表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

「カラ」と「から」と「kara」



以前、私は小さな居酒屋さんでアルバイトをしていた。




常連のお客さんが、楽しい飲み会を終え、いつものようにお会計をお願いされた。


私がレジを打ち、金額を伝えると、


そのお客さんは、


「領収書クダサイ。カラデ。」


と、酔っ払った赤い顔で、少し外国人のカタコトの日本語のような発音で言った。


私はとっさに、はいと、返事をした。


が、カラデ?とは…?


よくわからず、しばらくしてから私は


「カラデスカ?」と、聞いた。


すると、そのお客さんは、


酔っ払って呂律が回らない口調で、少し怒ったように


「カラヨ〜テンチョウニイエバワカルワヨ〜」と、面倒くさそうに言った。



私は、「カラ様ですか?領収書の宛名書きはカラ様でよろしいですか?」という質問をしようか迷ったが、お客様を馬鹿にしているようで、これ以上怒らせてはいけないと思い、


喉のすぐそこまで出てきた言葉たちを我慢して、しぶしぶ領収書の用紙を引き出しから取り出した。




そして、その領収書に金額を書こうと

すると、そのお客さんは、


「カラデ!ソノカミチョーダイ!」と、言った。


酔っ払いは声が大きくて困る。




私は、そのお客さんとの会話が常に疑問だらけで、?マークが顔に出ていたようだ。私の顔を見て、そのお客さんはさらに腹を立ていたようだった。



正直、領収書を紙だけ渡す、という意味がわからなかった。そして、これ以上質問を繰り返して聞いても面倒なだけであった。


それ以前に、「カラで」と言われ、韓国のアイドルグループかよ、と、突っ込みたくなった自分がいた。




そのお客さんは、


「ソノカミチョーダイ」と言って、プンプンと怒った顔をしながら白紙の領収書を持って帰って行った。




この日の帰り道、私は考えた。




私が気を遣って、


「白紙のままの領収書でよろしいですか?」と言い直せば良かったのか。




それとも、


素直に「カラ様ですか?」と聞き、お客様を怒りの頂点に立たせたほうが良かったのであろうか。






今回の出来事は、私にとっては究極の選択であった。がしかし、そのお客様にとっては、きっと気にもとめない会話なのだろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