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第14話 ウィッグ懇願おじ


 毎週月曜日の深夜0時にあちら側とこちら側を繋ぐ扉は開かれる。

 全てわたしの内側で完結するから実際に扉がドーンと出てくるわけではないの。


 おまけにリアルタイムで〝あちら側の世界〟を見ているわけでもないの。

 たった一時間のアカシックレコード(始まりから終わり)って言えばわかりやすいかも!


 向こうの一時間がこちら側での一週間ってわけでもないの。けれど、事象だけで語るならそうなっちゃうの……かな?


 週一回の一時間視聴だからね!

 

 そんなだから現実味を帯びないし、夢でも見てるんじゃないかな? なんて思ったりもするんだけど、わたしの部屋からは確実に物が無くなっていくから、どうしようもなく現実なんだよね……。


 最初は少し奮発してアイロンをあげたけど、文句ばっかり。

 二回目は意向に沿うような物を渡したけど、またもや文句。

 三回目は適当に渡してやった。そしたらクンクンしまくっててドン引き! JKの匂いがするとか言っててさらにドン引き! 


 もう何もあげたくない。けど、バタフライエフェクトは魔導具を渡せと示してくる。


 もうないの。お金もないし。

 中学生のお小遣い事情を理解してっ。


 ……あーあ。人生のハズレクジを引かされた気分だよぉ。


 受験勉強だってしなきゃいけないのにぃ……。






 ◇◆◇◆


『そうか。つまり、チロルちゃんが欲しいのは〝お金〟って事だね?』


『うぅ……ぐすっ。そうだよ。どうしてわたしばっかり……』


 この人なんなの……。次は七回目だって言うのに、これがバタフライエフェクトが選んだ人って事?


『俺はね、六回目を終えて確信したよ。彼女たちを幸せへと導いてあげなければいけないってね。だからさ、BOXティッシュを魔道具として渡されても困っちゃうんだよ〜』


 ヤバッ。意識高い!! そして何も言い返せない……。


『いいかい。お金ってのはね、突然舞い込んで来たりはしないんだよ。わかるね?』


 ダメ。頑張れチロル! 雰囲気に流されちゃダメ。


 わたしが中学生って知るや否やコロっと態度を変えちゃって。負けないんだから! あー、もうムカつく!


『わかりますけど、なにか?』


『よろしい。では俺の全てをあげよう! あいにく現金は殆ど無いけど、パソコン、カメラ、レンズにフィギュア、ゲーム機にソフト、カードゲームの類を売れば百万円以上にはなる』


 ひゃ、ひゃ、ひゃくまんえん?!


 でも、それって……。


 どうやって受け取るの? おじさんはあっちの世界にいるわけだし。


 住居不法侵入……からの泥棒?


 …………うん。それしかないよね。


『それは出来ません。受取方法が泥棒ではありませんか?』


『チロルちゃん。やるんだよ。やらなきゃお金は入らないよ? 切った髪だって元には戻らない。俺はさ、ウィッグが欲しいんだよ。今の髪型では先へは進めないんだよ?』


 あー……。ほんと意識高いなぁ、この人。


『一時間ループを終わらせて、主人公からヒロインを奪い取る! あんな男と居たら誰も幸せにはなれない。全員を幸せに……いや、全員と幸せになりたいんだ。この世界で俺は!』


 あー……。なんか色々やばいかもぉ。この人。


 六回目のアカシックレコードは見たけど、あんな凄惨な終わり方をしてこんな目標に辿り着くんだ……。


 ……童貞を拗らせた変態ってすごい。



 ────ドドドドドドドドドッ


 あれっ、時間切れかな? 

 バタフライエフェクトが反応してる? もうわかんないよぉ。勘弁してー!!


 とりあえず次って事だよね!!


『縦巻ロールをやめるのです。魔術講師レオンハートの好みの女性になるのです。清楚系で尚且つ色気を放つのです』


『あーもう! またそうやって一方的に切る! チロルちゃんの悪い癖だよ? ねぇ聞いてる?! ウィッグが欲しいんだよ!! 買って来てよ! お願いだよ! ウィッグウィッグ! ウィッグちょうだいよー!! ウィッグゥゥゥウウウウ! ウィグウィグウィッッッッッグゥゥウウウ!』


 やだ……。なにこれ……。

 ウィッグを懇願するおじさんってどうなの……。


 やだやだ。わたしの都合で巻き込んじゃってるんだけど、ちょっときもいよぉ……。



 ──────バタンッ──────


 うん。でも大丈夫。扉は閉められた。


 また来週だもんね!


 週一回って考えれば耐えられなくもない!



 って思ったんだけど……。


 自分の部屋のテーブルの上にありえない物が置いてある。


 超高級アイス『ハリケーンゲッツ』の空箱。


 誕生日プレゼントにお姉ちゃんが三十個くれた。

 毎日一個。もう全部食べちゃったのは先週の話。


 …………ていうかそもそも。今日、食べた記憶がない。


 それになにより……ハリケーンゲッツの空箱で作ったピラミッドがない!


 これって、もしかして……!


 リビングへダッシュ!

 開け! 冷凍庫! バーンッ!!


「きゃぁぁぁ!! ハリケーンゲッツがたくさんあるよぉ!! やったやったぁぁぁぁ!! 神様、ありがとぉぉ!! わーいわーい! いえーい!」


 飛び跳ねジャンプで大喜びのわたしだったけど、これってどう考えても過去に戻って来ちゃってるわけで……。由々しき事態勃発なのでした──。

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