近所にある小さなお弁当屋さんのお話
私の家の近所には、ずっと前から小さなお弁当屋さんがある。
定番の唐揚げ弁当から洋食や中華まで、様々なお弁当のメニューが入り口の看板に掲載されていた。
夏には、パクチーなどの様々な多国籍料理を目玉商品として、可愛らしいポスターを店頭に貼るなどして営業を頑張っているようであった。
そして、夏も終わりに近づいたある日、リニューアルオープンの予定が書いてあるポスターが張り出されていた。
これからリニューアルオープンのために一時営業停止するとのことであった。
その後、改装中の大きな張り紙が貼られたまま数日がたった。なかなかリニューアルオープンしない。朝のお散歩中にそのお店の前を通るたび、いつリニューアルオープンするのかが気になった。
そんなある日、10月◯日、リニューアルオープン!! と大きく書いてある予告ポスターが張り出されていた。
そろそろオープンするのかとワクワクした。
リニューアルオープンの日を迎え、連日、人の出入りが激しかった。もともと人が少なく、いつのぞいても静かなお弁当屋さんだったのにこんなに人が入るなんて。見ているこっちまで少しだけ嬉しくなった。
しかし、その数日後。
なんと、お弁当屋さんの前の道路の工事が始まった。
お弁当屋さんの前の道路は、広くもなく狭くもなく、坂は少しあるが比較的普通の幅の道路であった。しかし、交通量が多く、バスも通る。
今回道路の工事となった場所は、お弁当屋さんを中心に前後50m程であった。
工事の範囲がピンポイントすぎる。
しかも、よりによってリニューアルオープンしたばかりのこのタイミングで工事が始まるとは、誰かのお告げがあるのか。
お弁当屋さんのすぐ横には、この小さなお弁当屋さんの割には大きい敷地の駐車場が設置されていた。
よりによって工事の範囲は、この駐車場にも入れなくするほどの工事であった。そのため、裏道から遠回りをしないとその駐車場には入れなくなってしまった。その裏道へと続く細い路地には、ひょろひょろした手書きの何ともむなしい字で書かれた看板が立てかけてあった。
私は思った。
改装中のために一時営業を停止している期間に道路の工事をしてあげれば良かったのに……かわいそう……と。
それから数日が経ち、その小さなお弁当屋さんは、今日も静かに営業をしている。
私は今だに一度も買いに行ったことがない。