序章
VRMMOを舞台に書いてみました。
これもなろう系を少し意識して書いてみたいと思っています。
楽しんで頂けると幸いです。
ネトゲ好きには特におすすめです!
夏。3年間やっていたバドミントンの部活も引退を迎えた。
この俺、東雲 空。本来なら高校受験に向けた勉強をしなければならない時期であるが、あることが俺の頭の中の70%、いや、80%ほど支配していた。あ、ちなみに残り20%は性欲ね。
頭の大半を支配しているもの、それが今週発売のフルダイブ型VRMMO、【ディサピアランス・オブ・メモリー】。略称として【DOM】と言われているものだ。
VRゲーム自体は今年から発売されているのだが、本格RPGが出るのはこれが初で、なんとオンラインゲーム。発表時のPVでは完成度の高さと衝撃に全世界が期待と注目を集めている。
まあ、オンラインかどうかは俺にとってはどうでも良かった。なにせ俺は中二病真っ盛り。剣と魔法によるファンタジー世界をこの身で体験できるなんて夢のようだ。
しかし、そんな俺はある重大な問題を抱えている。受験勉強?そんなのは問題じゃない。こう見えて俺の成績は学年5位圏内にいる優秀生徒なのだ。高校なんて選ばなければ落ちることはまず無い。じゃあ何が問題なんだよ。そう思うでしょう。まず、俺はVRを遊ぶためのマシンを持っていない。そして買うための金もあと少し足りない。このままではDOMを遊ぶことは出来ないって訳だ。
さてどうしたものか。
DOMを遊ぶ為にかかる金額は総額7万。貯金は現在5万しかない。さあ、残り2万をどう集めるかだ。
俺は家に帰ると同時に、母親の元へ向かい必殺の土下座をかました。
「お母さま、お願いします。2万円お小遣い前借りさせてください」
「無理」
俺のプライドと願いを込めた土下座はたった2文字で断られたのだった。まったく、慈悲もない。
だが、ここで諦めるような俺ではない。諦めたらそこで試合終了ですよ。安西先生の言葉が頭をよぎる。制服から着替え、電車に乗って街へ繰り出した。街の至る所にある自動販売機を漁る。ええ、自分でも分かっていますよ。まるで乞食のようってね。
結論から言うと自動販売機からの収入は微々たるものであり、2万円稼ぐには程遠い。しかし、自動販売機を漁る俺の哀れさからなのか、通りすがりの人になんと1万円を恵んでもらった。ホームレスにでも見えたのだろうか。憐れむような、悲しそうな顔をしていたのを俺は忘れない。それにしても、見ず知らずの俺にこんな大金をくれる人がいるなんて人生なにが起こるかわからないね。
何かを得るためには何かを捨てなければならない。それから俺は、学校が終わると同時にみすぼらしい服を着て街へ繰り出した。自動販売機作戦はやめ、ホームレス中学生を装い恵んでもらう作戦に切り替えたのだ。コツは補導されないように気を付けること。しかし、以前のように大金を恵んでもらうような人は現れないままDOMの発売日を迎えてしまった。でも俺は諦めない。不屈の精神を俺は持っているのだ。
発売から5日ほど経った。あと5000円足りない。ついに先日警察に見つかってしまったが、何とか逃げることに成功した。だが顔を覚えられてしまった俺は、もうこの方法は使えない。収入源が断たれた俺は、絶望しながら家に帰っていた。
しかし、奇跡っていうのは起こるもので、
「母さん明日からちょっと実家の方に3日ほど帰省するから。5000円あれば足りるっしょ」
俺は7万円を握りしめ、真っ先にゲームショップに向かった。明日からの食事?知るか!
これからどんどん展開していきたいと思っているのでよかったらブクマ等応援お願いします!