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傭兵の為に鐘は鳴る  作者: すいきょう
第一章 或る転生者のお仕事
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葬送

砂埃が晴れた元花畑には、なんとも漫画チックな直径10メールほどのクレーターが出来ていた。

まるでどこかの格闘漫画の様だ。


はてさて、俺が出来立てほやほやのクレーターに近寄ってみると。


「うへぇ・・」


クレーターの底に、見事になんか白と紫の平べったいモノがあった。

・・・見ていて楽しいモノじゃないな。


『オンデル名物クモせんべい』

・・売れんだろうなぁ。


埒も無い事考えつつ、土山のクーの下へ行く。

今の魔法攻撃で力を使い切ったのだろう、ふらふらと俺の足元まで来ると蹲ってしまった。


「よくやった。がんばったな。えらいぞ。助かったよ」


何度も頭を撫でてやる。


「ぐぅぅ」

自慢げだ。


よっと。

聖剣を地面に刺し、クーを抱き上げたものの両手が埋まるな。背嚢も無いし。


「ワン」


俺の影からフォッサが出てきた。

使い魔フォッサの固有魔法【影隠れ】。影に出入りできる魔法。結構レアな能力らしいね。この能力によって、ずっと俺の影に入っていてもらった。いざという時の切り札にするために。


「ワン」

クーを嘗めて、自分の背中を揺する。


「ホントに賢いな」


クーをフォッサの背中に乗せた。クーも居心地がいいのかガシッと張り付いている。どことなくフォッサも嬉しそうだ。ビバ毛玉動物!


さてさて、

最期のお仕事だ。


俺は剣を手に取ると、クレーターの下へ降りる。


「お前、まだ生きてんだろ?」


なんか平べったいモノへ話しかける。


(キヅ イテ イタ カ・・)


「お前の【力】が抜けていない。死んだふりして時間稼ぎか?」


胸部のある一点以外、無事なところは無い。

この状態からでも再生できるという事か。


(シンパイ セズトモ ワレハ モウ シヌ)


信用ならん。


(ヨリ ツヨイ モノニ クワレル ノハ トウゼンノ コト。ニンゲン ダケガ ソコニ イミヲ モタセル)


「それはそうだが」


生きるのにも死ぬのにも、意味を持たせたいのは人間だけだ。

ん?

他の動物には聞いたことないな。

蜘蛛はこう言っているが、

自分の生死に意味があるはずと思ってる動物もいるかもしれない。


ホントのところはどうなんだろう。


(ホントウニ ラチモナイ イキモノダナ ニンゲントハ)


考えを読まれたか。


「そうだな」


あれこれ考え、悩み、時に泣いて、時に笑う。

生きる事だけに必死なら、こうはならない。


(いや・・・前の俺は・・・どうだっただろうか)


残された時間を知り、必死で生きたつもりだが、泣いてたし笑ってた。

人間って、ほんとに変な生き物だ。


「ホントにそうだ」


必死に生きてる。なかなか言いえて妙な言い回しじゃないか。気が利いてる。


「じゃあな」


俺は剣を振り上げ・・


(サラバダ ツヨキ ケモノヨ)


アラヴァは死んだ。



―――




今回の件の死者は、クロワト村村民61人、“紅の旗”傭兵団5人。

行方不明者は死亡者としてカウントされた。


アザレア騎士団と黒華騎士団も掃討最中に何人か重傷を負ったらしいが、大事にはならなかったそうだ。


そして今、


葬送の火が上がっている。


この世界にはアンデッドがいるので、土葬は行われない。特殊な葬送儀式をすればその限りではないが、そんな儀式が出来る者はこの場にはいない。


村から少し離れたところにある川べりの焼き場にて、火葬が行われる。通常なら大量の薪が必要になるのだが、今回は“死者を送るための木”と言われているモームの木の薪を最低限と、アザレア騎士団の魔術士による葬送魔術によって執り行われることとなった。


オーダ、リーノルト、ベッツァー、ラドニー、ウリトンもここに葬されることとなる。

傭兵はどこで死ぬかわからない。どこで土に還るかわからない。それでも墓があるだけマシ、そんなものだ。

5人とも親類縁者がいないので、遺品の一部とその名をアザレアの傭兵団墓地に入れることになる。


焼き場には多くの人々が訪れていた。


泣く人。

偲ぶ人。

悔しさに震える人。


「ううぅ・・ぐうぅ・・」


クリュネも泣いている。

いつもは小うるさい団員達も、今は静かに黙祷している。


さよなら、オーダ。

さよなら、リーノルト。

さよなら、ベッツァー。

さよなら、ラドニー。

成仏しろよ、ウリトン。


俺の虎の子その2・クッキースティックを火にくべた。まあ5人で食ってくれ。


ほんと、

何度やっても、

慣れねぇな、これは。


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