3.異能力専門高校に編入
書ける内に書いておきます!
(禍津 明視点)
「え~、本日はお日柄も良く……皆の者、本日はワシが運営する国立異能力専門高校への入学して……いや、ここはもっと……とにかく、ワシは皆の入学を祝福するのじゃ!」
「ぐだぐだじゃねぇかァ!」
ーペチィィィィン!
「……何だこれ?」
俺は今、例の強力な異能力者が入学を強制される高校の入学式に、編入生として出席していた。
……のだが……何故か校長らしき人物がハリセンで叩かれていた。
ちなみに、校長らしき人物は老人口調ではあるものの意外と若そうな女性であり、三つ編みにした白髪が特徴的だった。
対するハリセンで叩いた人物は全身を赤いジャージで揃えた女性で、ボサボサな茶色の長髪が特徴的だった。
なお、どちらもこの距離だと胸の大きさは確認出来ねぇ。
まあ、そこまで胸の大きさに興味はねぇが。
とか現実逃避していると……
「痛いのじゃ~!……武音子先生、いくら何でもやり過ぎじゃと思うんじゃが!?」
「ラヴィ校長がぐだぐだな話するからだろォ?……ったく、そんな話するくれぇならさっさと入学式を進めるべきだろォ!」
「ぐぬぬ……」
……何というか、あの武音子先生って人とラヴィ校長って人は仲が良いらしいな。
じゃねぇと、即刻クビになってる筈だ。
「ま、後はそっちでどうにかしやがれ!」
「ハァ……あ、ちなみにこの先生は桑原 武音子先生で、主に全学年の体育を担当しておるのじゃ!」
「あァ?……今オレの紹介する必要あったかァ?」
「しないと1年がポカ~ンとしたままなのじゃ!」
「そ、そうか……ってかラヴィ校長、今更だが自己紹介したかァ?」
……そういえば、校長の自己紹介聞いてねぇな……
「あっ……」
「チッ……今すぐ言えやゴラァ!」
「はいぃぃぃぃぃ~!……コホン!……ワシの名前はラヴィ・リンスゥ、この国立異能力専門高校の校長をしておる者じゃ!」
「ちなみにこの高校の敷地内はラヴィ校長の異能、【迷宮創造】の効果でハチャメチャになってるから注意しろよォ?」
そうなのか?
俺達は到着した瞬間にこの体育館に通されたから分かってねぇんだよな……
でも【迷宮創造】って凄そうな異能だし、やっぱり校長を務めてるだけはあるな……
その後、入学式はトントン拍子で進み、俺達はクラスへと案内されたのだった……
そして数分後……
「あァ~……お前等2年A組の担任になった桑原 武音子だァ!……いくら強い異能だからって、調子乗るんじゃねぇぞゴラァ!」
……よりにもよって、この人が担任か……
あ、武音子先生の胸はAカップだった。
だが、今の俺はそんな事がどうでも良くなるぐれぇ追い詰められていた。
というのも……
「……それと、こいつが今年度から編入する事になった禍津 明って奴だァ。……異能が強力だからA組に割り振られたが、ぶっちゃけ肉体面での実力不足は否めねぇなァ」
……教壇の上で、武音子先生にそう紹介されていたからだ。
ただでさえ怖い武音子先生に、ボロクソ言われる気持ちって……
「あの、俺は男性なんだが……」
「あァ?……んなもんで優しくするのは他の女共だけだァ。……オレが性別で誰かを優遇するなんて思わねぇ事だなァ!」
「は、はい……」
す、凄い……
貞操観念逆転世界に……いや、貞操観念逆転世界だからこそ、こんな先生も居るのか……
「それに、このクラスには既に男性が2人も居やがる。……今更お前を優遇する訳ねぇだろォ?」
「え、2人?」
俺がクラスを見渡すと、確かに男性は居た。
……1人だけだが。
「ん?……ああ、僕を見ていたのかい」
「……そ、そうだが……」
その男性は、何というか輝いていた。
俺を含む他の生徒が黒をベースにした制服なのに対し、彼の制服は白の学ランで胸元には赤い薔薇のコサージュまで付けていた。
更に髪色も輝かしい金髪であり、もう何というか……貴公子という言葉がピッタリな男だった。
「ふふ、僕の名前は金霊院 秀光。……代々優秀な政治家を排出している金霊院家の1人で、僕自身も将来は他の家族と同じ道を行く予定さ!」
「……聞いてねぇんだがな……」
金霊院 秀光と名乗った男はどう見てもナルシストの様で、何か喋る度に大袈裟な身振り手振りを付け加えていた。
……とはいえ、見える限りで男性は秀光だけだ。
まさか、何か事情があって休みなのか?
