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IT2015年03月19日

-----IT2015−03−19−07:45-----



まだ出て間もないお日様は、春の温かみを帯びている。

昨日が雨だった分、より一層、日差しが気持ち良い。


「今日は、お洗濯日和ね。お店を開ける前に干しておかないと♪」


『アース』の天気は事前に公表されるので、とてもお洗濯がしやすいです。


「昨日の分もあるし・・・時間、大丈夫かしら??」


まあ、ちょっと位、店が開くのが遅くても何も問題にならないんですけどね。

・・・お客さん、そんなに来ないし。


ぼーん、ぼーん、ぼーん・・・


庭に出ていても、店にある大きな古時計の音が聞こえる。

時間は08時。開店の時間になったよう。


それでは、本日も営業開始。

私の名前は、フレイア。

みんなは親しみを込めて、『フレイ』と呼んでくれます。

ここ・・・アースの田舎町の片隅で、母から受け継いだ魔法の道具屋を営んでいます。


いらっしゃいませ。『フレイ魔法道具店』へようこそ。



・・・その前に、急いで洗濯物を干さないと♪



-----IT2015−03−19−13:30-----



がちゃ。

扉が開き、お客さんが来店する。

午後にして・・・今日、初めてのお客様です。


「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」


初々しく、まださほど使い込まれていない鎧を身に纏った若い男の人が入ってきた。

初めて見かけるお客様です。


「町の同じ様な道具屋で聞いて来たんだけど、鑑定をお願いしたい。」


取り出したのは、天使の装飾のされた指輪。


「はい、承ります。」


って、あれ?


