34.金世との決着
……何だかもう、主人公の強さが分かりづらいですが、一応異能自体は当たりの部類です。
ただ、当たる相手が軒並み主人公より強いか再生持ちってだけで……
(禍津 明視点)
ードゴォォォォォォォン!
「くっ……」
「グハハハハ!」
狙い通り、金世は俺に突進をかまして窓が有った壁をぶち破った。
……つまり、俺と金世はビル4階分の空中に放り出された訳だ。
さて、ここからは時間との勝負だ。
「お前が下になれ!」
「グハハハハ!……嫌だなぁ!」
俺と金世は空中で揉みくちゃになるが、当然4階分しかねぇとなれば争おうにも時間が少な過ぎる。
「……よし!」
「グハハハハ!」
ーガシャァァァァァン!
……結局、何とか俺が上になって地面へと激突した。
しかも運が良いのか悪いのか、落下地点には大量の資源ゴミらしき廃品が積み重なっていたのだ。
当然、常人なら衝撃に加え体に身体に廃品が刺さりまくって死んでるだろうが……
「ハァ……ハァ……死なれちゃ困るぞ?」
「グハハハハ……生きてるぜ……ま、廃品が刺さっててやべぇがなぁ……」
「……刺さってるっつっても軽くじゃねぇか。……やっぱお前、マトモに戦って勝てるタイプの相手じゃねぇだろ……」
ビル4階分の高さから落ち、廃品が身体に刺さりまくっても尚、金世は生きていた。
もっとも、これ以上戦うのは厳しそうだったが。
「グハハハハ……そうだなぁ……これで終わりかぁ……」
「……生憎、俺ももう戦えそうにねぇがな。……いくら上に居ようが、ビル4階分の高さから落ちたら無事じゃ済まねぇよ……」
何とか上を死守出来た俺ですら、かなりの衝撃が加わってダウンしちまってた。
こりゃ、他の戦いへ助太刀に行くのは無理そうだ……
「グハハハハ……なら、これは私の勝ちかぁ?」
「……もしかして、まだ戦れるのか?」
「グハハハハ……まさかぁ……私だって、ここまでされちゃあ10分は動けねぇよ……」
「こ、これだけやって10分かよ……」
ビル4階からの落下と廃品の山ってコンボで、たった10分のダウンか……
……化物かよ!
「ま、勝ち負けに関しちゃ冗談だぁ……私がたった10分でも機能しなくなったら、他の奴等がやられちまう……グハハハハ……お前以外の2人は、そのレベルの実力者だぁ……」
「……取り敢えず、俺は警察でも呼んどくか……」
金世は何とかダウンさせた。
……総合的には俺の負け感が強いが、それでも結果が全てだ。
「グハハハハ……お前、本当に惜しいなぁ……お前がもっと戦いに貪欲なら、その異能だってもっと凶悪なものになっていただろうに……」
……戦いに貪欲なら、か……
その通りかもな。
でも……
「……俺は争いなんざ望んでねぇ。……ただ、この世界でモテモテのハーレム生活を過ごしてぇだけだ」
「グハハハハ……それはそれで変わってるなぁ……」
「煩い!……さて、警察に電話するか……」
そうして俺は110番に電話し、警察にこの場所を通報した。
「……グハハハハ……私達も終わりだなぁ……」
「そういや、お前等って何したんだ?……取り敢えずは呼び出されて襲われたって警察に言ったが……」
「傷害、強盗、麻薬に強姦……殺人だってやったなぁ……グハハハハ……特に麻薬は証拠も残ってるから言い逃れは無理だなぁ……」
「本当にやる事やってんだな……」
こいつは、どうしようもねぇ獣だ。
……なのに、何故か嫌いになれねぇ。
「……どうしたんだぁ?……グハハハハ……」
「いや、何というか……あんた、そんだけやらかしてる割には警察が動いてねぇと思ってな。……警察だって馬鹿じゃねぇし、そんだけやらかしてるんなら普通はもっと早く捕まる筈だろ?」
「あぁ?……グハハハハ……そりゃそうだろ?……麻薬以外でやった相手は対抗勢力の半グレや暴力団関係者みてぇな後ろ暗いタイプの人間なんだからなぁ……そもそも表の奴と揉めたって、良い事なんてねぇし……」
……考えりゃ当然の話だ。
金世は戦闘を好むが、表の人間と殺り合って警察のお世話になっちゃ台無しだ。
特に金儲けが目的でないなら、裏の人間相手に留めているのも納得が行く。
「……って、俺達は襲ったよな!?」
「それはそっちが嗅ぎ回ってたからだろ?……これまで、私達をわざわざ嗅ぎ回る奴等は居なかったからなぁ……居ても、噂話を聞いた辺りで表の人間は退いてったもんだ……」
「……ひ、否定出来ねぇ……」
