黒と緋と碧 ~緋の話~ 0話
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大自然に囲まれた、緑一色の世界。
けして人間なぞが足を踏み入れない、そんな深い緑の中に、その緋色の世界は広がっている。
「今日は、ループが終わったらなにしよっか?」
緋色の世界の約半分に影を落とす、巨木の根本。小さな虫がやっと通れるくらいの穴から、数匹の声。
穴から現れたのは、透き通る羽の生えた、小さな人型の生き物。
「今日は天気がいいから、球根の干物作ろうよ~♪キラの作る干物は美味しいんだ~」
キラは、くるんと回って嬉しそうに笑う。
「へへへ~♪あたし、シクちゃんと違って他の事はあんまりだけど、干物なら得意だもんっ」
「そんなこと無い~!だってキラは一番のお姉ちゃんじゃないの~」
そう言われて、さらに嬉しそうに笑う。
二人は、そのままお喋りをしながら緋色の絨毯へ潜り込んでいく。
こんな穏やかな世界に、終わりの音が近づく