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31.嘘と決意

話がとっ散らかってきました……

(エレジー視点)


「エレジー……本日の正午、国王陛下が危篤状態に陥られました……」


「ハァ……面倒な事になりそうでございますね~」


……半グレに連行されていた私は、またもや過去を思い出していたのでございます。


そして、この記憶は……塔に派遣されてから数年が経過した頃のものだったでございましょうか……


確か……国王が危篤状態に陥ったとかで、レドメス様に呼びつけられた時の……


「何を他人事の様に話しているのですか!……一刻も早く、あの忌み子が国王陛下を呪ったという確固たる証拠か、あの忌み子を確実に暗殺出来る方法を見つけて来るのです!」


そういえば、こんな事も言われたでございますね……


「いやいや……何度も報告したと思うのでございますが、そもそもお嬢様は国王陛下を呪ったりしていないと私は判断して……」


「エレジーの判断など関係ありません!……あの忌み子がやっているとしか考えられないのですから!」


「だから、その根拠は何でございますか~?」


「根拠?……そんなの、あの忌み子が呪われた子だからとしか言えませんが?」


……身も蓋もない事を言ってしまうと、レドメス様はこの時点で既にボケ始めておられたのでございます。


そこに元々の迷信深さが合わさってしまわれた結果、レドメス様は現在で言う陰謀論を信じ込んでいる害悪の様な性格になってしまったのでございます。


当然、私としても老害の戯言を聞く気にもなれず……


「チッ……面倒でございますが、レドメス様も耄碌されたのでございますね……」


「耄碌ですって!?……王家の一大事に、その元凶を排除しようとしているだけではないですか!」


「でも、お嬢様が元凶だっていう理由はだいぶフワッとしているのでございます。……不吉な異能を発現させたという、それだけの理由で忌み子呼ばわりされた少女を元凶とするには、根拠が弱過ぎるのでございます!」


いくら、この時代ではまだ迷信が信じられていたとはいえ、情報の正誤が命取りになる暗殺メイドの長が迷信に振り回されるなど……


耄碌したとしか言えなかったのでございます。


……が、私の言葉を聞いても尚、レドメス様がご自身を客観視される事はなく……


「……エレジー、この際根拠など不要です。……国王陛下を苦しめる元凶があの忌み子である事は確定事項なのですから……」


「……どうしても、主張を改める気がないのでございますね?……面倒でございます……」


陰謀論に嵌まった老害ほど、厄介で面倒臭いものはないでございますからね~。


……ほんと、嫌な時代でございました。


「ああ……こうしている間にも、国王陛下の命は風前の灯になっているというのに……エレジー、早くあの忌み子を殺しなさい!」


「……証拠探しでも弱点探しでもなく、暗殺命令でございますか……面倒臭いを通り越して、もう駄目でございますね……」


ータッ……タッ……タッ……


レドメス様が私にお嬢様の暗殺命令を出した瞬間、私は踵を返してその場から立ち去る事にしたのでございました。


「ははは……やっとあの忌み子を殺す気になりましたか!」


「……何処までも救えないでございますね……」


私はその場を立ち去ろうとしただけだというのに、レドメス様は私がお嬢様を暗殺しに向かったと勘違いされたのでございます。


……その後、私はレドメス様を下手に刺激する事なくその場を立ち去り、塔に戻ったのでございました……



そして場面は変わり、その日の夜……


「お嬢様、何の御用でございますか~?……この時間から何かするのは面倒なのでございますが~?」


私は1人だけ、お嬢様から呼びつけられたのでございます。


「……そこに座れ」


「承知したのでございます。……で、何のよ……」


「エレジー、お前が落ちこぼれのメイドだというのは嘘だな?」


「っ!?」


お嬢様に嘘がバレた。


……私は瞬時にそう判断したのでございます。


「……お前は頭の回転も遅くないし、見た感じ身体能力が劣っている訳でもない。……かといって面倒臭がりな性格というだけで、お前の様な逸材を暗殺メイドの長がみすみす手放すとも考えづらい。……となれば考えられる可能性は1つだけだ……」


