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イザベルに到着したルーフとピノは従士学園へとやって来ていた。
『従士学園』
名前の通り、世界有数の従士育成機関である。初等部、中等部、高等部と分かれており初等部のときに、立派な召喚従士となる為に一般的な教養の他、異世界の歴史、文化を学ぶ。その後、中等部にて『契約の儀』を行い、異世界より召喚されしモノ【パートナー】と契約を行い、パートナーを使役する術を学ぶのである。高等部ははっきり言って将来の就活期間の様なもので、活躍し国家騎士団に入隊するか、従士ギルドで高待遇を受ける為に頑張る期間だ。
「さて、入学手続きをしなくてはな。僕としては高等部からでもいいんだが」
「ルーフ様は残念ながら中等部からですね。」
ピノはクスクスと笑いながら答えた。
ちなみに初等部は8歳〜12歳
中等部は12歳〜15歳
高等部は15歳〜18歳だ。
「仕方ないか、この体ではな」
ルーフは諦めの表情を浮かべながら自分の体を見る。
「何を言っておられるのですか!実際ルーフ様はまだ12歳中等部が打倒なのです。昔、力をお使いになられた時に力の影響により時空から外れ眠りにつかれていたのですから仕方ない事なのです。」
そう、僕は力を使ったせいで実際よりも歳を重ねている。いや、時空から外れていたせいで重ねる時もなかったんだけど。ただ、そんな時にも友人である彼等とは繋がっていたおかげで精神的にはだいぶ成熟してしまって、外見との不和を感じてしまっいるところだ。
僕とピノは学園の理事長室に来ていた。
「失礼いたします。」
僕は理事長室の扉を開けながら、一歩入ると礼をする。ピノは扉の外で留守番だ。
部屋に入ると正面に実務的な机を挟んで、1人の老婆が座っていた。
その隣には背の丈3メートル近い甲冑が立っていた。
「あぁ、来たんだね。立ちながらじゃなんだし、そこのソファに座っとくれ。」
老婆はそう言うと、机の前にあった2組のソファを指差した。
ルーフは言われた通り、ソファに座る。
「さっそくで悪いが、私は理事長のナーヤだ。お前さんはルーフでいいんじゃな?」
「はい、そうです。」
「そうかそうか、お前さんが例のルーフ殿か。」
老婆、ナーヤさんはコロコロ笑いながら僕を見つめる。どうやら彼女は僕の事を知っているらしい。
「ナーヤ理事長は私のことをどちらで?」
「なーに、お前さんのことはこの自動甲冑、私はナイトと呼んでおるんやが。聞いとるよ。」
ナーヤさんは隣の甲冑をバシバシ叩きながら答えた。やっぱり大きな甲冑は、彼女のパートナーだったようだ。
今まで微動だにしなかった甲冑が、僕の前に来て騎士の礼をとる。
一瞬、驚きはしたが甲冑に対し礼を返しておく。
「こやつは喋れはせん。なんせ喋る機能など甲冑にはいらんからな。機械の世界のもんは大抵そうだから誤解されがちだが、言葉を理解して文字だって書けるのじゃ。必要がないだけで。じゃから、こやつが何十年と一緒に居たのにいきなりお前さんの事を文字を書いて知らせて来た時は嫉妬の念を覚えたぞ。」
「そんなことが…なんかすみません。」
「ええんじゃ、ええんじゃ。お主が悪いわけではないからの。」
ナーヤさんは笑ってくれた。
ナーヤさんから見れば何十年と一緒にいたパートナーから初めて意思疎通ができたと思ったら、知らないガキの事だったなんてなんだか悲しいよな。
「だが、お主が来てくれなかったら意思疎通できることすら知らぬ間に逝っておったからな。」
「は、はぁ…」
「すまんすまん。話が長くなってしもうたな。大丈夫じゃ、お主の事情はある程度把握しとる。ここでは私がお主の後見人を務めるから、学園生活を楽しんでおくれ。」
ナーヤさんはそう言うと、学園の入学証と学園の入寮手続きに加え、学園生活に必要な様々なものが用意されていた。
「なんだか初対面なのにあれやこれや準備してもらってすみません。」
「ええんじゃ、ナイトが言う事がホントならお主は世界の恩人じゃからな。」
最後にナーヤさんは困ったらいつでも頼っていいと言ってくれた。
僕はナーヤさんと一緒にいたナイトにお礼を言って理事長室を後にした。