白い部屋
まず、見えたのは白い天井だ。次に見えたのは白い壁。その次に見えたのは白い床。そして自分は白いベッドで横になっている。
ここはどこだろう、とか、よくもこんなに白いものを用意できたな、とか思いつつ身を起こす。
あれ?私は誰だろう...
慌てて顔に触れる。こいつは誰だ。私はこんな男を知らない。いやこれは私だ。確かに手からは顔に触れた感触があり、顔には手が触れている感触がある。
高い鼻、耳も覆うほど伸びた頭髪、方方に伸びた無精髭、手からの感触ではこれぐらいの情報しか得られない。
そうだ、鏡だ。鏡を見れば...
あたりを見回してみるが、眼に映るのはまばゆいばかりの白だけだ。
床や壁に映りはせんか。早速壁に張り付いてみた。しかし期待とは裏腹になにも映らない。シーツを引っぺがし擦ってみるがなにも変わらない。もともとそういう材質なのか、はたまたわざと映らないようにしているのか。床も同じであった。
再びベッドに横になる。こういう時には目を瞑る、するとなにか思い出...さない。驚くほどなにも思い出さない。
自然と落ち着いて来た。
そういえばこの部屋には照明が見つからない。こうも明るいのは不思議でならない。がこの疑問は直ぐに解決した。
壁自体が照明なのだ。なるほど、道理でなにも映らなかったのだ。一人で腑に落ちていると、壁の一部が凹み、スゥーっと横に開き、白衣姿の男が現れた。随分と背が低い。160cmもないだろうその男はにこやかに
「お目覚めになられましたか」