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満月の夜、鏡の前で  作者: 瑠珠
2/12

2.変身



顔をあげると、呆然と私の姿を見つめる幼馴染たちがいた。そんなに変わってるのかな…


「えっ彩智…」

「イケメン!!さーちゃんって男になるとこんなにイケメンなんだね!」

「さーちゃんすごい!本当にかっこいい!」

キャーと黄色い声を上げながら顔をまじまじと覗き込んでくる。


「恥ずかしいっていうか騒いでる場合じゃないでしょ…これどうすればいいの…?」

「100%あの願い事のせいだよね。」

「彩智何お願いしたの?」

「えっと」

「あっちょっと待って!あそこで願ったこと、本人の口から他人に伝えちゃいけないんだって。だから言わない方がいいかも」

春がメモを読みながらそう話を遮った。


「了解。でも私男になりたいなんてこと1つも願ってないんですけど…」

「代償として男になったとか…?」

「なんで私だけそうなるの」

「なんかその声で『私』って言うとちょっと気持ち悪いね」

「うっさい」

へへへっと笑った春を睨んだ。


「それより中入らない?ずっと外だと寒いし風邪ひくよ」

蒼生の提案により校舎内に戻ることになった。


私は体勢を整え立ち上がる。立ち上がると身体の違和感がもっと増した。何よりも目線が高い。何センチ伸びたんだろう。そして大きめなサイズだったはずのパーカーは今の私にとってはぴったりかちょっと小さいくらいになっていた。もちろんジーンズはつんつるてん。履いていたスニーカーはさっきまで本当に履いてたのかと思うほど小さく感じてとても窮屈である。


そんな私の姿を見て

「今日スカートとか履いてなくて良かったわね」

と蒼生がぼそっと呟いた。



校舎内へ入るとあの鏡が見えた。鏡の前で立ち止まり、まじまじと今の私の姿を見つめる。

「ほんとだかっこいい…」

みんなの言ってた通り、そこには爽やかだけどちょっと影のありそうなイケメンが立っていた。

顔立ちには私の面影が結構残っているので私の兄だと言っても通じそうだ。実際にも全然顔の似てない兄がいるんだけど、その兄よりも兄らしい気がする。

髪は男にしては少し長めで、目に少しかかる長めの前髪が影のある感じを演出していた。私って男になったほうが色気があるんだなぁ。鏡に映る自分の立ち姿を見てちょっと嫉妬した。背だって高いし。

前は私の方が少し小さいくらいだったのに、今は蒼生の頭が私の胸あたりにある。元が160センチくらいだったから今私は180くらいかな…?

でも蒼生の頭が私の胸に当たることはない。

…一応人並みにはあったのにな。あれ、もしかしなくても私、服脱いだら男が女性物下着を穿いてるやばい絵面になるんじゃないか………考えないようにしよう。



「ねえこれからどうするの?そのまま家に帰ってもまずいだろうし…」

階段の踊り場でたむろしているなか、花音が切り出した。


「たしかに。祝日だからどうせみんないるだろうし…」

「ねえ、私の家来ない?私んち今お母さんが社員旅行行ってて1人なんだ」

「よしじゃあとりあえず春の家に行きましょう」


春の家は小学生の頃両親が離婚して父親が出て行って以来母と2人暮らしだ。悲しかっただろうし、今も苦労しているはずなのに春は弱音1つ吐かずいつも明るく振舞っている。でもたまに春がかなしそうな目をしているのを私は知っている。


