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傭兵の為に鐘は鳴る  作者: すいきょう
第一章 或る転生者のお仕事
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戦闘

しかしまあ、やることは変わらないし、時間もない。


糸を切り払った予備の剣をその場に突き刺す。代わりに背負っていた愛用の聖剣(腰にさすと引きずってしまう)を抜く。やっぱり使い慣れてる剣の方が良い。


「フォッサ」

「ワフォン!」


ほんと、解ってるなぁ。


剣に魔法の炎が灯るその前に、動く。


避難所の屋上まで、白い膜のないところを選んで外壁を一気に駆け上がると、クモが反応する前に一気に間合いに入って真っ赤なクモの片側8本の脚を切り飛ばす。


足元がお留守ですよ。

一回言ってみたかった。夢がかなった。しかし・・・


(なんか多くない?クモって16本脚?)


切断面から吹き出る紫の体液が掛からないように、クモの反対に回り込んでもう8本。


(ふっとい脚だなあ。ポーレさんの胴ほどあるかもしれない。この脚、女将さんいるかな?)


離れざまに、バンダ愛用の盾ほどもある、クモの頭胸部と腹部を切断し・・・・


消えた。

唐突に。


おお、クモがパッて消えた。


周辺に逃げたわけじゃない。


・・・まあ、消えてしまったんなら仕方ない。


屋上の淵を蹴って、加速をつけて地上の結界に迫ってる2メールのクモの一匹に接近する。


とりあえずクモの背中(腹部?)にドロップキック着地すると、頭胸部が仰け反ってきたので、背後から、わさわさとしてる手・・じゃなくて脚に引っかけられないように、頭胸部を縦に断ち割ってみる。外殻、ちょっと硬めか。斬線考えないと俺の聖剣が折れるかもしれん。


さて次のクモを・・・


経験上、昆虫系の獲物の時は、刺突は悪手だ。(3匹目)痛覚がないのか、痛みで怯まない、止まらない。神経系を一撃で破壊できるならともかく、剣を引き戻す動作が必要なため隙も生まれるし、外殻が硬ければ引き抜くのも骨だ。(4匹目)良手は欠損を狙った斬撃か、広い面を捉えたぶん殴り。最善手は魔法。魔法はずるい。俺もいつか覚えてくれるわ。みてろ魔法め。(5匹目)


6匹目のクモが前脚の鈎爪を振りかぶったので、体制を低く懐に入り、頭胸部と腹部の間に剣を突き入れ引き斬る。今のは位置的に突きでも仕方ない仕方ない。しかし急所が今一つ解らんな。とりあえず、斬りやすく柔らかそうな場所を斬ってみてるが、なんかまだビクビクしてる。


体液が降ってくるので、急いでその場から離れる。染みになったら、女将さんに怒られる。リーノルトも喧しい。


離れた場所から寄ってきたクモがやっとご到着の様だ。


おお、跳んだ。


幅跳び10メートル級ジャンプだ。オリンピックに出れるな。


クモが着地する瞬間、クモの下をすり抜けるようにして、クモの腹を縦一文字に割く。気持ち悪いので切り口は見ない。こんな仕事してるけど、ほんとはグロイの苦手なんだよ。ホントだよ。


(しかし・・・なんのために跳んだんだろう?)

カサカサ走ってきた方が早いし隙も少ないだろうに。


疑問は尽きないが、次のクモを・・・・


また跳んだ!

流行ってんのか!?


今度は、水平ジャンプじゃなくて、山なりのジャンプだった。

最高到達地点で、クモはこちらに尻の先を向けてきた。


まさか!


・・・屁をっ!?


・・・そんなわけないな。


ある意味予想通り、クモは尻から糸を飛ばしてきた。


・・・・さながら投網のように。


えー・・普通、クモって一本ずつ糸出すんじゃないの?

このクモの尻はそんな複雑なことができる尻なんだろうか。

ある意味すごい。このクモすごい。尻すごい。


クモが網を発射したその時にはもう、俺はそこにはいない。いるわけない。いくらなんでも予備動作が解り易すすぎる。


跳んでるクモの下を潜り抜けるようにダッシュした後、切り返して着地寸前のクモの背後に突撃する。

背中から頭と腹の節目の外殻の隙間に剣を突き刺し、外殻にちょっとつま先をひっかけて、体ごと回転するように斬る。この剣は直剣で反りがないため、斬るのはあまり向いていないが、刃物というのは刃の角度と速度で斬るものだ。


そのとき後方からなんか飛んできた。いや、飛ばしてきた、か。

後方にいたクモが、口からなんかドロドロしたものを吐きつけてきた。ヤダ怖い。キモイ。


二つに斬り別れたクモの背を蹴って、上方に跳んで回避。


毒吐きグモ、俺の落下地点に陣取りやがった。

口をわさわさして待ってるよ。

回避しようにも、俺は落下中だ。


(なんで、待ってんだ?獲物が回避できぬ空中にいる時こそ毒吐かないと・・)


そんなことを考えながらも俺は剣を逆手に持ち替えると、刃を下に思いっきり投げつけた。

剣が毒吐きグモの顔面のど真ん中に突き刺さり頭胸部を突き抜け地面に突き刺さると同時に、クモの上半身が爆発したかのように破裂する。


ぎゃあっ!


なんか飛んできた!


大部分は羽織っていた外套で防いだが・・・

ズボンの膝から靴にかけて、なんか変な液でドロドロになってしまった。


(うひゃあ、・・・泣きたい)

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