恋愛経験豊富な幼馴染との宅飲み
恋愛観は人それぞれだと思います。
皆さんはどんな恋愛観をお持ちでしょうか。
「久し振りだねー!元気してた?」
コイツは高宮美結。
俺の同い年の幼馴染。
小学校からの付き合いで、家が近所でいつも一緒に遊んでいた。
中学くらいからモテ始めて、歴代彼氏は二十人以上、セフレもいる。
「ああ、何とかな。」
俺は宮田宏文。
24歳の平凡なサラリーマン。
美結とは中学まで一緒だった。
中学を卒業してからもたまに美結に誘われて会ったり、大人になってからは飲んだりしていた。
俺に彼女がいるときは流石に二人きりで会うことは無かったが。
今は俺には付き合っている人は居ない。
「どうなん?最近は。」
「どうって何がよ。」
「んー?彼女とか、いい感じになってる子とか。」
「いねーよ、社会人になってから出会いなんてそうそうねーし。」
「それは言い訳だよー。その気になればいくらでも出会いなんてあるでしょ。」
「…そーかもなー、なんか仕事終わってから遊びに行くとか面倒くさくてなー。」
「もう、今からそんなんじゃすぐおじさんになっちゃうよー?」
「うるせーな、そっちこそどうなんだよ?前電話で話した時は彼氏いなかったろ?」
「彼氏は何か面倒くさいんだよねー、セフレで十分。」
「さいですか。まあ、お前がそれでいいならいいんじゃね?」
「…宏ちゃんはセフレとか作らないの?」
「あー、俺はな…。お前からしたら男のくせにって思うかもしんないけどさ。」
「うん?」
「セフレって関係性は嫌いなんだよ。」
「どして?」
「そういう付き合いしてる時って、そういう出会いしかない気がして。」
「あー、確かに。真剣に付き合いたいと思える人は私の周りには居ないかも。」
「まあ、気のせいかも知れんけど、類は友を呼ぶってな。」
「確率の話で言ったら合ってるかも。」
「そう、だからセフレとかは作らんのよ。」
「ふーん、今までさ、私が電話して話すのが多かったけど、宏ちゃんの話はあんまり聞いたことなかったね。」
「大体お前の愚痴を俺が聞くってパターンだったからな。」
「そうだね、彼氏の愚痴か、セフレの愚痴か、仕事の愚痴かって愚痴しか言ってない!」
「うーん、そうだな。俺としてはふーん、そんな奴居るんだーみたいに聞いてたけど。」
「つまらなかった?」
「いや、幼馴染と偶に連絡を取り合うってのもいいかなって思ってた。」
「そう?なら良かった。」
「小学校の頃なんか毎日一緒に遊んでたからな。」
「そうだね、暇でもいつも一緒だったね。」
「ああ、中学に入ったころからはお互い部活だったり、お前に彼氏が出来て距離置いてたり。」
「そうそう、なんかイケメンだったからさー、OKしたはいいものの。」
「中学生のくせして相手が浮気してたんだっけ?」
「そうなの!しかも三股!ガキのくせして碌なもんじゃなかったよ!」
「で?中三の頃は高校生と付き合ってたんだっけ?」
「その前に一個上の先輩にヤリ捨てされた。」
「あ、そうか。その後が高校生だったか。」
「そう。でもその彼もヤル事しか頭になかったなー。」
「それぐらいの年じゃそんなもんじゃね?」
「うーん、かもしれないけど、宏ちゃんは違ったでしょ?」
「あー、俺は初カノは高一の時だったかな。」
「うんうん、で?どうだったの?恋愛経験豊富な私に話してみ?」
「…向こうから告白されたんだけどさ、付き合いだして俺もちゃんと好きになったよ。」
「好きになってからすぐヤったの?」
「いやあ、俺がビビってたってのもあったけど、彼女を大切だって思ってたから、半年後くらいだったかな?」
「じゃあ、宏ちゃんの初体験は高一?」
「そうだよ。」
「付き合って半年かー、我慢したねー。」
「いや、我慢はしてねーよ、彼女も心の準備がしたいって言ってたし。」
「ほえー、初々しいですなー。」
「そりゃお互い初めて同士だったからな。もういいだろ?俺の話はさ。」
「えー、宏ちゃんの話聞きたいなー。その子とは?」
「高校卒業まではちゃんと付き合ってたと思う。」
「その後は?」
「段々連絡が無くなって、大学一年の夏ぐらいに向こうから別れようって。」
「そっかあ。宏ちゃんも冷めてたの?」
「かもしれないな。お互い新生活でバタバタしてたのもあったし、時間も合わなかったしな。」
「難しいねー。その後は?」
「同じ学部の子と付き合ったかな。俺から告白した。」
「おー!宏ちゃんから!どんな子だったの?」
「凄くまじめな子で、大人しい感じで。でもなんて言うかな、愛嬌?っていうのかな、笑顔がかわいい子だった。」
「いいねいいね!それで?」
「ちゃんと付き合ってたよ。二年間。」
「でも、別れちゃったの?どうして?」
「あー、実は俺、浮気しちゃったんだ。」
「え?宏ちゃんが?」
「ああ、酒の勢いで。で、彼女にバレて振られた。」
「あちゃー、やっちゃったねー。」
「滅茶苦茶後悔したよ。真剣に付き合ってたし、信頼関係も積み重ねてたつもりだった。」
「でも、許してもらえなかった?」
「ああ、信じてたからこそ許せないって言われたな。」
「…信じてたからこそ…許せない…。」