……私は、何も言い返せなかったのでございます。


ちなみに、塔に左遷されるメイドは皆何かしら、暗殺メイドとしては致命的な欠陥を抱えていたのでございます。


例えば、フレイヤは熱血過ぎるが故に大雑把で、アイシャは卑屈過ぎるが故に他者から怪しまれがち……


他のメイド達も、大なり小なり問題を抱えていたのでございます。


なのに、私が抱える面倒臭がりな性格と私自身の能力が、明らかに左遷されるにしては釣り合っていないとお嬢様は考えた訳でございます。


「はは……お嬢様、お見事でござ……」


「……というのは冗談だ」


「へ?」


……お嬢様の冗談発言は嘘でございました。


何故なら、続く言葉を紡ごうとしているお嬢様の目は本気そのものだったのでございますから……


「……何も言うな。……お前から私への悪意や害意は感じられない……ただの早とちりだったらしい」


「いえ、そうでは……」


「黙ってくれ……私は、お前を失いたくないのだ……」


「……お嬢様……」


仕えるべき仮初めの主人……


当初、私にとってのお嬢様はその程度の存在でございました。


ですが……


「エレジー……お前が何を考えているかなど、私にとってはどうでも良い……ただ、私の前から居なくなるのだけは勘弁してくれ……」


「……勿論でございますよ。……私は生涯、お嬢様ただ1人に仕えるのでございますから……」


この時、私にとってのお嬢様は仮初めの主人から、真の主かつ生涯の盟友になったのでございます。


「……苦労をかけたな」


「いえいえ~」


そうして私はお嬢様の部屋を後にして……塔の外(・・・)へと向かったのでございました……



そして再び場面は変わり、王城の隠し部屋……


「エレジー!……生きて戻って来たという事は、あの忌み子を暗殺したのですか!?」


部屋に到着した私に対し、レドメス様はそう問いただして来たのでございます。


本当に、この老害は……と思いましたね。


「いいえ、寧ろ逆でございます」


「逆?」


「……今すぐ、お嬢様に対する偏見を辞めて暗殺を諦めて欲しいのでございます。……さもなくば、レドメス様のお命を頂く事も……」


私は説得が無駄だと分かっていながら、そうレドメス様に告げていたのでございます。


しかし案の定、レドメス様の答えは……


「何と……まさか、あの忌み子に情でも湧いたと言うのですか!?」


……というものだったのでございます。


「ハァ……やはり、考えは改める気はないのでございますか……」


「当然です!……どうして、国王陛下を呪っている忌み子を暗殺しないなどと……」


「……でしたら、死んでいただくしかないでございますね……」


「殺す?……この私をですか?」


私が本気で殺意を向けたにも関わらず、レドメス様は余裕綽々といった態度を崩さなかったのでございます。


「さて、面倒臭いでございますが……【雷拳(サンダーパンチ)】でござ……」


もう説得は不可能だと判断した私は、レドメス様を殺そうとしたのでございます。


しかし……


「【対象移動(アスポート)】……」


ーブスッ!


「いだっ!?」


突如として、私の左腕にナイフが刺さったのでございます。


「私の異能、【対象移動(アスポート)】は指定した物質や生物を任意の位置に転送させる事が可能な異能です……この程度の情報、貴女も知っていた筈ですが?」


「ええ、勿論知っていたでございますよ~?……分かっていても、避けられなかっただけで……」


……今思い返しても、この時の絶望感はヤバかったでございますね~。


何というか、殺気が段違いでございました。


「さてと……私としても、最高傑作であるエレジーを殺すのは本意ではありません。……ですので、貴女が降参するまで傷付け続ける事にいたしましょう」


「くっ……そ、その判断が命取りでございます……」


この時のレドメス様は、自身の最高傑作である私を生かしたまま捕らえるつもりでございました。


……もっとも、そこに情なんてものは一切ございませんでしたが……


とまあ、そんなこんなで私とレドメス様の戦いは幕を開けたのでございました……


……………………


……………


……



「おい、もうすぐ到着だぞ!」


「エレジーさん、もうすぐだってさ」


「……へ?」


おっと、そろそろ到着でございますか……


では、回想はこの程度にして……


「……本当に大丈夫なんだよな?」


「さぁ……どうでございますかね~」


「ハァ!?」


「テメェ等、煩いなぁ!」


「あ、すまん……」


……それにしても、噂の"獄落姉妹"はどんな方々なのやら……


ま、楽しみにするでございますか。


私がそんな事を考えている内に、私と明様はとある廃ビルへと連れ込まれたのでございました……

ご読了ありがとうございます。


もう、ヤケクソ気味です……


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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