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雪国の少年とお姫様の話

「雪国の少年とお姫様の話」


もぐらくんとひまわりくんは、吹雪の中歩いています。


周り一面は雪だらけです。


ひまわりくんは言いました。


「もぐらくんぼくはもうだめだ。」


「氷になってしまいそうだ。」


もぐらくんは言いました。


「ぼくもそうだよ。」


「これ以上は歩けない。」


「どこか雪が止むまで休めるところを探そう。」


まわりをキョロキョロしていると、2つの光が見えます。


二人がずっと見ていると、その2つの光はもぐらくんとひまわりくんの前で止まりました。


プシューと鳴いて、扉が開き中からバスのシロクマの運転手さんは驚いた顔で二人に話かけます。


「こんな吹雪の中で何やっているんだい。」


「上着も着ないで歩いていたら、凍って死んでしまうよ。」


そう言うとシロクマの運転手さんは、ガハハハと下品に笑いました。


もぐらくんは言いました。


「今まさに二人で凍りそうになっていたところさ。」


ひまわりくんは言いました。


「この先に進むなら、ぼくらも乗せてもらえないかい?」


シロクマの運転手さんは言います。


「運がいいな。」


「この道はバスが1日2回しか走らないからね。」


「遅かったら氷像みたいになってたね。」


そう言うと、またガハハハと笑うと、二人をバスに乗せてくれました。


バスの中はすごく暖かく二人はとろけるような笑顔を向かわせながら喜びあいました。


シロクマの運転手さんは言いました。


「二人はどこに行くんだい。」


もぐらくんは言いました。


「僕らはこの先の町に住む丘の上の少年の家に行くのさ。」


「僕と同じもぐらのおじさんから紹介してもらって、今日はその家に泊めてもらう予定なんだ。」


するとシロクマの運転手さんは言いました。


「そうか、なら近くで止めてあげるよ。」


すると、シロクマの運転手さんはバスを寄り道させて、違う道へと進んで行きました。


バスが止まりもぐらくんとひまわりくんが降りると、シロクマの運転手さんは、使い古しの毛布を二人分渡しました。


「この土地は毎日このぐらい寒い土地だから、毛布にくるまってないと寒さに耐えられないよ。」


もぐらくんとひまわりくんは、シロクマの運転手さんにお礼を言うと、バスはまた元の道に戻って行きました。


そして、外からバスを見た時に、そのバスがシロクマの形だったのを見て、二人はニッコリと顔を見合わせました。


二人が周りを見渡すと、丘の家がすぐ近くに見えました。


二人は毛布にくるまりながら走って家まで向かいます。


二人が家のドアをノックすると少年が出てきました。


少年は言います。


「君たちは誰だい?」


もぐらくんは言います。


「僕らは、ここからずっと南の方からきたんだ。」


「宿で知り合った、太ったもぐらさんから君を紹介してもらったから、まずはこの手紙を読んでくれないか?」


そういうと、太ったもぐらさんからもらった手紙を少年に渡しました。


少年は、手紙を読んで少し笑顔を見せながら、二人に言いました。


「わかったよ。」


「もぐらくんの友人は、ぼくにとっても友人さ。」


「好きなだけ泊まっていくといいよ。」


そう言うと、二人を家の中に入れました。


家の中は、シロクマのバスと同じぐらい暖かいです。


もぐらくんとひまわりくんは、またとろけそうな幸せそうな笑顔で家の椅子にくつろいだように座ります。


少年は、暖かいコーヒーを二人に手渡し言いました。


「太ったもぐらくんは元気だったかい。」


もぐらくんは言います。


「元気。旅をしながら自由に生きてるよ。」


すると少年は笑いながら言いました。


「そうか。昔から自由奔放な性格だったからね。好きに生きられてよかったよ。」


続けて少年が言いました。


「君たちは、枝に実る小さな幸せの実を見にきたんだろう?」


ひまわりくんが言います。


「そうさ。太ったもぐらさんの話を聞いたら一目見ずにはいられなかったんだ。」


少年は言います。


「今でも、実はなるけど、まだ春は先だから時間がかかると思うよ。」


ひまわりくんは聞きました。


「春はいつくるんだい?」


少年は答えます。


「いつかはわからないね。僕は春のおとづれの気配ってやつはわからないからね。」


「でも、これだけ寒いんだから、まだ時間はかかるだろうさ。」


もぐらくんとひまわりくんは少し落ち込みましたが、少年は言いました。


「この家は今僕一人で暮らしているからいくらでも泊まってくれてかまわないよ。」


もぐらくんとひまわりくんは部屋の中を見渡しました。


飾りっ気のない部屋でしたが、棚にかわった枯れた実がありました。


もぐらくんは少年に聞きました。


「この枯れた実はなんだい?」


少年は答えます。


「これは、マツボックリと言ってこのあたりの木によくなるんだ。」