「お邪魔しまーす」

「どうぞー」

「あんた1人なら言いなさいよ。泊まりに来てあげるのに」

「へへっ別に大丈夫だよ3泊4日って言ってたし」


春の部屋に全員集まったが、いつもより狭く感じる。

「なんか1人男子混ざってるって変な感じだね」

「なんかごめん…」

「いやっそんなつもりで言ったわけじゃないよ!ね、ねえさーちゃん今の服きつくない?お父さんの服が余ってるから貸すよ。ちょっと来て」

「えっ悪いよそれは」

「いいのいいの」


引きずられるように私は春に連れられ、別室にやって来た。

「…ごめんさーちゃんが男になりたいって願ってないのならそうなったの私のせいかもしれない」

部屋に着いて開口一番春はこう言った。

「え、なんで?春は私のこと男にさせたかったの?」

「いや、そうじゃないけど一番最初にこの噂確かめようって言ったの私だし、もしかしたら私の願いの代償がさーちゃんにかかっちゃったのかもしれないし…」

下をうつむきながら独り言のようにつぶやく。やっぱり春は無理に明るく振る舞ってるだけでそんなこと考えてたんだ。


「でも悪意があったわけじゃないでしょ?それに私だってその噂確かめたくてずっと気になってたからそのうち春に言われなくても行ってたかもしれないし。」

「でも…」

「全然気にしてない…っていうのは嘘になるけど、おじさんとかになったわけではないしイケメンだしまあなんとかなるでしょ!春らしくないよそんな弱気で」

「…ごめんね、ありがとう。わかった!私がさーちゃんの謎を解明してやる!」

春はぱっと笑顔になり、私の手を掴んでそう言った。

「うん。頑張ろうね」


このときは軽く考えていて、あんなに大変な日々を送ることになるなんて考えもしなかった。


私は上のパーカーはこのまま着れるだろうということで、ジャージのズボンだけ春のお父さんのものを借りて部屋へ戻った。


「まずあの噂についてまとめるわよ」

蒼生を中心に話し合ったところ、いくつかわかったことがあった。

まず、願い事は自分の口から他人に言ってはいけないということ。これはさっきも春が言っていたが、なぜ言ってはいけないのかはわからないそうだ。次に、願い事の取り消し方や代償の取り消し方は今のところわからないということ。


「じゃあ私はこのままってこと?」

「うーん…なんとも言えないね。ずっとそのままじゃなくて戻ったりするのかな?」

「てゆうかなんで男になったの?」

次々と疑問に思ったことが口からでてくる。


「願い事は自分の口からは言えないってことは、他人が察してその内容を言うのならいいのかな?」

「それならいいんじゃないかなー」

「それなら私、花音の願い事言える」

「ちょっ」

「わたしもー」

花音が真っ赤になっているなか春も手を挙げる。


「?なんの願い事したの?」

「相変わらず彩智は鈍いわね…」

「まあでも花音の願い事がさーちゃんに関係するなんて考えられないし…」

鈍い鈍いっていつも言われるけどそんな頭ふわふわな自覚はないんですけど…



「原因はともかく戻る方法を見つけなくちゃ」

「そうだね…」

「とりあえず今日はもう遅いし私の家にこのまま泊まってまた朝考えよう。明日というか今日は祝日で休みだし」

伸びをしながら春が言った。


「そうだね。ごめん私のせいで」

自分が悪いわけではないけど私が男になったせいでみんなを振り回しているみたいで申し訳なくなった。


「なんで彩智が謝んのよ。というか彩智、私たち襲わないでよね」

「はっ!?そんな、するわけないじゃん!私女だし!!」

「冗談に決まってるでしょー」

冗談で蒼生がにやにやとしながら言った言葉に本気で狼狽えた。そんな必死になって否定することじゃないじゃん、どうしたんだろう私。


「もう、寝るっ!」

なぜか顔が真っ赤になってしまったのでそれを隠すために春が用意してくれた毛布を頭から被った。


その日はそのまま眠りについた。





次の日、私の体は元の女の体に戻っていた。履いていたジャージはぶかぶかだ。

「ざーぢゃーんよがっだぁぁ」

春は泣きながら誰よりも喜んでくれた。


「一件落着、って言いたいところだけどまだ本当に大丈夫なのか不安だよね」

春の言う通り世にも奇妙な事が起こっているわけで、油断は禁物だ。


「とりあえず彩智、スカートは禁止ね」

「はい…」

楽だからっていう理由で私服がワンピースだらけの私にとってはちょっと辛い。





その後そのまま解散して、次の日は学校に何事も………ないわけなく登校した。


「…兄ちゃんにばれた」

「はぁ!?」


私、教室に着いて開口一番爆弾発言しました。

今書けているのはここまでです…


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