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傭兵の為に鐘は鳴る  作者: すいきょう
第一章 或る転生者のお仕事
4/87

準備

<七日昼、クロワト北西10キールオンデル森内 超20メールノ変異種マダラグモトオモワレル魔物ト遭遇 他敵数不明 ウリトン・ベッツァー・ラドニー負傷 クロワト退避 応援求ム>


おおう。


思ったより大変だこりゃ。


受け取ったくしゃくしゃの伝書を(ヒゲモジャが握りしめてやがった)、思わず何度も読む。なんで電報風なんだろう?


(20メールって・・・縦か?横か?)


いやそんなことはどうでもいい。20メール立方で考えよう。1メール=大人の歩幅位だから大人20歩分以上のクモか・・しかも変異種って。それも数不明。そんなクモ聞いた事ねえよ。大森林の方から流れてきたのか?


何よりやばいのが、村から北西10キールってほぼ森の外縁部じゃないか。村から歩いて2時間かからない。クロワト村、存亡の危機。


「バンダ。今、舎にいる班は?」


「ええっあぁへいっ!確か、ワッケスんトコとバウロ、ザイケンでさぁ」


とりあえず、バウロ確定。


「ザイケンとこは・・・昨日がアガリか?」

「へい。今日は中日ですが、昨日シコタマ呑んで部屋で潰れてまさぁ」


うん。まあ仕事明けじゃ仕方ないか。でも起こそう。


「ワッケスは・・・明日からか」


「へい。輸送警護でさぁ。ヘルマン商会だから外せませんぜ」


ヘルマン商会は大口顧客だ。穴は開けられない。傭兵は信用第一。


数が不明のクモ相手なら欲を言えば4班30人、最低3班20人以上で当たりたいが、オーダ班6人のうち3人が負傷。現状動かせる班はバウロ班6名、ザイケン班は・・・移動中に酔いも冷めるだろ。


「バウロに手の空いてるソロ組も混ぜて20人ほど編成させろ。予備隊も使っていい。ザイケンらを起こせ。あと、遠征準備を女将さんとナー姉に頼んどけ。ルミネルにギルドへ連絡を入れさせろ」


ナチュラルボーン粗忽者バンダだが、何故かこういう指示は、忘れず、順序良く、そつなく熟す。


ただ、絶望的に説明が下手なだけで。(正味の仕事はトントンか)


はよ行けと、バンダを放つ。



遭遇場所が村に近い以上、急がないと拙い可能性がある。無いと思いたいが、撤退するオーダ班をクモがつけてる場合も考えられる。怪我の程度は分からんが負傷した3人を担いで撤退するのはどうしたって時間が掛かるし、周辺警戒も甘くなる。そもそも魔物は臭いでつけてくる場合も多い。


最悪、援軍が着いた時には村壊滅だってありうるし、防衛戦・撤退戦の真っ最中ということもある。以前、魔物は違うが魔物群に対する似たケースが5回ほどあった。3つは被害はあるものの何とか防衛成功。1つは村半壊、残り1つは村全滅。


しかし、20人を超える人間などそう簡単には動かせない。備えてあるとはいえ、金も兵站も湧いてくるわけじゃない。往復4・5日の遠征だってそれなりの物資がいるし、傭兵3隊以上の団体行動にはお上への申請がいる。ご当地ルールというやつだ。


それに、数不明のデカグモ討伐など、辺境の村に代金を捻出出来るわけがない。おして行けば丸損することになる。


そこで【冒険者ギルド】に話を通すことになる。

ギルドで緊急討伐案件にしてもらうことで、公案件扱いになってお上からの討伐助成金が下りる。無論、脅威度C以上に認定されないとダメだが、今回のケースならば問題ないだろう。お上への申請も併せてやってくれるし。


人手がギリギリであるかも判断できないが、今回の件で冒険者ギルドで人集めすることは考えられない。どうせおっつけ騎士団も来るだろうし。我が傭兵団“紅の旗”のメンツの問題もある。獲物が何だろうと、自分のケツも拭けない傭兵団なんて誰が頼る?


手早く、オーダへの指示書を認め、クリュネの使い魔ムッカに届けさせる。

手紙があるので【引き戻し】といわれる主人の元への瞬間移動は出来ないが。


無事届けてくれよ。


―――


バウロ班6人、ザイケン班6人、ソロ組7人、後衛予備隊員3人の計22人。

後、冒険者ギルドから、監査管と治癒術士2名が派遣される運びとなった。


正直、ギルドは渋った。


敵勢不明の20メール超えのクモに対し、「1個小隊にも満たない、少数の討伐隊で挑むなんて」と。冒険者を連れていくべきだ、と。


でもまあ、そこはそれ、傭兵家業、舐められたら終わりだし、看板は怖くてなんぼだし、身内のことだし、「俺も出る」と言ったら、笑顔で納得してくれた。


そういうわけで、

【《紅の旗》傭兵団】予備隊員 兼 傭兵団経営旅籠【紅の旗亭】名誉支配人


アトル・ラインレッド


もうすぐ9歳。


出陣!

と相成ったわけだ。


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