「これは、マツボックリにひもを通して首飾りにして、友達にプレゼントしたけど忘れていったものなんだ。」


ひまわりくんが言いました。


「じゃあ泊めてもらうお礼に、忘れものも届けてあげるよ。」


すると、少年は慌てながら言いました。


「それはだめだよ。今その友達とは会えなくなってしまったんだから。」


もぐらくんは言いました。


「どうして会えないの?」


すると、少年は寂しそうに話始めました。


「昔、子供の頃、毎日この丘に、この国のお姫様が遊びに来ていたんだ。」


「お姫様と僕は同じ年だから、この丘でよく遊んでいたもんさ。」


「僕らはなかよしだったんだ。」


「でも、大人になるにつれて、お姫様はどんどん美しくなっていった。」


「その美しさは、瞬く間にあちこちの国でうわさになるほどだった。」


「心配した国王様や兵隊さんたちが、お姫様を守るために、お姫様をお城の外に出さないようになってしまったんだ。」


「そのマツボックリの首飾りはそのお姫様の忘れ物なんだ。」


「お姫様に会おうとしたら、門兵さんに怒られてしまうよ。」


もぐらくんは聞きました。


「お姫様は元気なのかい?」


少年は言いました。


「わからないんだ。」


「でも、美しいお姫様のうわさを聞いた国の王様たちが、お城に毎日たくさん訪問して高価な贈り物やお金が届くようになった。」


「みんな、お姫様をお嫁さんにしたいんだってさ。」


少年はそう話すと、寂しそうな顔をしました。


ある日のこと、少年ともぐらくんたちは町を歩いていると、張り紙を見つけました。


張り紙の周りにはたくさんの人が集まっています。


張り紙にはこう書いていました。


「お姫様が心を無くしてしまった。」


「お姫様を笑顔にしたものには一つだけ願いを叶えてやろう。」


少年は驚いて言いました。


「なんてことだ!」


「あんなににこやかなお姫様が心を無くしてしまったなんて。」


もぐらくんが言いました。


「君ならお姫様を助けられるかもしれないよ。仲良しだったんでしょ?」


しかし少年は言いました。


「無理だよ。」


「毎日あんなに高価な贈り物とかもらっているのに心を無くしているなら。」


「僕にはそんな大したことはできないよ。」


少年ともぐらくんたちは丘の家に帰りましたが、少年はずっと落ち込んでいました。


すると、ひまわりくん種を取り出して言いました。


「僕の種には、食べた人の本当の願いを一つだけ叶えることが出来るチカラがあるんだ。」


「君が種を食べて心から願えば、お姫様を笑顔にすることが出来るよ。」


しかし、少年は言いました。


「違うんだ。」


「今僕が落ち込んでいるのは、仲良しだったお姫様に何もしてあげられない自分の無力さが情けなくて落ち込んでいるんだ。」


「その種を食べて、お姫様を笑顔にしてもそれは、僕のチカラじゃなくて、種のチカラだろ?」


「それでお姫様が笑顔になってもそれは偽物な気がするんだ。」


「それじゃ、ぼくの気持ちは晴れないよ。」


もぐらくんが言いました。


「じゃあ、君はどうするんだい?」


もぐらくんに言われて少年はずっと考え込んでいます。


そして、すくっと立ち上がり少年は言いました。


「僕には、何も持ってないけど、僕が今まで見た中で一番きれいなものをお姫様に見せてあげよう。」


そう言うと少年は大きくうなずきました。



そして、張り紙に書いてあった日に、少年はお城の近くの広場に行きました。


そこには、お姫様の張り紙を見て、たくさんの人たちがあつまっていました。


少年以外は、みんなお金持ちや王族の人たちばかりです。


みんな一列になりお城へ並び、お姫様に持ってきた品を見せて行きます。


すごく大きなダイヤモンドや、世界の裏側にある不思議な石、たくさんの変わった品、高価な品をどんどんお姫様に見せますが、お姫様はピクリとも顔を動かしません。


すごい長い列がどんどんと短くなっていき、最後は少年の順番になりました。


少年はお姫様を見て驚きました。


昔の太陽なような笑顔は消え失せたような、凍りついたようなつめたい表情をお姫様はしていました。


側近の役人さんが言いました。


「最後は町人か。期待はしてないが、見せてみよ。」


すると少年は役人に言いました。


「僕がお姫様に見せたいものは、今は見せられません。」


「明日、日が上がる前の時間に、僕のお伝えするところにお姫様をお連れしてくれませんか?」


役人は怒りながら言います。


「ばかなことを言うな。もし、姫様を外に出して姫様に何かあったらどうする気だ。」


「ほめさまは」この国の宝なのだぞ。」


しかし少年は、引きません。


「もし、僕のせいでお姫様に何かあったら、ぼくを煮るなり焼くなりすきにするといい。」


すると、今まで黙っていたお姫様が言いました。


「わかったわ。明日そこに行きましょう。久しぶりね私の友人。」


お姫さまの一言で、少年の言う時間と場所にお姫様が来ることになりました。


翌日、日が上がる間際の時刻、少年と兵隊たちの囲まれたお姫様は少年の決めた場所にきました。


