登校前の悲劇
「アルス、忘れ物は無いかしら?」
リリアは慌てながら、心配するようにアルスに聞いた。
そんなリリアに呆れながらカリムは、髭を撫でながら
「リリア、アルスも もう大人何だから大丈夫」
リリアを落ち着かせるため優しい声で言うもリリアは、少し声を高めながら
「だって今日から、寮で生活するのよ!!。この子大丈夫かしら!?」
子離れが出来て無いリリアにとっては、どうしようも無く辛いことであった。
だがそんなリリアの状態を解っているカリムは、抱きしめながら
「鉄の料理人カリムの子供がそんな事でへこたれるもんか」
その言葉を聞いたリリアは、顔を真っ赤にしながら気恥ずかしそうに
「駄目よあなた子供がみてるわ」
アルスは、この茶番劇にも似た物を何時まで見てられないと思ったのかさっさと家を出て行った。
アルスが、家を出て五分ほど歩いたところで大きな声でアルスを呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい!おーい!アルス君置いていくなんて酷いじゃないか!!」
緑色の髪をした、アルスと同い年ぐらいの少年であった。少年は、アルスの正面まで走って来ており、正面につくと走るのを止めアルスの肩を両手で掴み揺らしながら
「アルス君!!一緒に学校行こうって!!約束したじゃないか!!ひどいよ!!」
緑色の髪の少年は、少し怒りながら言い放った。
そんな少年の言葉に半信半疑気味のアルスは、呆れながら
「カイナ、そんな約束してないよね」
端っからそんな約束してないと思わせるような圧倒的な自信満々の言葉であった。
そんな言葉を聞いたカイナは、震えながら俯いた。しかし俯いたのは一瞬であった。直ぐに顔を上げ真っ直ぐに目を見つめ二人は、見つめあった。辺り一面に大声が響いた。
「アルス!!お前俺の話し聞いてなかったのかよ!!これでもう59回目だぞ!!」
そんな言葉を聞いたアルスは、疑うように
「いくら僕でもそれは、ないよ」
それを聞いたカイナは、呆れたのかさっきまでの大きな声ではなくため息を吐き出した。
それで落ち着いたのか優しげな声で
「アルスだしなもういいわ」
長年一緒の仲であるカイナにとっては、こんな事日常茶飯事である。
こんな事で、怒っていては身体が保たないと悟ったような面構えで
「早く学園行こうぜ」
隣に達手を引っ張って歩き出した。
学園の生徒達は、必ずしも寮に入る。