第8話
あたし、今きっと顔が真っ赤だと思う。
ちらっと見たけど、片山は相変わらず涼しい顔をしている。
そうだよね。こんな事、彼女にいつもしてるか。
そうこうしているうちにも手がどんどん入ってきて、でも、ブラのホックに手をかけたところでその動きがピタと止まった。
「片山・・?」
またメールだ。
今度はバイブにしていたみたいだからあたしは気付かなかったけど。
「ごめん、呼び出し。俺行かなきゃ」
あたしの体を起こして立ち上がり、階段を降りていく片山。
ほてった頬とまだバクバクいってるあたしの心臓を残して。
そのうしろ姿をあたしは睨みつける。
もしあのまま続けていたら・・?
なんであたしとしようとしないの?早くヤってくれればいいのに。
呼びとめて「続きは彼女とやれば」と、嫌味の一つでも言ってやれたらどれほどよかったか。
言えないあたしは一体何なんなんだろう。
片山はいつも何の後ろめたさも見せずにあたしと彼女を往復する。
いや、学校の中だけしか会えないなんて彼女とも対等じゃない。
ホントに都合いいだけの女になりさがってるんだな、とあたしは舌打ちをする。
部活があるからと柳にまでフラれたあたしは一人で帰るしかなかった。
こんな時は好きなだけ彼にグチを聞いてもらうに限るのに。
片山には言えない不満も柳になら言える。
柳にとってはかなり迷惑な事かもしれないけど。
駅を出てにぎやかにネオンがちらつく街を歩く。
気紛れにショップを見て回ってもなんだか気が晴れなくてもう帰ろうとしていた。
雨が降りそうだ。