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IT2015年03月15日

-----IT2015−03−15−06:00-----



ぱちり。

私は何時も通りの時間に目を覚ます。

店にある大きな古時計が、06時を告げる音をならした。


ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん。


私は、それを聞きながら庭に出る。

まだ、太陽は上がりきっていないが、大分明るくなってきている。


しゅこっしゅこっしゅこっ

じゃーーーーー


私はポンプを漕ぎ、井戸から水を汲み出す。

春も近づいてきたこの季節だけど、井戸の水はとても冷たい。


「ん〜冷たっ」


その水で顔を洗い、桶に組んだ水を台所へと運ぶ。


「今日の朝ごはんは、何にしようかしら?」


私は、台所の床にある、室の扉を開ける。

室の中には、氷の精霊が住んで居て、適温にしてくれるのでとてもありがたい。

ありがたいんだけど・・・


「あら?確か・・・卵が何個かあった筈なんだけど・・・」

「もう、食べちゃったのね?」


(ぴきぴきぴきーん)


と、たまに食材を食べてしまうのが玉に瑕だ。


「ふふふ、良いわ。」

「あなたが冷やしてくれているお蔭で、こうしてイロイロな物が長期保存できるのだから。」


(ぴきぴき)


氷の精霊が、卵を一つ取り出す。


「あら、まだ一つあったのね。」

「なら、朝ごはんはパンと目玉焼きにしましょう。」


保存をよろしくね?と言って、室を閉じる。

私は、火の精霊にお願いし、フライパンを火にかける。

程良い熱さになった所で、卵を落とし、水を少量・・・蓋をする。

その間に、パンを手ごろな大きさに切って、野菜を添え皿にのせる。

その頃には、目玉焼きは半熟に仕上がっていた。

目玉焼きをパンにのせ・・・あ。


「ミルク・・・忘れてた♪」


室からミルクを出して、コップに注ぐ。


「朝ごはん完成♪」


私は目玉焼きののったパンをほおばる。


「うんっ美味しい。」


朝ごはんを食べ終え、片づけを済ますと仕事着に着替える。

私の仕事は、『道具屋』。

と言っても、普通の『道具屋』では無い。

『魔法』を込めた道具や、『魔法』に関する物、そして、お客様のご要望に沿った『魔法の道具』や『武器』、『防具』を作る『魔法の道具屋』なのだ。


「ポーションにハイポーション・・・マナポーションは・・・っと」


在庫の確認もOK♪

その頃には時計の針は、08時を指している。


それでは、本日も営業開始♪♪

私の名前は、フレイア。

みんなは親しみを込めて、『フレイ』と呼んでくれます。

ここ・・・アースの田舎街の片隅で、母から受け継いだ魔法の道具屋を営んでいます。


いらっしゃいませ。『フレイ魔法道具店』へようこそ。



-----IT2015−03−15−10:00-----



店にある大きな古時計の音が10回鳴り、10時になった事を告げる。


ぼーん、ぼーん・・・


「はぁ・・・今日も暇ね。」

「どうして母さん達は、ここに店を建てたのかしら?」


私の店は街の中心部から遠い。

具体的には、歩いて1時間はかかる。

それに、魔法の道具はあまり需要が少ないのが現状なのだ。

主に魔法の道具を使うのは、冒険者と呼ばれる人達。

でも、原生生物エネミーが悪さをするとは言え、基本的に平和になったこのアース、しかもこんな田舎じゃ余り需要が無い。

それでも、お得意さんは何人かはいる。

あ、そういえば、今日は黒桜さんが魔力付加武器を取りに来る事になっているわ。

私は、店の奥の作業場・・・その中の『壺』を確認する。

私の家系は代々、『壺』で魔力の付加を行う。

これは、アースでは珍しいそうだ。

私は、母からこの技術を受け継いだけだったので、他は知らず、詳しくは分からないが・・・

・・・魔力の定着率が良いらしい。


「んー大丈夫そうね・・・」

「えいっ」


別に気合を入れる必要は無いんだけど、何となく声に出して一振りの剣を取り出した。

私は、早速鑑定をする。


「聖女のロングソード・・・光属性強化(大)・・・」


うん、大成功したみたい。

早速鞘に納め、店の収納棚にしまう。


「遅いわね・・・黒桜さん・・・」


10時頃には取りに行きます。と、話していたのである。

その時、


がちゃ・・・


と、扉が開き、お客様が来店する。


「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」


「こんにちは、フレイちゃん。」


「あ、香奈さん、こんにちは。」

「今日は皆さん御一緒じゃないんですか?」


「あははーなんか、私だけ早く来ちゃったみたいで・・・」

「んで、とりあえずクエストの準備にポーション類を買いに来ました♪」


何時もは、華音さん、花子さんと一緒・・・もしくは、火燐さん、凍夜さん、双子の方々・・・

兎に角、友達が多い印象のある方です。


「早速ですけど、ハイポーションを購入限界までお願いします。」


私の店には一人10個までという購入制限を設けている。

これは、一人で店をやっているので、あまり数を作れないから・・・と、言うのが主な理由。

それでも、買って下さる方が居るのはとてもありがたい。


「ありがとうございます。ハイポーション10個で・・・2500メメタになります。」


「はい、2500メメタ。」


香奈さんは代金を払うと、万能袋にハイポーションをしまう。

この袋は冒険者の方ならみんな持っていて、ある上限までなら質量を無視して収納できる魔法がかかっている。