そう思い至った直後だった。
「おい、彩ノ進!……いい加減名乗り出したらどうだァ!」
「ちょっと~!……ボクの事はアヤノって呼んで欲しいって言ってるよね~!……も~、本っ当に失礼しちゃうよ!」
「……え、お前……男なのか!?」
そこに居たのは、耳の上でツインテールにしたピンク髪が特徴的な女子……にしか見えねぇ生徒だった。
「ハァ……こいつは萌ヶ原 彩ノ進。……普段から女装してるから分かりづれぇが、れっきとした男性だァ」
「だ~か~ら~、ボクの事はアヤノって呼んでって言ってるよね!」
「呼んで欲しかったら自分から名乗り出ろォ!」
「うっ……」
お、男なのか……
どう見ても女にしか見えねぇ……
まあ、確かに胸は驚く程にぺったんこだが……
……意外と行けるかも……
と新たな扉を開きかけたタイミングで……
「ん?……彩ノ進、お前異能を使ってやがるなァ?」
「ぎくっ!……な、何の事か分からないな~……」
「その反応が答えだァ!」
「ひっ……ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!」
え?
異能なんて使ってたのか?
「ハァ……彩ノ進の異能は【完全魅了】っていってなァ。……その名の通り、老若男女問わずメロメロにしてしまう異能だァ」
「なっ……」
「現に、今だってオレや秀光を始めとした極一部の生徒以外はお前を含めて見事なまでに魅了されてやがったしなァ。……この異能を無効化するには、オレや秀光みてぇに我の強さが異常なレベルで強くなきゃいけねぇ。……そうでなきゃ、あいつの術中に呑まれちまうからなァ」
「……た、確かに……」
さっきの新たな扉を開きかけた感覚……
それこそが彩ノ進……いや、アヤノが持つ異能の効果って訳か。
「さて、他の女子共は追々覚えろォ。……じゃ、取り敢えず紹介はこのくれぇにして……一旦全員の異能を見せて貰わねぇとなァ」
「……え?」
武音子先生が何やら不穏な事を言った直後だった。
「ラヴィ校長、2年A組もOKだァ!」
『分かったのじゃ~!』
ーゴゴゴゴゴ……
突然、ラヴィ校長先生の声が聞こえたかと思えば、教室が思いっきり揺れ始めた。
……が、俺以外の全員が何事もないかの様に落ち着いていた。
そして、次の瞬間……
『到着なのじゃ~!』
「……え?」
気付けば教室は何処へやら。
何故か大規模なスタジアムらしき場所に俺は立っていた。
「あァ、初めては驚くよなァ。……ラヴィ校長の異能には、自身の迷宮内にある生物や物体を自由に転移させられる能力があってなァ」
「えぇ……」
改めて、ラヴィ校長の異能がいかに常軌を逸しているかを体感した気分だ。
……というか、スタジアムに加えてさっきの発言、まさか今からやるのは……
「あァ~……よし、それじゃあ早速やるとするかァ」
「な、何をだ?」
「ん?……勿論、全学年の異能検査……つまり、異能の威力やら何やらを検査する場って訳だァ」
「あ、ああ……なるほど……」
つまり、この手の作品にはありがちなアレか……
「あァ、検査の仕方は人によって変わるがァ……明、お前は秀光と戦ってみろやァ」
「……わ、分かった……」
言っちゃ悪いが、俺の異能はあのクソ神から授けられたチートみてぇなもんだ。
そんなの、いくら引きこもりだったとはいえ俺が圧勝するに決まってるだろ。
……そんな俺の驕りにより、俺はこの後ズタボロにされるのだが……この時の俺は知る由もない。
ご読了ありがとうございます。
私の作品で、主人公が最強って事はありません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。