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第4話

ふと、それまで頬を打っていた雨の冷たさを感じなくなった。

止んだのではない。

振り向くとビニール傘を持った片山が立っていた。

人に見られた!と、とっさに涙を拭う前だった。

雨と涙でぐちゃぐちゃになったあたしの顔を見た彼が、かすかに笑ったように見えた。

それが優しい微笑みなのか、嘲った笑いなのかはよく分からなかった。


「直樹!」


S学園の制服を着た女の子が遠くで呼んでいる。

自分の名を呼ばれたらしい彼は傘をわたしに押し付けて、そのまま背を向けて行ってしまった。

そして女の子が持っている赤い傘に入る。

あたしは二人が雨の運動場を歩いて行くのをぼんやりと眺めていた。


落ちるのなんて簡単だ。

たったそれだけの事だった。

その時からあたしの中でクラスの男子の一人が「片山」になった。



現場は目撃してる。

彼女がいることは知っている。

でもその日以来あたしは片山を目で追ってしまうし、どうしようもなく考えてしまう。

傘の一件からあたしたちは徐々に親しく話すようになっていった。

そしてある日東階段に彼を呼び出し、「彼女いてもいいから」と告白した。

あたしの言動に最初はかなり戸惑った様子の片山も一度は断ったが、ふられてもなお諦めようとしないあたしに押されたのか、そのうちに何も言わなくなった。


かくしてあたしは片山の浮気相手、(と言ってしまえば身もフタもないが)校内限定彼女になったのだ。





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