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作戦会議

 目を覚ますと、自分が洞穴の前で倒れていることに気付く。パーティのみんなも近くに倒れている。HPバーを確認すると全員0になっていた。ああ、全滅してしまったんだな…。体がズキズキと痛んで動くことが出来ない。


 そのまま待っていると、目の前にダイアログが出てきた。


『あと4分後に、クレーア村の宿まで戻ります。※デスペナルティとして所持金半減』


 おいおいマジかよ。ただでさえ貯めづらい金なのに全滅したら半減なんてやっていられない。しかし何故4分後なんだ?DOMの運営は焦らしプレイが好きなのだろうか。

 そう思っていたら、神官っぽい恰好をした少女がこちらにトコトコと走ってきた。


「大丈夫ですか?今から蘇生魔法を使いますね」


少女は魔法を唱え始めた。辺りが光で包まれ、次第に体が動くようになった。なにこれすごい。


「ありがとうございます!」


 すかさずお礼を言う。パーティメンバーも復活させてもらうと、それぞれお礼を彼女に伝えた。


「ここのボス強いですよね…。私も最初は苦戦しました」


「いやあ惜しいところまでは行ったんですけどね。最後にブレスでやられちゃいました」


「あれ、もしかして全体回復が出来る神官をパーティに入れていないのですか?」


「神官…ですか?」


「はい。回復役がいないと厳しいと思いますよ。よろしければ手伝いましょうか?」


 なるほど、神官を入れると楽になるのか。確かにこのパーティだと回復役のいない全員攻撃役の脳筋だらけだな。この神官が入ってくれればボス戦はかなり楽になるだろう。でも…


「ありがとう。でもパーティに空きがないし、このメンバーで勝ちたいんだ」


 格好つけてこんなことを言ってしまった。勝手にパーティを代表して言っちゃったけど、異を唱える人はいなかった。


「わかりました。みなさん頑張ってください。では失礼しますね」


 神官の少女は笑顔でそう言うとワープリングを使ってどこかへ行ってしまった。

さて…。


「一度アイテムを買うためにクレーア村に戻りたいんだけどいいかな?」


「僕もアイテムが無くなりそうなのでそうしたいです」


ゆきむらさんが同調してくれた。


「いったん回復するためにも、村に戻った方がいいと思います!」


「私もそうしたい!」


 マグナムさん、アリサちゃんも村に戻るということで全員で一度帰還することにした。再びゆきむらさんが先頭となる。しかし、帰り道は来た時とは一転して会話は消えていた。

 俺は悔しかった。レベルが6になって、すっかり強くなった気でいたんだ。一人でゴレゴスの攻撃をまともに耐えることも出来ずに、他の人にも負担を強いてしまった。それだけじゃない。最後にマグナムさんが足止めしてくれてる間に薬草を使って体勢を整えることが出来ていたら、もしかしたら倒せていたかもしれない。道具の管理もしっかりしておくべきだったな…。

 反省するべきことはたくさんある。ここから攻略法を導き出さないと。頭のなかでシミュレーションしながらゆきむらさんの後ろを歩く。


<クレーア村>


 村に着いたときにはすでに夕刻。それぞれ買い物を済ませてあと、宿にあるテーブルに集合するようにお願いをした。

 どうやら俺が着いたのは2番目で、すでにマグナムさんが席に座っていた。最後のこともあってかどうも気まずい。でもこれからのためにも勇気を出さないと。思い切って口を開く。


「マグナムさん、すみません…。最後、薬草が切れてしまっていて…」


「いや、気にしなくてもいいよ。僕の方こそ防御手段がないからスカイさんとゆきむらさんに負担させてしまってごめん」


 良かった。マグナムさん怒っているわけではないようだ。

 しばらくマグナムさんと話していると、ゆきむらさんとアリサちゃんも帰ってきた。遅くなってすみませんなんて謝りながらゆきむらさんが席に着く。アリサちゃんも荷物を置いて席についたのを確認すると、俺は立ち上がる。


「ゴレゴスの攻略に俺、考えがあるんです。聞いてくれませんか?」


みんな急な俺の発言に困惑の表情を浮かべている。でもしばらくして頷いてくれた。


「まず、洞穴に入るとゴレゴスは天井に隠れています。きっと誰かが牢屋の方に近づくと降りてくるようになっているんだと思う。ここは俊敏性の高いマグナムさんに頼みたいと思います。お願いできませんか?」


「え、僕がですか?」


「最初の攻撃をうまく回避できるのはマグナムさんくらいだと思うんです。どうかお願いします」


「なるほど…、次もうまくいけるか分からないけど頑張ってみます」


「マグナムさんが回避したら俺とゆきむらさんが前に出てきて壁をするので、その隙にアリサちゃんがまた後ろから魔法で攻撃をしてください」


「分かったわ。でも途中でMPが切れたときはどうするの?」


「そのときは全員前に出てきて攻撃をしたいと思います」


「でもそれだと今回のようにブレスでやられてしまうのでは?」


 ゆきむらさんが尋ねてくる。一番の問題であるブレス。これをなんとかしないといけない。


「確かにあのブレスは脅威だ。予備動作があるとは言え、発動が早いから避けることは不可能だと思います」


「あのブレスやばいよね…。私、HPが低いから一気に瀕死状態になっちゃうよ」


「なんとかブレスの対策を考えなければいけませんね」


 マグナムさんが顎に手をやって考えるような仕草をする。全体をすぐに回復するような手段がなければ厳しいものになるだろう。だが、ここで俺が一番伝えたかったことを話す。


「ブレスを避けることを考えるんじゃない。被害を最小限に抑えることを考えるんだ!」


「あのブレスの攻撃範囲は敵の前方向です。固まって敵の前にいるようでは全員が当たってしまう」


「と言いますと…?」


 ゆきむらさんが首を傾けながら聞いてくる。俺は机に両手をついて続ける。


「みんなでゴレゴスを4方向から囲むようにして攻撃をするんです。そうすればブレスに当たるのは1人に抑えることが出来るはず」


「なるほど…ブレスに当たってしまうのは仕方がないということですね」


「ああ、あのブレスは当たっても一撃で死ぬようなダメージじゃない。被害を受けた横の人が薬草を使ってすぐに回復してあげれば立て直せるはずだ」


「通常攻撃もそれほど脅威ではないし、もしヤバくなったら隣の人が薬草を使って回復してサポートしてあげればいいと思う」


 いつの間にか自分が敬語とタメ口を混ぜながら熱弁を振るっているのに気が付く。それでも、みんなは頷きながら聞いてくれていた。


「すごい!いい作戦じゃない!」


 アリサちゃんが手を合わせながら褒めてくれた。ゆきむらさんとマグナムさんもいい考えじゃないかと呟いている。だが、この方法は薬草を大量に使うことになる。お金もかかるので全員に確認を取らなければいけない。


「薬草を大量に使ってのゴリ押しだけど、みんなそれでも大丈夫ですか?」


 みんなの顔を見回しながら尋ねる。正直これ以外では作戦は思い浮かばない。賛同してくれるか不安だった。でも、


「ええ、勝つためだもの!」


「薬草なら大量に準備してきたので大丈夫です」


「そのための薬草です。ガンガン使っていきたいと思います!」


 余計な心配だったようだ。改めて最高のパーティだと思う。


 待っていろよゴレゴス…。今度こそお前を倒してやる!


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