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息子の入園式

作者: 斉木凛

息子の颯太は今週の金曜日に入園式があり、来週から本格的に幼稚園に通う。


私は都合よく、入園式の日に仕事は休みである。

一人息子だし、晴れの舞台をこの目で見ておきたい。

そして、どういうわけか、息子はみんなを代表してあいさつをすることになっているという。

入園式当日まで、家族みんなで息子のあいさつの練習を見守ることになるだろう。


そんな息子の大仕事をビデオで録画しておきたかったのだが、恥ずかしがりの妻は、

「そこまでしなくてもいいんじゃない?」

と、乗り気ではなかった。


実を言うと、私は機械音痴であり、家にパソコンはあるが、ほとんど使っていない状態だ。

ビデオの使い方もよくわかってはいなかった。

妻の意見を尊重するということにして、ビデオ撮影はやめておく。


 入園式用に息子のスーツや靴を買い揃え、準備は万端である。



入園式当日になり、家族三人で幼稚園に向かう。

式場となる体育館に入ると席は半分ほど埋まっており、その席に座っているのは若いお母さんたちばかりで少し気後れしてしまった。


 息子は私が四十歳の時の子だから、他の保護者に比べると私と妻は高齢の部類に入るだろう。

しかも、平日の入園式に出席できる男性は少なく、私のことをチラチラと窺う視線を感じながら目立たぬように一番後ろの席へと腰を下ろす。


 式が始まる。


 息子を見ると、幾分緊張をしているようだが、大人しくきちんと椅子に座っている。普段、家の中で見せる傍若無人な様子は垣間見られない。


式は順調に進み、とうとう息子のあいさつの順番になった。

私の両手は自然と組み合わされ、祈る様な格好になっていた。

隣に座る妻を見ると、期待と不安の入り混じった表情で、私同様、両手を合わせ祈っていた。


 息子がぎこちない足取りで、皆の注目を一身に集めながら、ゆっくりと壇上に上がる。

そして、マイクに向かって大きな声で、あいさつを始める。


「私が、今日からこの幼稚園の園長になる田中颯太です。皆さん、楽しい幼稚園生活を送っていきましょう。」

たくさん練習をした甲斐あって、無事に息子のあいさつは終わった。



息子の颯太は今年で四十八歳。来週から本格的に幼稚園に通う。


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