「既に鑑定済の様ですが、もう一度鑑定し直しますか?」


その指輪は、町の道具屋・・・多分、イルマの所・・・で、一度鑑定した物。鑑定をし直した場合、前の結果が上書きされます。

前の鑑定結果より、良い鑑定結果が出なかった場合、能力が下がってしまう事もあるんです。


「はい、お願いします。」

「能力は物凄い良いんですが、どうしても、????が残っているのが気になるんです。」


確かに、指輪のステータスを見ると、特殊能力の欄の一番下が鑑定できなかったことを示す????となっている。


「分かりました。やってみますね。」


私はカウンターの引き出しから、鑑定道具一式を取り出すと早速取り掛かる。

ルーペで指輪の隅々まで調べる。

天使の装飾に飾られた宝石が、魔力を帯びている様。


「・・・本当に道具を使うんだな。」


「え?」


私はお客様の言葉に手を止める。


「いや、他の店では、渡すと直ぐに「う〜ん」とか言って鑑定結果が出るからさ。」


「そういうものなのですか?」

「私の店では、何時もこの様に鑑定していますよ。」


「これは、期待が持てるな。」


数分後、私は鑑定を終える。

結果は・・・以前と変わらない。


「『白天使の指輪』レアリティ10、能力は、攻撃力+100、全属性耐性+10、????」

「すみません。鑑定結果は変わりませんでした。」


かなりハイスペックな指輪だと思う。

でも・・・何かが引っ掛かる。


「いやいや、いいよ。」

「それで、御代はいくらだい?」


「100メメタになります。」


私は、100メメタを受け取る。


「・・・お客様、もう一つ鑑定方法があるのですが、試してみませんか?」


「へぇ、他にもあるんだ。幾らかかる?是非にやって貰いたい。」


「いいえ、御代は先程の100メメタで大丈夫です。」

「ただ、この指輪・・・何か変な感じがするんです。」

「この鑑定で、あまり良い結果が出ない可能性が高いと思います。」


「まあ、それもいいさ。頼む。」


「承りました。」


私は工房に行き、『壺』から手桶に少しの魔力水を取り出す。

店に戻り、カウンターに魔力水の入った手桶を置くと、そこに指輪を浸す。


「随分変わった鑑定だな。」


「他の店で、出来る所は少ないと思います。」

「・・・魔法による鑑定です。」


私は、鑑定魔法の詠唱に入る。

私の魔力に呼応するかのように、魔力水は光を帯びていく。

やがてそれは、強い光を放ったのちに一気に光は収束していく。


「終わりました。」

「結果は・・・『呪い』です。」


最後の能力????は『呪い』。

この指輪の真の名前は、『幻覚と錯乱の指輪』

今までの白く美しい装飾は剥がれ、現れたのは不気味なドス黒い悪趣味な指輪。

????を鑑定された事により、能力は一変。

攻撃力+500、全属性耐性‐10、錯乱の『呪い』


「なん・・・だって??」


「はい、これは呪いの指輪です。」

「呪いの発動条件は、恐らく一定時間指輪を身に着ける事でした。」

「一定時間経つと、この様に指輪は呪われた姿になり、装着者は幻覚を見て錯乱し、誰であろうと攻撃を加えるようになります。」

「・・・この指輪は、教会で処分されることをお勧めします。」


「そうか・・・ありがとう。まあ、初めて手に入れたレアだから、装備せずに取って置く事にするよ。」


「そうですか、初めて手に入れたレアは、思い入れがあると聞きます。」

「・・・ご参考までに、どちらで入手されたんですか?」


「ああ、北の洞窟だよ。隠し部屋があって宝箱に入っていたんだ。」

「じゃあ、鑑定ありがとう。結果はアレだったけど、????が無くなった分、気分的にはすっきりした。」


「はい、ありがとうございました。」


北の洞窟・・・確かあそこは、冒険者になりたての方々が修行の為に行くダンジョンの筈。

そんな初期のダンジョンにレアリティ10??

しかも呪い付き・・・ちょっと気になります。

あれは多分、最初イルマの所に持ち込まれた物・・・だと思う。


「行ってみるか。」


私は店を閉めると、イルマの店に向かった。



-----IT2015−03−19−15:05-----



町の中心部。大通りに面した一等地にイルマの店はあります。

店自体も私の所より随分大きく、当然お客さんも多い。

私が扉の前に立つと、うぃーんと音をたててドアが開く。

魔法で自動的にドアが開くようになっているんです。


「こんにちは、イルマ。」


店の奥に居るイルマに話しかける。


「あら、フレイ。珍しいわね、店に来るなんて。」


私はイルマの店の様にアルバイトの店員さんを雇っていないので、休みの日以外はあまり出られないのよね。


「うん、ちょっと気になる事があってね。」


イルマはちょっと考えて・・・


「ひょっとして、『白天使の指輪』の事じゃない?」


とズバリ当てる。


「そうだけど・・・どうして分かったの?」


「まあ、フレイの店を紹介した件もあるんだけど・・・」

「・・・あれって、何個もドロップしてるらしいのよ。それも、初心者が行く北の洞窟で。」


「え?何個も!?レアリティ10が??」

「って、それは事件かも知れないわ!!あれの・・・????の正体知ってる?」


「知らないわよ。だからあなたの所を紹介したんじゃない。」

「・・・って事は、鑑定できたのね?」


「うん・・・あれはね・・・『呪い』なのよ。」


「『呪い』って・・・ちょっと、詳しく説明しなさいよ!!」


私はイルマに鑑定の結果・・・『白天使の指輪』の正体を説明する。


「確かに、事件性が出てきたわね。」

「分かった、私の方でも調べてみるわ。それと、北のダンジョンを閉鎖出来ないか騎士団に交渉してみるわ。」


「ありがとう、イルマ。私の方でも、知り合いの冒険者に頼んでみるわ。」


ちなみに、イルマは騎士団長のシェイドさんととても仲がいい。イルマが頼めば動いてくれる可能性は十分にある。


「じゃあ、私は帰るわね。」


「あら、お茶位出すわよ?」


「あはは、今度にするね。店を閉めてきちゃってるから。」


「アルバイトの店員でも雇えばいいのに。」


「そんな余裕、うちにはありません。」


私は、ひらひらと手を振って店を出る。


「まあ、実際の所、戻ってもギリギリなのよね。」


私は家路を急いだ。



-----IT2015−03−19−16:30-----



「ふう、やっぱりギリギリになっちゃったわね。」

「まあ、あと少しだけど、店をあけま・・・」


店を開けようとした私の目に飛び込んできたのは・・・

・・・干しっぱなしの洗濯物。


「・・・ああ!!洗濯物取り込むの忘れてたわ!!」


私は、庭に干してある洗濯物を急いで取り込む。

夕方まで干しっぱなしの洗濯物はすっかり冷たくなっていた。



-----IT2015−03−19−23:30-----



私は、日課になっている日記を付ける。


「今日はお客様が一人。そのお客様が持ち込んだのは呪われた指輪。」

「イルマとも相談したけれど・・・なにか事件性を感じるわ。」


明日、知り合いの冒険者の方が来たら聞いてみよう。

華音さんと火燐さんは、”そういった物”に詳しいんですよね。

・・・何も無ければいいのだけれど。


私は、日記を閉じるとベットに潜り込む。


おやすみなさい。

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