「フレイちゃんのハイポーションは、効果がとっても高いから、毎回助かってるよ。」


「それ、たまに言われますけど・・・そうなんですか?」


「うん、まちまちだけど・・・平均で他のトコより20%以上効果が高いよ。」


壺もそうだけど、母さんから受け継いだ製法は他の製法で作るよりも効果が高いらしい。


「あ、それとね・・・コレに炎属性強化の付加をお願いしたいんだけど?」


香奈さんが取り出したのは、盾。

私は早速鑑定をする。


「ミスリルシールド・・・・エンチャントスロット・・・2つ・・・・レアリティ10」

「一級品のレアですね。」


先程の聖女のロングソードもそうだけど、持ち込まれる武器、防具は一級品が多い。

私が鑑定した限り・・・レアリティは1〜12まであり、12は伝説級と呼ぶ。


「この間のクエストでぽーんとドロップしちゃって♪」

「どうせなら、フレイちゃんに頼もうかなーって♪♪」


冒険者の方々は、クエスト・・・依頼を受けて原生種エネミーと戦い報酬を貰う。

それ以外に、ドロップ品?というのがある・・・らしいです。

運が良いと、レアリティの高い物がドロップ?するらしいです。

原生種エネミーと戦った事のない私には分からない話なんですけどね。


「わかりました・・・そうですね・・・(大)以上を目指すなら・・・7日は欲しいです。」


「うん。7日でお願い。」


「費用の方が・・・素材は持ち込みですか?」


「素材は、炎触媒(大)が3つあるよ。」


「でしたら、十分です。」

「魔力付加代金のみになりますので、70000メメタになります。」

「ただし、付加する魔力は(大)以上になるとは限りません。また、それを保障する物ではありませんので、効果が低い場合でも同じ金額を頂きます。」


「おっけ♪」


「では、お預かりします。」


がちゃ・・・

扉を開け、赤いローブを着た魔術師が入ってきた。


「香奈。そろそろ行くわよ?」


「あら、火燐さん、いらっしゃいませ。」


「こんにちは、フレイ。」

「でも今日は、香奈を呼びに来ただけだから・・・冷やかしよ?」


「あははは、次はお願いしますね?」


「おっけ。」

「じゃあ、また。」


「ミスリルシールドお願いしますね。」


「はい、7日後のお引き渡しになります。ありがとうございました。」


香奈さんと火燐さんを見送ると、作業場へと入る。

この作業場には、大小様々な『壺』が10個置いてある。

その内、2個は私の実験用。

仕事使うのは残りの8個になる。

早速私は、香奈さんから預かった『ミスリルシールド』を『壺』に入れる。

『壺』には、いっぱいの魔力水。

これは、マナポーションの原料でもある。

ここに、先程預かった炎触媒(大)を3つ入れる。

そして、私自身の魔力を注ぎ込む。

この魔力を注ぎ込む作業は一日一回必ず行う。

私は、作業を一通り終えると、店に戻る。

黒桜さんはまだ来ていない。というより、誰も来店していない。

まあ、それは・・・何時もの事だ。



-----IT2015−03−15−16:30-----



私の店の営業時間は、08:00〜17:00となる。

もう直ぐ閉店時間になるのだが、黒桜さんはまだ来店していない。


「急な用事でも、出来ちゃったのかな?」


黒桜さんは忙しい人だと、他の方が言っていた。

ちなみに、本日のお客様は香奈さんと火燐さんだけだったりする。

おかげで、今日売れた分10個のハイポーションの作成も終えてしまった。


「やっぱり、立地の問題・・・よねぇ?」



などと考えていると、


ばたんっ


店の扉が勢い良く開いた。


「はぁ・・・はぁ・・・ま、間に合ったわ・・・」


息を切らしながら、店に入って来たのは黒桜さんだ。


「いらっしゃいませ。フレイ魔法道具店にようこそ。」

「・・・大丈夫ですか?黒桜さん??」


「ごめ・・・ちょっとタイム。」


すーーーはぁぁぁあぁ・・・・

黒桜さんは深呼吸をして、息を整える。


「流石に、ゲートからここまでダッシュはきついわ・・・」


「お疲れ様です。」


「で、早速だけど・・・武器はどうかな?」


「はい、出来ていますよ。ご確認下さい。」


私は、収納棚から聖女のロングソードを取り出し、黒桜さんに手渡す。


「おおお〜〜〜流石フレイちん。」

「バッチリ、(大)がのってるわ♪」


「ありがとうございます。」


「御代は・・・70000メメタだったよね?」


「はい。」


黒桜さんは70000メメタを支払うと、「キャロを待たせているから・・・」と、帰っていった。

・・・本当に忙しい人だ。


ぼーん、ぼーん・・・・


店の大きな古時計が17時を告げる。


「今日も一日お疲れ様でした。」


私は店に言って、作業場に向かう。

店が閉店した後に、実験用の『壺』に魔力を注ぐ為である。


「さて、何時取り出そうかなぁ?」


魔力を注ぎこんだ後、チェックの為に引いてある棒線を一本追加する。

棒線は既に90本を数えるまでになっていた。



-----IT2015−03−15−23:00-----



私は日課である日記を付ける。


「今日は香奈さんと火燐さんと・・・黒桜さんが来店っと」

「魔力付加は大成功・・・黒桜さんは忙しい人だ・・・」


今日の出来事を記すには、余りにも何時も通り。

でも、そんな何時も通りな日常が過ごせるのは素晴らしい事だと思う。

私は、日記を閉じると、ベットに潜り込む。


おやすみなさい。

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