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傭兵の為に鐘は鳴る  作者: すいきょう
第二章 或る旅人達の協奏曲
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新人冒険者編④ アトル、聴取する

「ほら、ポヤポヤせず、おばちゃんの後片付けの手伝いしろ!お前らも食ったんだろ!?」

「しっかり運べよ!おっちゃんの善意で使ってもらってんだからんなっ!」

「チッ、サル頭の残党が出てきたぞ3匹だっ!俺が見ててやるからお前ら行けっ!」


アウトロー組織の三下アトル君。絶賛稼働中。


「坊主・・そんなこき使わなくても・・」

「いいんだよ。あいつら、なんらかの罰を受けたがってるんだから」

「えぇー・・」


「そうです!何でもします!使ってやってくださいっ!」ラベル

「お世話になってるし。お願いします」テプラ

「ああ、気にしないでくれよ。俺らがやりてーんだから」タッカー

「うんうん。おれ力だけはあるから・・」ドンコウ

「私は赤ちゃんみてるくらいしか出来ませんけど・・」ライラ


新人冒険者5人が一斉におっちゃんに詰め寄る。


「お・・おおぅ・・・そうか、それならいいんだ」

おっちゃんもタジタジだな。


「おらっ、ボスの許可が出たぞ!キリキリ働きやがれっ!

ラベルは水汲み!

タッカーとドンコウは御嬢さんのお世話だっ!

テプラは坊ちゃんのおやつを用意しろ!

ライラは赤ちゃんをあやすんだっ!


ゆーこぴー?」


「「「「「 あ・・・あいこぴー!! 」」」」」


ふふ。

仕込んでみた。



サル頭の襲撃から丸一日。ドーマまでは後半日といったところか。

今日はここの退避所で泊まって、明日正午前にはドーマに着く。


その間、例の5人はなんか居場所が無さそうに落ち込んでいるので、要不要にかかわらず仕事を指示してみたら、熟してる内にちょっとづつ元気が出てきたようだ。


丸一日ほどでも、見てると大体人となりと人間関係が解ってくる。

話を聞いたところによると、この5人は同じ村の幼馴染みだということだ。

子供のころ、村を襲った魔物から命がけで村を守ってくれた冒険者に憧れて成人になるとともに冒険者を志したらしい。

テンプレートというなかれ、実際にも結構多いのだ、そういう志望動機。


まあ、成人を迎えても次男三男次女三女に分け与えられる田畑などないという、世知辛い理由もあるのだろうが、志望動機に良いも悪いも無い。

特に目的も無く冒険者になって、脅威度Aの魔物を片手間に狩る冒険者だって、いる所にはいるのだから。


(・・・しかし、ベタだなぁ)


そして、『さあ俺たちの冒険はこれからだ!』と盛り上がったはいいが具体的に何をしていいかわからない。とりあえずギルドの依頼版で簡単な仕事を探していたところ、件のバイトなる冒険者に声を掛けられたらしい。


「初心者にぴったりの仕事がある」と。


本人が言うにはフリーの冒険者で、街道沿線を狩場にしている中々のベテランだと名乗ったらしい。

流石に怪しみはしたがギルドで正式に依頼も出ている常設討伐依頼で、冒険者同士の兼ね合いの為、討伐申請書の必要な討伐依頼だったが、ギルドの受付のオジサンにも「ベテランが付くなら・・」と許可されたのだとか。


(・・・)


それで、そのバイトという男にリーダーになってもらって申請書を出し・・・この森まで来たそうだ。


「んで、サル頭の群れと会って、そいつはお前らを置いて逃げたって?」

「はい・・。最初は森の周辺でって話だったんですけど、急に森の中に行こうって言われて・・」

ラベルが答えた。


ラベルは5人のまとめ役みたいな立ち位置で、濃い茶髪の中肉中背、全体的な印象は実にプレーンで、なんか漫画かゲームの主人公体質みたいな男だ。そして最初に俺に叩かれた男でもある。

なかなか責任感の強い男で、街道に魔物を呼んだことや仲間を危険にさらしたことに強い責任を感じている。


「ふむ」

いろいろ腑に落ちないが。それは後でいいか。


「なにか変わったことが無かったか?森に入る時とか」

「え・・なにも・・・気づきませんでしたけど・・」

ラベルが首を傾げた。


「あっ」


声をあげたのは小柄で明るい茶色の髪をポニーテールにした娘テプラ。

住んでた村では猟師の娘だったらしい。冒険者としても弓を扱うみたいだ。しかしというか、なのにというか、それでサル頭の群れに出合い頭の遭遇戦って・・・ちょっと職種考えた方がいいんじゃないかな?


