IT2015年03月16日
-----IT2015−03−16−07:30-----
「あら?月光草の在庫があと少しだわ。」
私は、工房の材料棚の月光草が残り少ない事に気が付いた。
月光草は、主にマナポーションの材料になる貴重な植物だ。
「困ったわね・・・」
先日、マナポーションの方は在庫があったので、うっかり材料の方までよく確認しなかった。
何時もは、冒険者の方に『依頼』するのだけど、採取のスキルが高くないと見つけられない。
なかなか、直ぐに条件にあう方が見つかるかどうか・・・
最悪は、私が取りに行くしか無いかも・・・
ぼーん、ぼーん、ぼーん・・・
店にある大きな古時計が、08時を告げる音を鳴らした。
「あ、あらいけない。店を開けないと・・・」
それでは、本日も営業開始。
私の名前は、フレイア。
みんなは親しみを込めて、『フレイ』と呼んでくれます。
ここ・・・アースの田舎町の片隅で、母から受け継いだ魔法の道具屋を営んでいます。
いらっしゃいませ。『フレイ魔法道具店』へようこそ。
-----IT2015−03−16−09:00-----
「これで良しっと。」
私は、店の目立つ所に月光草の採取の依頼書を張り出した。
『依頼書』
『依頼内容』:月光草の採取
1本から買い取ります。最大100本まで。
買い取り本数に達した場合〆切ります。
『買い取り金額』:1本100メメタ |
『必要スキル』:採取LV5以上
詳しくは、店主『フレイ』まで。
「さてさて、集まるかしら?」
まあ、それよりも問題は、この店に来てくれるお客様が多くは無いという事。
どうして母さん達は、ここに店を建てたのかしら?
とりあえずは、在庫のマナポーションがある間は、何とかなりそうだけど・・・
がちゃ・・・
と、扉が開き、お客様が来店する。
「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」
「おはよう。フレイさん。」
「おはようございます。MAXさん。」
「いやぁ・・・開店一番8:00に来ようと思ったんだけど、道に迷ったよ()笑」
「え?またですか??」
「それも、1時間も・・・」
MAXさんは、仲間の内で『逆王』(常に逆の道に行く)と言う二つの名で呼ばれる程の方向音痴です。
町の中心部からかなり離れているとは言え、複雑な道を通る訳でもないのに毎回迷います。
前に黒桜さんが言っていましたが・・・
「MAXは先ず逆方向に行く。しばらく進むと違うというのが分かるらしく、方向を変えるのだが、その方向もまた違う。」
恐るべしMAXさん・・・
「早速だけど、マナポーションを購入限界の10個お願いします。」
「は〜い・・・い!?」
「ど、どうかした?フレイさん」
「い、いえ、10個ですね。5000メメタになります。」
思わず声が裏返っちゃいました。
在庫があるうちは〜なんて考えてた直後なんだもの。
そのうちに、MAXさんは『依頼書』に気が付いたみたいで・・・
「あ、なるほどね。」
「確か、月光草はマナポーションの材料だったね・・・それでか。」
「はい。まあ、在庫はまだ少しありますから、大丈夫ですよ。」
「マナポーション10個。確かに。」
「月光草の事、仲間にも伝えておくよ。」
「もっとも、俺が採取できれば良かったんだけどね。」
MAXさんの場合、採取に行っても道に迷いそう。
「ふふふ。」
「ん?何だい??」
「い、いえ、ありがとうございます。」
「それじゃあ」と、MAXさんは店を後にした。
「それにしても・・・あっと言う間に、在庫が半分か・・・少しでも作っておきましょう。」
私は工房へと向かった。
先ず、竈の火の精霊にお願いして、鍋を火にかけます。
鍋の中身は、蒸留水と薬草を数種類です。
これを一煮立ちさせ、薬効成分を抽出します。
火を落とし、きめの細かい布を通して出来たのが・・・『ポーション』です。
この『ポーション』を『マナポーション』にする訳ですが・・・
「はろはろ〜フレイちゃん。」
「邪魔するぞ、フレイ。」
店の方から、声が聞こえる。
私は出来た『ポーション』をとりあえず大瓶に保管し、店に出る。
やって来たのは・・・
「こんにちは。華音さん、花子さん。」
常連の華音さんと花子さんです。
先日来た、香奈さんと火燐さんのお友達でもあります。
「早速だがフレイ。マナポーションを購入上限の10個頼む。」
「は〜い・・・いいいい!?」
「どうかしたんですか?フレイちゃん??」
「い、いえいえ〜10個ですね。5000メメタになります。」
私は残りの在庫全てである10個を取り出す。
早かった・・・速攻だった・・・売れる時なんて案外こんなものである。
「ふむ、ああ、そういう事か。」
『依頼書』を見た華音さんは、納得したようだった。
