32."獄落姉妹"との戦闘開始
話がとっ散らかろうと、私が書きたくて書いてるので続行します。
(禍津 明視点)
「グハハハハ!……お前等が私達を嗅ぎ回っていたっていう怖いもの知らず共か!」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……報告通り、片方は若い男だなぁ!」
……俺達が半グレ共に連行されて辿り着いた廃ビルの一室に、そいつ等は居た。
1人は、ゴリマッチョで天然パーマの金髪ツーブロックヘアーが特徴的な女性。
もう1人は、細マッチョで同じく天然パーマの銀髪ポニーテールヘアーが特徴的な女性。
……聞き込みで得られた情報と照らし合わせて考えれば、この2人が"獄落姉妹"で間違いねぇだろう。
そして、極めつけと言わんばかりにもう1人……
「……やっぱり、もうバレちゃってたでヤンスか~」
吟遊詩人の様な服装をし、顔に道化の仮面を被った女性もまた、同席していた。
「そ~ゆう事でございます。……面倒なのは嫌いでございますから、大人しくお縄についてくれるとありがた……」
「そう言われて承諾する奴なんて居ないでヤンスよ」
「……ま、そうなるでございますよね……」
エレジーさんの反応からしても、この道化が目的の人物……"異能の夜明け"の"No.8"で間違いねぇんだろう。
正確に言えば、その内の1人って感じらしいが……
「グハハハハ!……そんな御託は良いから、さっさと戦ろうぜ!」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……本当に姉貴はどうしようもねぇ戦闘狂だなぁ!……私としちゃ、ただ相手を痛めつけるだけで良いんだがなぁ?」
「グハハハハ!……そっちこそ理解出来ねぇなぁ。……戦闘ってのは、お互いが楽しんでこそだろ!」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……ま、軽口はこの程度にしとくかぁ……」
……どうも、姉の方は純粋な戦闘狂、妹の方はサディストって性格みてぇだ。
とはいえ、これはマズい。
ーガチャガチャガチャ……
「姐さん達の援護だ!」
「気合い入れろ!」
……"獄落姉妹"が戦る気になった途端、周りの半グレ共も戦闘態勢に入ったのだ。
「……エレジーさん、何か周りの半グレもピリピリし出したぞ?」
「ふむ……姉はともかく、妹の方は正々堂々勝負してくれそうなタイプではございませんね……面倒でございますが、こちらも助っ人を呼ばせて貰っても宜しいでございますか?」
「グハハハハ!……好きにしろ!」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……この数をどうにか出来るんならって話だがなぁ!」
エレジーさんの助っ人要請に関する要求を、"獄落姉妹"は当然の如く受け入れた。
「では……監視役様、そろそろ私共を手伝って貰えないでございますか~?」
"獄落姉妹"から承諾を得たエレジーさんは、そう何もない場所に向かって告げた。
すると……
「ハァ……気付いてやがったか、ベイビ~」
先程まで誰も居なかった場所に、突如として不審な男が現れたのだ。
そいつは何というか……こう、ヘビメタのロックとか好んでそうな見た目をしてた。
「お、お前は……」
「俺っちは金村 冥堂!……ラヴィ・リンスゥの個人的な知り合いって間柄だせ、ベイビ~」
「……そ、そうか……」
ラヴィ校長の個人的な知り合い、か……
……かなり癖の強い奴だな……
「さて、これで私共の戦力は全てでございます。……にしても、よくもまあ律儀にお待ちになられて……」
「グハハハハ!……戦闘ってのはお互いが準備万端の状態で始める方が楽しいからなぁ!」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……準備万端の相手をぶっ潰す方が楽しいんだよ!」
……俺達の準備が終わるまで律儀に待ってくれていた"獄落姉妹"だったが、その理由が何とも言えねぇものだった。
「ハァ……じゃ、あっしは半グレの皆さんの補助をするでヤンスよ?」
「グハハハハ!……好きにしろ!」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……さて、それじゃあ始めるとするかぁ!」
道化と"獄落姉妹"はそう言いながら、各々の武器を手に取る。
ーポロロン♪
「あっしは【寄生曲馬団】が四大副座長の1人、歌姫の懐刀……吟遊詩人でヤンス!」
吟遊詩人の道化は、楽器のリラを鳴らしてそう告げた。
「私は"獄落姉妹"の長女、獄落 金世だぁ!」
"獄落姉妹"のゴリマッチョな姉こと金世は、両手に防刃グローブを嵌めながらそう告げた。
「私は"獄落姉妹"の次女、獄落 銀砂だぁ!」
"獄落姉妹"の細マッチョな妹こと銀砂は、両手にサバイバルナイフを持ってそう告げた。
それに対し、俺達は……
「なら、俺達も名乗りを上げるか……俺は禍津3兄妹の長男、禍津 明だ!」
「私はお嬢様に仕えるメイドにして、"吸血三連星"の末席を務める者……エレジーでございます」
「俺っちは……流れのロックンローラー、金村 冥堂だぜ、ベイビ~」
そう、名乗り返した。
……その次の瞬間だった……
「ギヒャヒャヒャヒャ!……なるほどなぁ……なら遠慮なく殺らせて貰うぜ!……【瞬間移動】!」
ーシュン!
