IT2015年03月20日
-----IT2015−03−20−07:45-----
まだ出て間もないお日様は、春の温かみを帯びている。
私は、昨日取り込み忘れた洗濯物と新たにお洗濯した洗濯物を干す。
一昨日が雨だった為、実に3日分の洗濯物です。
「はあ、今日が晴れで良かったわ。これ以上溜まっちゃったら着る物に困ってしまいそう。」
昨日の事が心配じゃない・・・と言ったら嘘になる。
きっとイルマは、上手くやってくれている。それは分かっている。
でも・・・でも、一体何故、初心者用ダンジョンの北の洞窟にあんなものが??
何か事件性を感じます。
ぼーん、ぼーん、ぼーん・・・
庭に出ていても、店にある大きな古時計の音が聞こえる。
時間は08時。開店の時間。
本日も営業開始。
私の名前は、フレイア。
みんなは親しみを込めて、『フレイ』と呼んでくれます。
ここ・・・アースの田舎町の片隅で、母から受け継いだ魔法の道具屋を営んでいます。
いらっしゃいませ。『フレイ魔法道具店』へようこそ。
-----IT2015−03−20−10:30-----
「はぁ・・・」
何時もの様にお客様は来ない。
やっぱりお店を閉めて、イルマの所にいこうかしら?
そんな事を考えていると、
がちゃ
店の扉が開き、白い甲冑に身を包んだ騎士が来店する。
騎士団長のシェイドさんです。
「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」
「こんにちは。フレイさん。」
「イルマがフレイさんの所に近況を伝えてくれって言ってね。」
やっぱりイルマは幼馴染なだけあって、私の事を良く分かっている。
私が昨日の事で、仕事が手につかないんじゃ・・・ってね。
「ありがとうございます。シェイドさん。」
「やっぱり、イルマにはお見通しだったようですね。」
「だね。」
「さて、昨日の指輪の件だけど・・・」
シェイドさんの話によると、同様の指輪があと3つ見つかったらしい。それは、騎士団の方で接収、厳重に保管されている。
そして、北の洞窟は現在閉鎖。高レベルの冒険者向けのクエストとして、調査依頼をしている。との事。
「まあ、依頼を受けたのは『深闇』の二つ名を持つ有名な冒険者だから、数日後には解決しているだろうね。」
「あ、華音さんですか、なら大丈夫ですね。」
うちの常連さんな華音さんだけど、実はこの世界で5本の指に入る有名な冒険者です。
という事は、パーティーメンバーである花子さんや、フレンドの香奈さんや香織さん、双子さん達も調査に向かうのかも知れない。
「じゃあ、仕事に戻るから。」と言ってシェイドさんは帰っていった。
これなら・・・大丈夫。だよね?
私はそっと、胸をなでおろした。
-----IT2015−03−20−14:00-----
午後に入っても相変わらずな感じだけど、華音さんと花子さん、それに香奈さんが来店しました。
「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」
「じゃまするぞ。フレイ」「はろはろ〜フレイちん」「こんにちは。フレイちゃん」
三人三様の挨拶です。
華音さんは独特なしゃべりかたをします。何処かの国の言葉なんでしょうか?
花子さんは陽気な感じ、香奈さんは丁寧な挨拶です。
この3人が来店したという事は、北の洞窟の調査の準備・・・でしょうね。
「みなさん、北の洞窟調査の準備ですか?」
「ほう、既に耳に入っていたか。」
「はい、騎士団長のシェイドさんから聞きました。」
「あの人、ちょっとイケメンですよね? 今度、冒険に誘ってみようかな??」
「黙れ馬鹿。」
「あう。」
華音さんの一喝。
「まあまあ、華音さん。本題に入りましょうよ。」
「うむ、そうだな。」
「フレイ、この店にトレーサーはあるか?」
トレーサーとは、目的のモノを追跡させる使い捨ての魔法アイテムの総称です。
「やはり、華音さんも事件性・・・人為的な犯行ではないか?と思っているのですね?」
「うむ。フレイもそう感じたか。」
「アイテムの鑑定したのなら分かると思うが、あの能力値補正が付いての錯乱は危険なんてものじゃない。」
「例えば・・・だ。此れを敵対する組織等に拾わせるだけで、内部崩壊は必至だろう。」
「そんな危険な物だなんて・・・」
そう、華音さんの言う事はあり得ない事では無い。
でも、そうだとして・・・北の洞窟に配置するって事は、最寄のこの町が狙い?
こんな田舎町に何が・・・
「あ〜フレイ。とりあえずトレーサーなんだが?」
「あ、す、すみませんっ」
それを調べるのは、華音さん達冒険者の仕事ですね。
私の仕事は、その冒険者さん達にアイテムを提供する事です。
「今、取ってきますね。」
私は工房に入ると、棚から球状のアイテムを持ってくる。
「今あるのは、サーチアイ型ですね。」
小型且つ、浮遊しセンサーに引っかかった相手を追跡する機能を持つトレーサーです。
魔法で遠見する事は出来るが、音が拾えないのが弱点です。
「まあ十分だな、それを頂こう。」
「はい、5万メメタになります。」
「うむ。」
「確かに、ありがとうございます。」
「あ、そうだ、フレイちゃん。」
「預けてある『ミスリルシールド』なんだけど、明後日だよね?何時頃出来る??」
「そうですね・・・お昼前には出来ていると思います。」
「楽しみだなぁ〜お昼に、絶対お昼に取りに来るからね!!」
「香奈ちゃん・・・それ、取りに行けないフラグだよ・・・」
???
フラグ?一体何の事でしょう???
「はい、お待ちしていますね。」
「花子。香奈。トレーサーを設置しに行くぞ。」
「は〜い。」「はい。」
「ありがとうございました。」
さてっ香奈さんも楽しみにしている事ですし、魔力付加の様子を見に行きますか♪♪
結局、今日来たお客様はこの4人だけでした。
-----IT2015−03−15−23:00-----
私は、日課である日記を付ける。
「指輪の事は心配だけど華音さん達なら大丈夫ね。」
「香奈さんの『ミスリルシールド』も順調のようだし・・・」
後は、冒険者さん達に任せましょう。
私は、ほんのチョットだけ冒険者さん達の手助けが出来るだけ。
私は、日記を閉じるとベットに潜り込む。
おやすみなさい。