役人さんは言いました。


「町人よ。何もないではないか?真っ暗だ。」


少年は言いました。


「もう少しで見えますので待っていてください。」


役人は言いました。


「しかしここはどこだ。この上なく寒いぞ。今にも凍えそうだ。」


少年は言いました。


「今上がってきました。お姫様見ていてください。」


お姫様が見ている方から、ゆっくり明るくなっていきます。


それの大きな明かりはゆっくりと上に上がり周りを照らし始めます。


すると照らされた雪たちが、キラキラと光り出しました。


どんどん、そのキラキラは一面に広がり、まるでダイヤモンドの海原のような景色が一面に広がり始めました。


役人たちも、あまりの美しい景色に歓声を上げます。


やがて明かりはお姫様の顔も照らします。


今まで寒く冷たかった頬に、朝焼けの明かりの温もりが伝わってきます。


明かりに照らされた頬がゆっくりとゆるんできて、やがてお姫様の表情がゆっくりと変わり始めました。


役人がお姫様の顔を見て驚きました。


お姫様は大粒の涙を流してぐしゃぐしゃの顔で泣きじゃくっていました。


役人が兵隊に命令します。


「町人を捕らえよ。打ち首だー。」


お姫様が役人たちに言います。


「お辞めなさい。私は不快で泣いているのではありません。」


「私は、この景色の美しさと、日の出の暖かさに感動して泣いているのです。」


「わたしは、今までお城に閉じ込められて、いろんな国の王様の見世物にさせられて、心を失っていたのです。」


「でも、久しぶりに外に出てこんなにもきれいな景色を見て、また昔のように心が取り戻せたわ。」


役人たちは言います。


「そんなことを言わないでください姫様。」


「我々は姫様の身を守るために、していたことです。」


「姫様の美しさは、この国の宝なのですから。」


すると、お姫様は言いました。


「ならば、今この日の出の景色の中、私に見とれていた人がおいでか?」


役人たちは、黙り込んでしまいます。


姫様が言いました。


「私なんかを宝にせずとも、この国にはこんなにも素晴らしい宝があるのです。」


お姫様は少年の手を取り言いました。


「ありがとう。やっぱりあなたは私の友人だわ。世界中の誰よりも私のことを知っていてくれている。」


「別れも言えずに突然いなくなってごめんなさい。」


少年は言いました。


「覚えていてくれたんだね。」


そういうと、マツボックリの首飾りをお姫様に差し出して言いました。


「やっと渡せるよ。忘れ物。」


首飾りを受け取って、お姫様はまた泣きましたが、今度は太陽のような笑顔を少年に向けました。


お城に戻って、役人は少年に言いました。


「町人…、いやこの国の恩人よ。」


「このたびの褒美は、一つだけ願いを叶えることだったが、何を叶えてほしい?」


少年はお姫様にニッコリ微笑んで言いました。


「僕の願いは、昔のように自由にお姫様と遊んだりできるようになりたいだけです。」


役人は、お姫様を見ると、お姫様はニッコリ笑っていました。


役人は言いました。


「よかろう。ではその願いを叶えよう。」


そして、お城に閉じ込められていたお姫様は自由に外に出られるようになりました。


ほかの国からの贈り物も受け取らなくなりました。


それから何日か経った日、少年はもぐらくんとひまわりくんたちに言いました。


「君たちのまっていた枝になる小さな幸せの実が実り出す頃がきたようだ。」


もぐらくんとひまわりくんは喜んで、少年に教えてもらった枝の下に行きました。


もぐらくんとひまわりくんの目の前で、枝に小さな実がどんどん大きくなっていきます。


もぐらくんが言いました。


「これが、太ったもぐらさんとクロネコ先輩が見とれた「小さな幸せの実」か。」


ひまわりくんが言いました。


「たしかに、見とれてしまうね。」


見とれていると、少年はお姫様をつれてやってきました。


そして、4人でお姫様が持ってきたお弁当を食べながら、その実が消えるまで見ていました。



そして、もぐらくんとひまわりくんが次へ旅立つ日が来ました。


バスを待っている時に少年は言いました。


「太ったもぐらくんの言う通りだった。君たちとの出会いが僕にとって素晴らしい出会いになったよ。」


もぐらくんとひまわりくんが不思議そうにしていると、少年は太ったもぐらくんの手紙を見せてくれました。


その手紙の最後にはこう書いてありました。


「追伸 彼らとの出会いが君にとって特別な出会いになるであろうと思うので、彼らを大切な客人として扱ってくれ。」


もぐらくんとひまわりくんは驚いたあと、ニッコリ笑って少年に微笑み返しました。


そして、もぐらくんとひまわりくんはシロクマのバスに乗ってまた、南の地へ旅立ちました。


少年と手をつなぐお姫様に見送られながら。



つづく。


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