「本気で好きだったからなおさら許せないとも言われた。」
「…本気だったから…………。」
「それからはもう俺は酒の勢いでってのは無くなったよ。」
「そう…………。」
「懲りたからな。」
「…………で、次の彼女は?どんな人?」
「大学三年の時に同じサークルの子だったな。向こうから告白された。」
「へー、宏ちゃんも結構モテるんだね?」
「そうでもないと思うけど。」
「まあまあ、それで?その子とは?」
「四年付き合ったよ。」
「四年?!凄いね!」
「まあ、な。結婚も考えてたからな。」
「…………真剣に付き合ってたんだね。」
「ああ。今までの彼女だって全員真剣に付き合ってたぞ?」
「…………そうなんだ。…で、その子とは?」
「…半年前に別れたよ。」
「ああ、そっか。私と会ってるってことは別れたって事か。何で別れたの?」
「そうだな。今度は向こうの浮気。」
「…あー、それは…。」
「結構キツかったな。さっき言った元カノの気持ちがわかったよ。」
「…どうして浮気なんか…?」
「浮気ってか、不倫だな。会社の上司とだった。」
「うわぁ…………キツイね。」
「向こうの奥さんから連絡があってさ、それでまあ、揉めた、揉めた。」
「揉める?どうして?」
「彼女が俺と別れたくないってさ。別れたくないなら何で不倫なんかってなった。」
「…そうなんだ。結局別れられたの?」
「ああ。婚約もしてたからな。両親も交えて話をして、わかってもらった。」
「…大変だったね。宏ちゃんとは彼女がいない時しか飲めないからその間は電話だけだったけど、言ってくれれば良かったのに。」
「誰かに話すのも嫌だったんだよ。今はもうだいぶマシになったけどな。」
「…そんなに落ち込んでたんだ…。それは、ちゃんと付き合って信頼関係も築いてたから?」
「そうだよ。彼女が不倫なんて思ってもみなかった。信じてたし、この人ならって婚約したんだしな。」
「そ、そうだよね。辛かったね…。」
「そんな感じでまあ、彼女は当分いいやって感じ。」
「…………。」
「俺の話はもういいだろ?お前の方は?」
「…………なんか、自己嫌悪。」
「自己嫌悪?」
「うん…。宏ちゃんはちゃんと付き合ってたんだなって。」
「?まあ、そうだけど。」
「私ってさ、恋愛経験豊富なんだって思ってたけど、ただエッチの経験が豊富なだけだったなって。」
「…………。」
「エッチの経験を積んでみても、結局男を見る目なんて育ってないし。周りにいる男はエッチの事ばっかりだし。」
「…………。」
「付き合った彼氏とも信頼関係とか考えてなかったかな。ただ一緒にいて楽しくて、それでいいと思ってた。」
「…………。」
「セフレだったら何人でも増やせるけど、こんな女と真剣に付き合いたいって思う男はいないのかな…………。」
「もしお前が真剣に付き合いたいって思ってるなら、セフレなんて切れよ。」
「やっぱり、そうだよね。」
「切らないと、お前の周りにはそういう男ばっかり寄って来るだろ?」
「うん。」
「だからセフレ切って、自分を安売りすんのやめろ。自分を大事に出来ないヤツを大切に思える男がいると思うか?」
「…………うん。」
「お前が今までそれで幸せなんだと思ってたから何も言わなかったけど。」
「…そうだね、今まではそれでいいと思ってた。」
「…変わりたいなら変わればいいだろ?まだ若いんだし。」
「…変わりたい…うん……変わりたいな。」
「うん。」
「…ねえ、もしも、もしも、だよ?私が宏ちゃんの事が好きだって言ったら?」
「は?いやそれは」
「だからもしもだって!」
「うーん、…………いや、悪いけど、無いかな。」
「そ、そう。どうして?」
「今は彼女は勘弁って感じだし、お前の彼氏との話とかセフレとの話とか聞いちゃってるからなあ。」
「あ、そういうの聞きたくなかった?」
「いや、お前を女として見てたならそんな話聞けねえだろ?」
「…ああ、そういう…………。」
「で、今更お前を女として意識したとしても、俺じゃあお前を大切には出来ないと思う。」
「そ、それは私が軽い女だから?」
「そうだな、お前が自分を安売りしてた事を知ってるからかな。知らなけりゃ、どうだろ?大切に出来るかもしれないけど。」
「そう…………。」
「まあ、お前はモテるんだから、そのうちいい出会いがあるよ。」
「そう、かな…………。」
「ああ、大丈夫。」
「…うん。宏ちゃんもいい出会いがあるといいね!」
「あー、まあ、俺はしばらくは」
「大丈夫だよ!宏ちゃんはいい男だよ!自信もっていいよ!」
「そ、そうか?まあ、気長にその出会いとやらを待つとするよ。」
「そうそう!……あ、そろそろいい時間だね。」
「おう、送るか?」
「大丈夫、帰れるよ。」
「そうか、じゃあまたな!」
「うん!またね!」
「本当はお前が初恋だったんだよ。でも、な…………。お前の事は大切な幼馴染だと思ってる。ちゃんと幸せになれよ。」
「最初っから間違えちゃってたのかな…………やっぱり…………無理かぁ…………。」
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