表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

最終話 愚かなる炎

敵に突っ込んだ佐藤大尉の機体は、槍の一撃で、敵のファランクスを貫く。


バゴオォォン!


爆発炎上する敵ファランクス。 爆風を避けるため、姿勢を低くする佐藤大尉の機体。


その後、敵味方が入り乱れて乱戦が始まった。僕も操縦席で叫び、


「うおおぉぉーっ!」


重機関銃を乱射しながら、


ドドドドドドオォン。


槍を突きまくったが、敵機の撃破には至らない。


ドドドドドドオォン。ドドドドドドオォン。


敵機に囲まれ、至近距離で弾丸が飛び交う激闘のなか、佐藤大尉が槍で二機、柴田伍長が重機関銃で一機の敵機を撃破する。


敵も、重ファランクスの高性能を目の当たりにして、逃げ腰になった。だが、その時、一機の敵ファランクスが前に出てくる。


盾に『雪の結晶』のエンブレム『雪の悪魔』だ。


サッと飛ぶように、雪の悪魔は柴田伍長の機体に接近すると、次の瞬間、


ズサンッ!


槍の矛先が、柴田伍長機の胸部を貫いた。 槍を引き抜くと、血がベッタリと付いている。おそらく柴田伍長は即死。


ドゴオォォン!


爆発炎上する、柴田伍長の機体。


「し、柴田!」

「伍長!」


僕と佐藤大尉は呼び掛けたが、当然、応答はない。佐藤大尉は、


「この野郎!」


と、重ファランクスを急発進させ、雪の悪魔に体当たりさせた。


ガツンッ!


強烈な体当たりに吹き飛び、地面を転がる、雪の悪魔。(とど)めを刺すように、佐藤大尉機の槍が飛んだが、


ガゴリッ。


盾で受ける雪の悪魔。奴も素早く立ち上がり、ファランクス同士の格闘戦が始まる。両者が槍と盾で、激しく戦った。


ガツン、ガツン、ガツン、ガツンッ!


凄まじい金属音が響いたが、その時、雪の悪魔の背中に、僅かな隙が見える。


僕は、その隙を逃さず、槍で突いた。


グサリッ!


卑怯な気もしたが、これは戦争だ。充分な手応えがあり、槍は雪の悪魔の機体を貫いた。 操縦席の『戦果判定器』が『ファランクス1』を表示する。


バゴオォォン!


爆発炎上する『雪の悪魔』


「よくやった!」


通信機から、佐藤大尉の声が聴こえる。だが、まだ敵は九機も残っていた。しかし、驚いた事に、残りの敵は一斉に逃げ去る。


「に、逃げるのか?」

「追うな」


と、佐藤大尉。


「俺たちも、ここから離脱する。西南方向へ走れ」


重ファランクスで走りながら、佐藤大尉が歩兵小隊へ通信機で呼び掛けた。


「こちら佐藤大尉。歩兵小隊の現在地は?」

「こちら歩兵小隊。もう、目の前にヘリが見えます」

「俺たちも、そちらへ向かう」


市街地を出ると、広い草原があり、一気に川原まで駆け抜けた。


しかし、この作戦は、いったい何だったのか。皆、無意味に死んでいったのか。柴田伍長や泉大佐、そして、多くの味方と敵が命を落としたのだ。


この作戦は、あまりにも愚か過ぎる。いや、この作戦だけではない。世界大戦、自体が『大いなる愚行』だ。


それでも僕は、今、生きている。川原に到着すると、重ファランクスを乗り捨て、汎用ヘリコプターに乗り込んだ。


乗り捨てた機体は、敵の手に落ちないように自爆させる。地上で爆発炎上する重ファランクスを、僕は上空から見下ろした。 赤い炎と黒い煙は、戦争の『愚行の象徴』のように、いつまでも燃え続けている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