「なっ!?」
銀砂が突然、俺の目の前に現れてナイフを振り上げていたのだ。
「危ないでございます!」
ードンッ!
「うわっ!?」
間一髪、俺右隣横に居たエレジーさんに押され、ナイフが当たらずに済んだ。
のだが……
ーブスッ!
「いだっ!?……これ、銀製のナイフでございますね?」
……銀砂のナイフが、エレジーさんの左腕に突き刺さっていたのだ。
しかも、エレジーさん曰くナイフは吸血鬼の弱点である銀製の物だという……
「エレジーさん!」
俺は咄嗟に、エレジーさんの援護に回ろうとする。
しかし……
「グハハハハ!……私も居るのによそ見とは余裕そうだなぁ!……【念力パ~ンチ】!」
ードシィィィィィン!
「ぐはっ!」
金世が放った"何か"の衝撃で、俺は背後の壁まで吹き飛ばされた。
「グハハハハ!……この程度の攻撃でくたばって貰っては困るぞ!」
「ハァ……ハァ……と、咄嗟に受け身はとったが……こりゃ厳しいか……」
寧ろ、まだ動けるのがおかしいレベルで体に激痛が走ってやがる……
「明様!?……なるほど……姉の異能は【念力】で、妹の異能は【瞬間移動】でございますか……しかも、【念力】は威力が段違い……」
「グハハハハ!……鍛えてるからなぁ!」
「加えて、この銀製ナイフ……私共と戦う事すら想定していたのでございますか?」
「ギヒャヒャヒャヒャ!……吸血鬼が国立異能力専門高校の警備に加わるってニュースで見たんでなぁ!」
確かに、この町は俺達の学校からほど近い。
万が一に備えて、銀製ナイフを準備していても不思議じゃねぇだろう。
「ゴフッ!……【念力】は本人の素養によって大きく出力が変わる異能だが……お前のそれは想像以上だな……」
「グハハハハ!……そうだろそうだろ?……しかも、今は麻薬のドーピングで通常以上の出力を発揮してるぜ!」
「マジか……だからって、負けてもられねぇがな……【禍神招来】!……【闇爪】!」
「グハハハハ!……良いぞ!……そうでなきゃなぁ!」
そう叫ぶ金世は目がイっており、口からは涎も垂れていた。
実際、ドーピング用の麻薬の効果もあるんだろうが……それ以上に、戦闘狂としての本能が働いてもいるんだろう。
「ギヒャヒャヒャヒャ!……姉貴はいつも通り平常運転だなぁ……っと、それじゃあこっちも攻めるとするかぁ!」
ーシュン!……ザシュ!……シュン!……ザシュ!
「ぐっ……やはり、吸血鬼に銀は厳しいでございますね……」
俺が金世と向かい合っている間にも、エレジーさんは銀砂の【瞬間移動】や合間に挟まるナイフによる斬撃で傷付けられていた。
……何故、エレジーさんは抵抗してねぇのか不思議だが、今の俺にそれを気にする余裕はねぇ。
「……そういや冥堂や半グレ、それにあの道化は場所を変えたらしいな。……いつの間にか居なくなってやがる……」
……いつの間にか居なくなっていた冥堂や半グレ、そして道化……
いくら気にしてる余裕がねぇとはいえ、こいつ等の事も気になるんだよな……
ただ、今は目の前の相手に集中するべきだろう。
「グハハハハ!……さぁ、何処からでもかかって来い!」
「言われなくてもそのつもりだ!」
各々が各々の勝負に身を投じた、この戦い……
果たして誰が最後に笑うのか……
それは、神のみぞ知るといったところか……
俺はそんな事を考えながら、金世へ攻撃を加えるために走り出したのだった……
ご読了ありがとうございます。
なお、明側3人の戦力順はエレジー(本気モード)>>>>冥堂>>>エレジー(面倒臭いモード)>明……となっています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。