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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

第101層

作者: きらいろ

ここは迷宮101層、常に暴風が吹き荒れる階層。


大きなうねりを作るように空間中を風が吹きすさんでいる。

キャンバスに水彩で色を付けたような鮮やかなオレンジが青く広大な空に広がり、陽の終わりを告げていた。


ここに大地はなく、大小様々な多くの島々だけが浮かんでいた。

島々の下の大地ははるか遠く、白い雲の隙間から暗い大地が見えるのみで、落ちて帰ってきたものはいないといわれてる。



地面を駆け、力強く踏みしめて空中へ飛ぶ。敵はすぐそこに。


前足の代わりに翼が付き、鱗で覆われた強靭な足。恐竜にも似た黒い魔物の硬化した頭部と、双剣とをぶつかりあわせた。


「…っ!」


硬い、やはり頭部の装甲ではなく身体、とくに腹部側を狙いたい。でも、なかなか隙をみせてくれないな。


左、上、右下と思わせて真正面の突き。無意味な消耗戦も時間が経てばたつほどだるい。島の上に来てくれるなら楽なんだけど。

空中に滞空する敵に攻撃して、島に戻りの繰り返しだから普段より消耗が激しい気がする。


風魔法耐性も結構あるようだし、倒すのは無理じゃないけど、疲れるな。できるだけ無駄な消耗は抑えたかったが。


刃を交わした後一気に距離を取った。

そして一気にうねらせるのは体内魔力、練り上げた一部の魔力が得物に流れて、殺傷力が増加した。

腰を落とし、呼吸を整え狙うのは首。


魔物は頭部を低くし、一切の隙をみせないが、それでも突破の道筋は見えていた。

練った魔力を放出し、周辺に黒い嵐が吹き荒れる。

ただでさえ、風が吹き荒れている階層だというのに、突如として表れた黒い嵐のせいで局所的な混沌が訪れた。


さて、いきますか


夜魔という種族のおかげで暗闇の中でも魔物が視認できている。

突然暗い嵐が視界を覆ったからか、魔物が混乱し、わずかに体躯を上げた。


その隙に距離を詰め、首へ双剣を深く突き刺した。肉に無理やり入り、筋を断つ感触。抵抗しようとして暴れたからさらに深く刺すと完全に動かなくなった。


力を失い落ちる魔物と共に、自らの身体も底へ落ちていく。

戦闘後の僅かな余韻に浸り、力を抜けさせた。


夕日が雲や島、この目に映る世界すべてを照らしていてきれいだ。大自然の中に身を投げるのは心地が良い。


もちろん、普段ならこんなにも油断はしない。周囲に何も気配がないのは確認済みだ。


黒い嵐―夜嵐はもうすでになくなっているが、このフィールドは常に風が吹いている上に、身体に力を入れることなく重力に身をまかせているからか、身体がいろいろな方向に回転している。


力の流れ、風の流れ、ぶつかり合い、あらゆる暴力的な本流の中、態勢を整えると、夜色のスカートが風を受けてパラシュートのように広がり、落下速度が遥かに遅くなった。

さらに追い打ちをかけるように、風魔法を扱い、身体を上昇させた。


横からの風には逆らうことなく、下降気流はさけ、上昇気流に乗って、さっきとは違う島に戻ってきた。元の場所には戻れないが、陽のおかげで階層の先に進む方角も、戻る方角もわかっている。


これより先に進むのは食料が持たない。残念だけどしょうがないね。


今回はここで終了。

後は来た道を戻るのみ。階層を上がれば上がるほど弱くなっていくから、敵は一対一でやりあえば確実に勝てるだろう。

しかしここは100層付近。上層とは比べ物にならないほど強く、まるで、厄介な魔物展覧会だ。そのうえ帰還スピードを上げれば上げるほど、魔物とは絶え間なくエンカウントする。


まともにやってると消耗してしまう。まあ、もとからまともにやりあうつもりはないけどね。


遠くで魔力の熱の気配がする、こちらに向かってくるやつがいる、進行方向に気配がする、その一切を無視して突っ走った。

目指すは第1層、地上へ。


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