確かに、あそこまで嗅ぎ回られたらこうなるのも分かるっちゃ分かるが……
「……それに、どの道もうすぐどデカい事件を起こすつもりだったしなぁ……グハハハハ……道半ばで折れちまった……」
「どデカい事件?」
「グハハハハ……あの道化が私達に協力を仰いでた計画でなぁ?……大都市の暴力団や半グレ、闇金債務者や薬物中毒者なんかを募って暴動を起こそうとしてたらしい……」
「待て!……それってどういう……」
……カミラエルの時とは規模が違う。
そんなの、起こされた日にゃ……
「グハハハハ……さぁて、他の奴等はどうなかったかなぁ……」
「んな事より、その計画とやらを……」
「生憎、それ以上は私も知らん。……私があいつを近くに置いてた理由は、麻薬を買うのと強い奴を誘き出すためだったんでなぁ……」
「クソがっ!」
肝心な情報が何も分からねぇ……
とはいえ、他が気になるのは俺も同じだ。
「グハハハハ……」
「……何を笑ってるんだか……」
戦闘狂故に、負けても笑い続ける……
ハァ……今回勝てたのは、こいつがわざと誘いに乗ってくれたからでしかねぇし……
もう少し特訓を積むか……
俺はそう考えながら、金世が復帰しねぇかの監視を続行するのだった……
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(時は少し遡り、エレジー視点)
「……明様、大丈夫でございましょうか?」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……私を無視してあの男の心配とは、よほど余裕だなぁ!」
ーシュン!……ブスッ!……シュン!
「チッ……こそこそ死角に移動して銀製ナイフで刺して来る……これは攻撃が面倒でございますね……」
銀砂は私の死角に【瞬間移動】して、すぐに銀製ナイフで私を刺し、その直後には再び【瞬間移動】で距離を離している……
流石は相手をいたぶる事に全力を注ぐサディストでございますね……
「ギヒャヒャヒャヒャ!……それじゃ、どんどん行くからなぁ!」
ーシュン!……ブスッ!……シュン!……ブスッ!
「あ~もう!……左を警戒すれば右から、右を警戒すれば後ろから……私の動きを完全に把握しているのでございますか!?」
ハァ……
まさか、こんな所で日頃怠けまくった代償を払わされるとは思わなかったでございます……
もし全盛期程の力があれば、こんな小悪党すぐにでも打ち倒せるというのに……
「ギヒャヒャヒャヒャ!……焦れ!泣き喚け!絶望しろやぁ!」
「いいえ、この程度で絶望などしないでございますよ……」
これに比べれば、あのアホ皇太子……いえ、新国王がやらかした襲撃の方がよっぽど絶望的でございましたから。
……ですが、この応答はどうも駄目だったらしいのでございます。
「ギヒャヒャヒャヒャ!……あ~、辞めだ辞め!……本気で潰す!」
ーシュン!……ブスッ!
「っ!?」
急に本気を出すと言った銀砂が繰り出して来たのは、先程までと変わらない【瞬間移動】からの銀製ナイフによる刺突でございました。
……刺された位置が心臓、というのを除けばでございますが……
「ギヒャヒャヒャヒャ!……お前は私がいくら刺しても焦らねぇし、泣き喚かねぇし、絶望もしねぇ……そんな相手を無駄にいたぶっても、全然楽しくねぇんだよなぁ……」
「か……はっ……」
銀製ナイフで……心臓を?
……吸血鬼は……心臓を……杭で打たれると……死ぬと言われているので……ございます……
だからこそ……銀製ナイフで……刺したので……ございましょう……
「ギヒャヒャヒャヒャ!……それと最後に言っといてやる。……あの男ならしばらくは無事だ。……姉貴はアレで、戦闘のために相手のレベルに合わせるって配慮が出来るからなぁ……」
「ゴフッ!……良い報告、ありがとうございます……」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……ま、私はそんな配慮しねぇけどなぁ!」
「そうでございましょうね……」
ああ……意識が薄れていくのでございます……
多分……しばらくは気を失うので……ございましょう……
そうして私の意識は……闇に……呑まれて……
ご読了ありがとうございます。
一応、エレジーはまだ面倒臭いモードです。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。