第6話 市街地戦
B海町は、面積は広大だが人口は少なく、市街地は小さい。その小さな市街地で、激しい内戦が始まった。
マウンテン・ウルフの構成員は、建物の陰から出て来ては、僕たちを狙って銃撃してくる。
バババババババババーン。
バババババババババーン。
今、地上での、こちらの戦力は、重ファランクスが三機、歩兵が三十名。だが、もうすぐ、主力のファランクス大隊が加わるはずだ。
重ファランクス分隊は、歩兵小隊を守るように、銃弾を盾で受けた。
「かまわん、撃ち返せ!」
佐藤隊長の命令で、僕は重ファランクスの右腰部の『対人用』機関銃を六発連射する。
ババババババーン。
操縦席の『戦果判定器』が『人員1』をカウントして、一人の敵が倒れた。敵といっても、彼は北K道の若者だ。内戦とはいえ、僕は、何とも言えない『後味の悪さ』を覚える。
それでも、敵からの銃撃は続き、どうやら、部隊は取り囲まれたようだ。こちらの負傷者は三名。柴田伍長の機体の陰で、応急手当を受けていた。
こうして、マウンテン・ウルフと撃ち合っていると、僕は、とんでもなく愚かな事に、巻き込まれてしまったような気がする。
なぜ、僕は彼らと、戦っているのか?
操縦席の時計を見ると、五分以上が経過しているが、ファランクス大隊の攻撃は始まらない。
と、その時、ニ機の戦闘ヘリコプターが、低空に飛来する。通信機から、泉大佐の声。
「援護する。弾に当たらないように気を付けろ」
上空の戦闘ヘリコプター二機は、辺り一面に、機関銃の弾をバラまくように発砲した。
ババババババーンッ、ババババババーンッ。
何人かの敵が倒れ、残りは、どこかへ逃げていったところで、佐藤大尉が泉大佐に問う。
「ファランクス大隊は、どうしたんですか?」
「俺にも、わからん」
泉大佐は素っ気なく答え、その状況で歩兵小隊の小隊長が、
「例のホテルへ向かうぞ。負傷者は自力で、ここから戦線を離脱しろ」
と、走り出す。ニ機の戦闘ヘリコプターは、やや高度を上げて、上空から、部隊を支援するようだ。
だが、この時、スーパーマーケットの駐車場から、民兵の一人が、肩に担いだ『対空ロケット弾』を撃つのが見えた。危ない。と、思った、瞬間。
バゴオォォン!
一機の戦闘ヘリコプターが撃ち落とされる。
泉大佐の機体は急速に高度を上げながら、通信機で呼びかけた。
「こちら隊長機。二号機、大丈夫か、応答せよ」
「こちら二号機、なんとか、生きています」
それを聴いた歩兵小隊長は、軍曹に指示を出す。
「部下を連れて、パイロットの救護に向かえ」
「了解しました」
軍曹は三名の隊員を連れて、救護へと走ったが、途中、敵に狙い撃ちにされる。
ババババババーン。ババババーン。
四人は遮蔽物に身を隠そうとしたが、一人が撃たれ、それを助けようと走った軍曹が、また撃たれる。悪循環だ。
「こちら泉大佐。負傷者は置いて、目的地に向かえ。重ファランクス三機も、小隊の護衛だ」
非情の決断を下した泉大佐だが、佐藤大尉は、
「一機、負傷者の救護に廻しましょう」
「駄目だ。全戦力で今居の身柄の拘束を実行する」
泉大佐は、キッパリと却下した。