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IT2015年03月18日

-----IT2015−03−18−07:30-----



今日は雨が降っている。

この後の予報も15時まで雨・・・という事。

ここ『アース』では、1週間の天気が事前に発表されています。

それは、神のお告げを受けた巫女様が公表している事であり、間違える事は無いんです。

でも・・・


「雨は憂鬱ね。お客さんも来なくなるし・・・」


まあ、晴れていたとしても、そんなにお客さんは来ないですけどね・・・

どうにも調子が出ないのも事実。

こんな事じゃ、雨期が思いやられるわ。

・・・

・・・

そうね。マナポーションの製作がはかどると思えば、悪くは無いのかも??

そんな事を考えながら、店の在庫チェックをする。

昨日作ったマナポーションだけで、在庫的には十分なのだが、月光草が残り175本程ある。

これを2週間以内に使うのだから、作っておいた方が賢明ね。

どうせなら、エクスポーションでも作ってみようかしら?

あれって手間がかかるから、なかなか作れないのよね。


ぼーん、ぼーん、ぼーん・・・


店にある大きな古時計が08時を告げる音を鳴らす。


「あら、もう08時になるのね。」


それでは、本日も営業開始。

私の名前は、フレイア。

みんなは親しみを込めて、『フレイ』と呼んでくれます。

ここ・・・アースの田舎町の片隅で、母から受け継いだ魔法の道具屋を営んでいます。


いらっしゃいませ。『フレイ魔法道具店』へようこそ。



-----IT2015−03−18−13:30-----



結局、午前中いっぱいお客さんが来なかった結果・・・

・・・今日も、50個のマナポーションが製作できた。


「流石に、2日も続けると飽きてくるわね。」

「やはり、エクスポーションも作っておこう。」


エクスポーションとは、ポーションとマナポーションの両方の性質を持ち、かつ効果も上と言う万能ポーションです。

問題は製作の手間、さらに使用する材料もそれぞれの10倍。

マナポーションが、ポーションと同じように薬草を使うとは言え、それはポーションの使用量の半分程。

エクスポーションはコスト面から、かなり高額の設定になり・・・つまり、なかなか売れないものなんです。

とはいえ、在庫があった方がいざと言う時は良い。


「ん〜時間もかかるし・・・10個くらいかなぁ?」


さて、何故10倍も材料がかかるのかと言うと・・・

・・・エクスポーションは、ポーションやマナポーションの様に煮出しではなく、材料を低速で回転する刃で繊維質と薬効のある液体に分離する方法を用います。

この方法で取れる液体は材料そのものが持つ水分なので、とれる量が煮出しに比べ極端に少ないからなんです。


私は早速『遠心分離機』に、材料を入れレバーを回す。


くる・・・くる・・・くる・・・


この時、早く回しすぎない事がコツ。

あくまで低速。

早すぎると効果が落ちてしまいます。


くる・・・くる・・・くる・・・


「これって、地味に腕にクルのよね・・・」


くる・・・くる・・・くる・・・


・・・

・・・

・・・



-----2015−03−18−16:30-----



「はぁーやっと10個出来たわ。」


私は出来上がった液体を瓶に詰めて10個のエクスポーションが完成。

ちなみに、エクスポーションはひとつで7500メメタ。

そう考えると『壺』による魔力付加は、なんと効率の良い事だろう。

まあ、材料費が凄く高いんだけどね・・・


「フレイさん〜いますか〜?」


店の方で声が聞こえる。

私は出来上がったばかりのエクスポーションを持って、店に出る。


「いらっしゃいませ。知真さん、葉和さん。」


双子の冒険者の知真ちるまさんと葉和はわわさんです。

以前、知真さんには、月光草を長持ちさせる方法を教えて貰いました。


「ちょっと、ポーションとハイポーションを買いに来たよ。とりあえず、10個づつ〜」


お料理が上手で、元気いっぱい、赤で装備をそろえた戦士職の方が知真さんです。


「私は、マナポーションを5個お願いします。」


礼儀正しくて、御淑やか、青で装備をそろえた魔法職の方が葉和さん。


「はい、わかりました。少々お待ちください。」


私は、エクスポーションを棚にしまいながら答える。


「あの・・・それって、もしかして・・・エクスポーションですか?」


「はい、そうですよ。」

「先程、出来たばかりです。」


「へっ!? エクスポーションって作れるの!?ドロップだけかと思っていたよ・・・」


「私もです。」


「手間はかかりますが、作れますよ。」


私は、ポーション10個、ハイポーション10個、マナポーション5個をそれぞれ取り出しながら答える。


「多分、作れるのってフレイさん位ですよ。」


「参考までに、どうやって作るの??」


「ちょっと、姉さんっ!そんなの企業秘密に決まってるじゃないですか!!」


双子の冒険者は、掛け合いをしながら支払いを済ませた。


「いえいえ、構いませんよ。」

「作り方はですね・・・」


・・・

・・・

・・・


「なんか、『スロージューサー』で『スムージー』を作る感じだね・・・」


「まさか、エクスポーションが『スムージー』だとは思いませんでした・・・」


「スロージュ?スムージ??何ですか?それ??」


私の知らない単語を並べる双子の冒険者。


「あ〜〜〜う、うんとね、『スロージューサー』って言うのが、私達の故郷の道具で・・・」

「『スムージー』と言うのは、私達の故郷の料理・・・かな??だよね!!葉和ちゃんっ!!」


「え?ええ、そうです。」


「へーそうなんですか〜」


「「そうなんです。」」


双子らしくハモる。


「・・・まあ、『スムージー』は、凍らせて、さらにヨーグルトとかと一緒に作るんだけどね。」


「・・・」

「・・・あ、そ、そうだ、折角ですのでエクスポーションを1個お願いします。」


「おお〜葉和ちゃんっ太っ腹だねぇ♪」

「7500メメタになります。」


「いや・・・姉さんに払う訳ではありませんって・・・」

「はい、7500メメタです。」


「ありがとうございます。」


「そういえば、あの・・・エクスポーションの作り方って公開・・・いえ、皆に教えちゃってもいいんですか?」


「はい、構いませんよ。」

「ただ、かなりコツがいる場面がありますので、そこは気を付けてくださいね。」


「分かりました。」

「・・・まあ、私には無理そうですけどね。」


「ちょっと香織ちゃ・・・火燐に作って貰おうよ?」


確かに、火燐さんなら道具さえあれば作れそうですね。

双子の冒険者は、またも掛け合いをしながら帰っていった。



-----2015−03−18−23:00-----



私は日課になっている日記を付ける。


「今日は雨。雨の日はなんだか憂鬱。でも、それはそれ。」

「お仕事の方はっと・・・マナポーション作ってエクスポーションも・・・あと、双子の知真さんと葉和さんがきて・・・」


『スロージューサー』??『スムージー』??だったかしら??

あの双子の冒険者の方々の故郷にそんな料理 (と、道具)があると聞いた。


「二人の故郷は何処なんだろう?」


今度来た時にでも聞いてみようかしら?

私は物心ついた時から、ずっとこの街、このお店。

遠出と言っても、近くの採取場まで行く位。

いろんな所に行ける冒険者の方が・・・ちょっとだけ、うらやましいかも。

私は、日記を閉じるとベットに潜り込む。



おやすみなさい。



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