「はい、そういう事です。」
「それで、在庫は大丈夫なんですか??」
「マナポーションの在庫は0ですが、今、残りの月光草で鋭意製作中です。」
「ふむ、分かった。『依頼書』の件は香奈に伝えておこう。」
「香奈ちゃん、サブ職業『花屋』で、採取のレベルも高いですからねぇ♪」
「助かります。」
華音さんと花子さんは店を後にした。
ぼーん、ぼーん、ぼーん・・・
店の大きな古時計が11:00を知らせる。
「あ、あら、もうこんな時間・・・マナポーションの続きを作らないと・・・」
私はまた工房に籠った。
-----IT2015−03−16−13:30-----
残りの月光草で、なんとか後10個マナポーションを作る事が出来た。
「マナポーションは、魔術師系の方だけだから・・・そんなには出ないから・・・」
「・・・大丈夫よねぇ・・・いいえ、きっと大丈夫!!」
がちゃ・・・
「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」
「こんにちは、フレイ。」
「こんにちは、火燐さん。」
昨日、ちらっと香奈さんを迎えに来た火燐さんです。
「いやー昨日来た時に買っとけば良かったんだけど、マナポーションを購入限界の10個貰えるかしら?」
「・・・」
「・・・」
「・・・は、はい。」
「・・・どうしたの?フレイ??」
「い、いえー10個ですね。5000メメタになりますぅ・・・」
はい、マナポーション終了。
・・・
・・・
・・・逆に考えるのよフレイ!
さっき作っておいて良かった・・・と!!
支払いを終え、マナポーションを受け取った火燐さんは、『依頼書』に気が付いたよう。
「あ〜なるほどね。」
「在庫大丈夫??」
「あ・・・その・・・0です。」
「あちゃー0かぁ〜〜フレイの所のマナポーションは効果が高いから重宝するのよねぇ♪」
「分かった、ちょっと行って取ってくるわ。」
「ありがとうございますぅぅぅぅぅ火燐さん〜〜〜〜」
「じゃあ、行ってくる。」と火燐さんは店を後にした。
火燐さんは、実は自給自足出きるはずなんです。
ただ・・・「フレイが作った方が効果が高いのよ。」と私の店で買ってくれます。
火燐さんが取って来てくれるなら安心です。
後は、ポーションを作ってマナポーションの準備をしよう。
私は三度、工房に籠った。
-----IT2015−03−16−16:30-----
がちゃ・・・
「取って来たわよ〜」
「いらっしゃいませ。火燐さん。」
「早速、ありがとうございます。」
「はい、100本ね。」
なんと、募集していた100本全て取って来てくれました!
「助かります。では早速御代を・・・」
がちゃ・・・
「フレイちゃんっ華音さんに言われて、月光草取って来たよ〜」
「はい、100本。」
「いらっしゃいませ、香奈さん・・・って、ええっ!?」
「あら、香奈も取ってきたの?」
「え、香織ちゃ・・・火燐も取ってきたの!?」
100本どころか、200本に・・・
「い、いえ、大丈夫です。全て買い取らせて下さ・・・」
がちゃ・・・
「や、やっと・・・たどり着いた・・・」
「いらっしゃいませ。MAXさん。」
って・・・この展開・・・
「フレイさん。キャロさんに、月光草採取してきて貰ったよ。」
「100本で良かったんだよね?」
「え、ええ・・・」
香奈さんと火燐さんも顔を見合わせている。
「あれ?確か・・・かのさん(華音さん)のフレの香奈さんと火燐さんだよね?」
「ええ、MAXさん、お久しぶりです。」
「たま〜に華音さんから、武勇伝は聞いています。」
「・・・主に『逆王』の」
「まさか、MAXさんまでとは・・・ね?」
「ん?どうしたんだい??火燐さん。」
そこでMAXさんは、カウンターに置かれた大量の月光草に気が付いた。
「成程。そういう事か。」
え〜い、200も300も変わらないわ!!
「だ、大丈夫・・・全部買い取らせてください・・・」
私は全て買い取ることにした。
だって・・・
「ありがとうございます。皆さん。」
だって皆さん・・・私を思って、急いで集めてくれたのだから。
-----IT2015−03−16−23:00-----
私は日課である日記を付ける。
「今日は、MAXさんと華音さんと花子さんと火燐さんと・・・香奈さんも来店っと。」
「皆さん、私を思って、直ぐに月光草を持ってきてくれました。」
っと、本当に常連の皆さんには良くして貰っている。
差し当たっては・・・
・・・この月光草の過剰在庫と、売上15000メメタに対しての出費30000メメタ。
これを何とかしないとね。
まあ、香奈さんの魔力付加が終われば、大丈夫なんだけどね。
私は、日記を閉じると、ベットに潜り込む。
おやすみなさい。