ーゴロゴロゴロ……


「ハァ……ハァ……雷で……ございますか……」


「ええ……貴女の能力とは違い、離れた相手をも殺す天災ですよ」


雨に続き、雷も落ちそうな天気になったのでございます。


勿論、それがこの勝負に直接何かをもたらした訳ではございません。


ただ、この時の私は思ったのでございます。


……【雷拳(サンダーパンチ)】は所詮、相手に当てる事が出来ないと何も出来ない技だと……


空から落ちる雷と違い、離れた相手には無効な技なのだと……


「……天災、でございますか……私が絶対に至れない境地でございますね……」


「天災の領域になど、誰も至れませんよ。……さあ、そろそろ諦めて欲しいですね」


ーシュッ!……シュン!……ブスッ!


「うぐっ!」


今度は右腕に投げナイフを転送され、私は歯を食い縛ったのでございます。


……当然、ここまで一方的だと勝負とは言えないのでございます。


私は実際、ほぼ負けを確信していたのでございます。


……本気(・・)を出そうにも、既に体はボロボロでございましたから……


しかし、ここで奇跡……いえ、国にとっての大きな不運が起こったのでございます。


「……ふぅ、それでは死なない程度に痛めつけて……」


ーゴ~ン!……ゴゴゴゴゴ~ン!……ゴ~ン!ゴ~ン!


「……この……鐘の……音は……」


突如として、王城内に鐘の音が鳴り響いたのでございます。


そして、この鐘の音はとある事を示す鳴らし方でございました。


その、とある事とは……


「今の鐘の音……何故……それは、国王陛下が(・・・・・)崩御(・・)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の筈……」


……国王陛下の崩御でございました。


「ハァ……ハァ……」


国王陛下の崩御を示す鐘の音が鳴り響く中、私は虫の息になりながらもレドメス様を注視していたのでございます。


何故なら……


「あ……あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


……国王陛下を喪ったレドメス様は先程までの冷静さを失い、発狂したのでございますから。


「レドメス様……」


「間に合わなかった……あの忌み子を殺す術を見つけられなかった……ああ……国王陛下……大変申し訳ございません……このレドメス……せめて……あの忌み子に一矢報いて……」


レドメス様は哀れにも、その場に膝まづいてそう嘆いていたのでございます。


……が、戦闘中にそんな事をすればどうなるか……分からないレドメス様ではなかった筈でございます。


「……レドメス様……」


「あっ……お前の……お前のせいです!……お前がさっさとあの忌み子を殺す術を見つけていれば……」


「煩いでございます……」


ーガシッ!


「ぐふっ!?」


私はひたすら文句を言い続けるレドメス様の口を左手で掴んで塞ぐと、すぐさま右手を振り上げて……


「……レドメス様の異能は、冷静さを失うと使えないと聞いておりましたが……まさか本当でございましたか……」


対象移動(アスポート)】はその強力さ故に、冷静でないと使えないという制約があると聞いた事がございましたが……まさか本当だったのかと驚いた記憶がございます。


「う~!」


「……そう怒らずとも、すぐに国王陛下と同じ場所に送ってあげるのでございます。……【雷拳(サンダーパンチ)致命(ファタール)】でございます……」


ーバチバチバチ……ドンガラガッシャァァァァァン!


私が致命傷レベルの【雷拳(サンダーパンチ)】をレドメス様に打ったのと同時に、外では雷が王城の中庭に落ちたのでございました。


「…………………………」


「……完全に、物言わぬ焼死体でございますね……」


……レドメス様の命をこの手で奪い取った私は、そう呟きながら物言わぬ焼死体となったレドメス様を見下ろしていたのでございます。


「……最初から私を殺しにかかっていればこんな事には……しかも、情ではなく自身の最高傑作を壊すのが嫌だという理由なのが救えないでございますね……」


レドメス様の敗因は、私を殺さずに制圧しようとした事でございました。


その結果、国王陛下が病死するまで時間を無駄に費やす事になってしまったのでございますから……


「さて……都合が良い事に、先程中庭に雷が落ちたので……その落下地点にでも捨て置くとするのでございます……」


結局、レドメス様の焼死体は私が王城の中庭まで誰にも見つからない様に運び、さも雷に当たったかの様に偽装したのでございます。


……その後、レドメス様の死因は私が偽装した通りに受け取られ、お嬢様の暗殺計画は立ち消えとなったのでございました。


もっとも、その数日後にあのアホ新国王が塔を襲撃し、私はレドメス様に付けられた傷が原因でお嬢様を沢山の槍から庇う事しか出来ずに死んだのでございますが……どうも走馬灯はこの辺で終わりらしいでございますね……


では……さっさと銀砂を潰すとするでございますか……


……………………


……………


……



「ギヒャヒャヒャヒャ!……で、これはいつまで刺しときゃ無力化出来るんだかなぁ……」


……おっと、結構意識を手放していたつもりでございますが……未だに心臓を刺し続けていたとは……


ーパチリ


「あぁ?……ギヒャヒャヒャヒャ……まさか、もう目覚めて……」


■■■■(面倒臭ぇ)……」


「ん?」


おっと、母国語が出てしまったのでございま……


……このエセ敬語も面倒臭ぇ……


■■■■■(私に本気を)■■■■(出させる)■■(とか)……」


……レドメス様との戦いですら……出せなかった本気……


なまじ体が無事だからこそ……今回は出せる……


「ギヒャヒャヒャヒャ……おいおい、何だそりゃ……」


■■■■■(殺しはしね)()……■■(でも)……()()()()……」


……今まで抑圧して来た本気……


レドメス様によって作られ……吸血鬼化によって狙って出せる様になった……本物の狂気……


「ギヒャヒャヒャヒャ……本当に、さっきまでと同一人物かよ……」


■■■■(ブッ潰す)!」


体が無事で、ここまでされりゃ……やるしかないでしょうが……


そうして私は、これまでの人生で片手の指程しか出していなかった狂気を……こんな小悪党相手に出したのだった……

ご読了ありがとうございます。


エレジーがこの狂気を狙って出せる様になったのは吸血鬼になった後なので、回想時点では使えません。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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