「なんだ?」

テプラに問いかける。

「・・・あんまり関係ないかも・・?」

「別に構わない。何か気付いたことがあるのか?」

「えっと・・森に入る時なんだけど、なんていうか、誰か先に来てたような跡があった・・かな?」


「誰かって・・誰だよ?」

そう言ったのは、痩せた赤髪猫目の男タッカー。

テンプレで言えば、テプラと共にパーティーのムードメーカーと行った所か。ナイフを両手に素早さで戦うタイプ・・になりたいらしい。希望かよ。


「え・・わかんないよ。なんとなくなんだよ。なんとなく」

「なんだよそれ」呆れるタッカー。

「どうしてそう思ったか言ってくれ」

俺がそういうと。


「えっと・・あの・・そ、そう、木の枝が折れてたの」

「はぁ?」タッカーが声をあげる。

「落ちてる枝がね、踏んだみたいに。あ、あと木の根のコケが捲れてたよ」

「あのサル頭共が歩いた後とかじゃねぇの?」

タッカーが興味無さそうに言った。

「そりゃ・・そうかもしれないけど、先に入った冒険者がいるのかなって思って」


「・・・多分、そうなんじゃ、ないかな」

そう言ったのはドンコウ。

なんというか・・善人性が溢れて漏れ出してる感じのつぶらな瞳の金髪の大男。パーティーに一人はいそうな心優しき力持ち。死亡フラグに気を付けようね。ほんとに。


俺が目でドンコウに話を促す。


「あのサル頭と遭遇した時に、みんな、見なかった?」

「なにを?」タッカー

「んー、ビックリするのに精いっぱいで何にも覚えてない」テプラ

「僕は位置が悪かったからかな?特に何も見てないよ」ラベル


「そう、たしかドンコウが最初にサル頭に出会ったんだっけ?」

そう言ったのは村の薬師の娘ライラ。

全体的に細っこいクラス委員長みたいな感じの黒髪の娘だ。眼鏡はかけてないけど。

村の薬草士の娘で薬草に詳しいらしい。なんでも毒に対する耐性があるんだそうだ。特殊能力だな。それに祖母が冒険者で簡単なものだが魔術の覚えがある人だったらしい。3年かけてそれなりに教えてもらったそうだ。


「うん、実はね、あの時、バイトさんと並んで歩いてたんだけど、サル頭の群れに出くわしたとき、あの群れ、なにかに群がって、食べてたんだよ。・・・口が真っ赤だったんだ・・」ドンコウが顔をゆがめる。


「え・・それって・・・」ラベル

「う・・うん・・・僕らの前に来てた、冒険者かなって」

「うぇぇ」タッカーが顔をしかめる。


ラベルもテプラもライラも顔が真っ青になった。


「バイトさんも、一緒にそれを見て、急に走りだしちゃったんだ・・」

「そんなの見たら、逃げ出したくなる気もわからなくもないけど・・」

そうライラは言うが、

「でも荷運びように借りた馬を、一人で乗って逃げちゃったんだよ!?」

怒るテプラ。

「それにライラを突き飛ばしたのは許せない!(許せねぇよ!)」

テプラとタッカーが同時に言った。

「そうだよな」とラベル。


「そもそもお前ら、なんでこんな離れた森に来たんだ?」

ここはドーマから二日も離れている。

ドーマの近くにはここと同様の森がいくつかある。


「ここの森なら他の冒険者も少なくて獲物の取り合いが起きないって。・・どうせなら、野営の練習もしとこうってバイトさんが・・」とライラ。


「・・・なるほど」


空から蓋が降ってきたかな。

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